北川景子、深田恭子という日本映画界をリードする人気女優2人の初共演作として話題を集めた映画『ルームメイト』。本格推理作家として知られる今邑彩が1997年に発表したベストセラー小説を原案に、『オトシモノ』『Another アナザー』の古澤健監督が手がけたサイコスリラーだ。北川、深田ともに「脚本を読んでハラハラした」と語るなど、二転三転するストーリー展開が特徴的な作品だ。
本作の主人公は、派遣社員として働く萩尾春海(北川)。ある日、交通事故で頭を打ち片足を骨折、しばらく入院することになった春海だったが、そんな彼女を気遣い、支えてくれたのが看護師の西村麗子(深田)だった。互いに親近感を覚えたふたりは、すぐに意気投合。ルームシェアを提案し、一緒に暮らしはじめることとなった。
「こんなに風に本音でしゃべれるのは麗子がはじめてかも」「麗子みたいな人だったらずっと一緒にいたいと思う」「わたしも」――。2人の共同生活は順調な始まりを見せた。だがひょんなことから春海は、麗子の様子に奇妙な違和感を抱くようになる。1人でいるはずなのに誰かと会話をしている?会話の途中でいきなり凶暴性を出したのはなぜ?春海はただただ、そんな彼女の様子に戸惑うばかり。それは麗子の本性なのだろうか?そして春海の周りで起こる不可解な事件が春海を追い詰めるようになる。それは麗子の仕業なのか、それとも――。
本作のキャスティングは「演技力と存在感を備え、個性が違い、共に女性の憧れである女優」というところから2人の名前が挙がったという。深田演じる麗子は、優しさの奥底に潜む狂気の芝居が必要となり、彼女自身、インタビューなどで「この役は挑戦だった」と語るほどの難役だった。おっとりとした声で話していたと思うと、いきなりドスの効いた低い声に変貌するさまは、普段の彼女の柔らかい印象からすると、そのギャップにドキッとさせられる。
一方の北川は、信頼していたはずの身近な人間の中に何か得体の知れないものを感じ、ジワジワと追い詰められるような複雑な感情、そして葛藤を、受けの芝居で演じきった。当時のインタビューでも「受けの芝居はこの作品が初めてだった」と語る通り、その後の『スマホを落としただけなのに』『ファーストラヴ』といった作品で見せた受けの芝居にも通じるような萌芽がここにはある。そしてクライマックスに向けて二転三転するストーリー展開の中で、北川自身がゾクッとするような芝居を披露する瞬間があるが、そのシーンについて、彼女自身は「知らなかった自分を知ることができた気がする」と語っている。
なお余談だが、吉川愛(本作では吉田里琴名義)、萩原みのりといった近年注目の若手女優が少女時代に出演した作品という点でも、本作は注目したい作品となっている。
文=壬生智裕
放送情報
ルームメイト(2013)
放送日時:2022年6月12日(日)14:30~
チャンネル:WOWOWシネマ
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