2022年度後期連続テレビ小説 第107作「舞いあがれ!」で、"朝ドラ"デビューが決定した赤楚衛二。2017年から放送された「仮面ライダービルド」で脚光を浴びた彼のキャリアは、映画化もされた"チェリまほ"こと「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(2020年)で一気に花開いたことも記憶に新しい。
その後も、物語のキーパーソンとなるキャラクターに扮した「彼女はキレイだった」(2021年)や、"チェリまほ"の町田啓太との再共演でも話題になった「SUPER RICH」(2021年)など、注目のドラマに相次いで出演し、目覚ましい飛躍を遂げている。そんな成長著しい赤楚が、これまでに見せたことのないシリアスな一面を披露したドラマが、WOWOWオリジナルドラマ「ヒル」だ。
WOWOWオリジナルドラマといえば、巨匠マイケル・マン監督らハリウッドの一流スタッフとのタッグも話題を呼んだ「TOKYO VICE」を筆頭に、社会の暗部にまで鋭く斬り込んだ重厚なヒューマンドラマを多数輩出してきたことでも知られている。
赤楚がSeason1の主演を務めた「WOWOWオリジナルドラマ ヒル」も、まさにそうした社会派ドラマ。他人に寄生して生きる"ヒル"と呼ばれる者たちの姿を通して、格差社会の闇を浮き彫りにしていく気骨のある1作で、WEBやアプリで反響を呼んだ今井大輔の同名漫画の世界観を、「連続ドラマW 沈まぬ太陽」や「シグナル 長期未解決事件捜査班」を手がけてきた鈴木浩介監督が見事に映像化している。
見知らぬ他人に成りすましをされた青年が、不法滞在者であるヒルの存在を知り、彼らと対峙する様を描く本作。その過程で、ヒルたちがいかにして生まれ、社会から落ちこぼれてしまったのかという背景も描かれ、他人事ではないリアルな格差社会が映し出される。これまでにないシリアスなテーマに挑んだ赤楚は、従来のイメージを覆す新境地に足を踏み入れている。
演じたのは、自宅に転がり込んでいた見知らぬ男によって殺人未遂罪を着せられ、警察に追われるようになってしまう青年・ユウキ。友人もおらずバイト漬けの生活を送り、さらに父親が殺人犯という暗い過去を背負うキャラクターだ。
常にうつむきがちな姿勢、死んだ魚のような眼差しなど、赤楚は影のあるキャラクターを覇気のない佇まいで表現。ボソボソとしていながらもどこかトゲのある口調からは、社会に対する恨みが滲み、今の生活に打ちひしがれるユウキの絶望感を読み取ることができる。
これまでの日常から一転、犯罪者となり居場所を失ったユウキは、ゾーカ(吉川愛)と名乗る謎の女性と出会ったことで、住人が不在の家を渡り歩いて生活する"通称・ヒル"とその裏社会を知ることになる。彼女から、父親を殺したヒルへの復讐の手伝いを頼まれ、次第に事件の深みに嵌っていく一方で、生き抜くためにがむしゃらさを見せるユウキの変貌ぶりが印象的だ。
自分を陥れたヒルのヨビ(栁俊太郎)への怒りをたぎらせ、身に危険の迫る状況に怯えたりと、心の内に秘めた感情を随所でチラつかせ、さりげなくも巧みに主人公の人物像を浮かび上がらせている。
そんな赤楚演じるユウキが出会うことになるのが、Season2の主人公となる坂口健太郎が演じるカラ。"ヒル狩りのカラ"の異名を持つ伝説のヒルであり、母親的存在を殺した"仮面の男"への復讐だけを目的に生きるミステリアスで憂いを感じさせる男だ。
坂口は物語のキーパーソンで、オーラを必要とするこの難役を、ごく淡々と体現。エキセントリックなキャラクターが揃う中で、穏やかながらも固い意志を感じさせるカラの存在は異質そのもの。時おり暴走する狂気や、復讐に取り憑かれた男の悲哀を滲ませた佇まいが、物語に抜群のリアリティをもたらしている。
一見、突飛とも思えるような設定だが、ヒルたちの背景を知るにつれて、誰しもが陥る可能性のある身近な社会なんだと痛感させられる。その世界観をリアルに表現した主演2人の、対照的な演技は見応え十分だ。
文=HOMINIS編集部
放送情報
WOWOWオリジナルドラマ ヒル 一挙放送
放送日時:2022年5月19日(木)2:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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