ツンデレお嬢さまを演じる北川景子がハマり役。トップ女優への快進撃が加速したヒット作「謎解きはディナーのあとで」

追いかけきれないほど数多くある連続ドラマの中でキャスティングがピタリとハマった作品を見つけるのは、ドラマファンの楽しみ。2011年に地上波で放送が始まり、櫻井翔と北川景子のコンビがスター性抜群と人気を集めた「謎解きはディナーのあとで」。そのドラマが好評を得て制作された映画版がＷＯＷＯＷで放送される。

主人公は日本有数の資産家である宝生家の執事・影山(櫻井翔)。影山は宝生家令嬢である麗子(北川景子)が身分を隠して働くのをフォローし、頭脳明晰であるがゆえに麗子の担当する事件の謎を鮮やかに解いてしまう。ただ、影山はひたすら忠実な執事というわけではなく、"ドS"なところがあり、「失礼ですが、お嬢様の目は節穴でございますか？」などと慇懃無礼な言葉で主人である麗子を揶揄する。そのたびにプライドの高い麗子は「クビよクビ！」とプンプン怒りながらも、結局は事件解決のため影山の推理に頼るしかない。そんな力関係の逆転する関係性を櫻井翔と北川景子がコミカルに演じている。

原作は東川篤哉による同名の人気小説。小説での影山は主に屋敷の中にいて、麗子の話を聞いて頭を働かせ、鮮やかな推理で真相を突き止める、いわば"安楽椅子探偵"だが、実写版では麗子と共にあちこちに出かけることに。特にこの映画はオリジナルストーリーであり、宝生家が所有し経営する豪華客船を舞台に、影山が海の上で大活躍する。

麗子と影山は、麗子の名を冠した宝生家所有の船、プリンセス・レイコ号の引退クルーズに乗り込む。しかし、そこでシンガポール人の投資家が殺され、麗子は、偶然にもシンガポールに贈られるアート作品「Kライオン」警護のために乗船していた風祭警部(椎名桔平)と共に捜査を開始。客室支配人の藤堂(中村雅俊)とその娘・凛子(桜庭ななみ)、調理場スタッフの石川(要潤)、「Kライオン」を狙う泥棒の高円寺兄弟(竹中直人と大倉孝二)ら多くの人が事件に絡み、さすがの影山でも犯人を突き止められないうちに麗子が何者かに捕らえられてしまう。

北川景子はメガネにパンツスーツという刑事のいでたちだけでなく、パーティーなどの場面で華麗なるドレス姿を披露。思い切りの良い演技で高飛車なお嬢様を演じつつ、クルーズ中での恋の出会いを夢見たり、影山が身を挺して守ってくれるとキュンとしてしまったりと、かわいらしさもある女性を魅力的に体現。典型的なツンデレキャラなのだが、デレるときも男性に媚びた感じがないので、同性である女性にも嫌われない。まさに北川景子にしかできないハマり役となっている。

北川はこのとき20代後半に入ったところ。既に主演作もあったが、この後、ヒット路線を邁進し、ドラマ「HERO」の第2シリーズでは木村拓哉の相棒に。主演ドラマ「家売るオンナ」シリーズも高視聴率を獲得し、押しも押されもせぬ存在になっていく。さらに、30代になると、映画『スマホを落としただけなのに』シリーズでホラーに挑戦したかと思えば、『響 -HIBIKI-』や『ファーストラヴ』では一般の働く女性を等身大のリアルで演じ、俳優としての成長を見せている。そんな彼女のブレイク初期の姿をこの作品で振り返ってみては？

文＝小田慶子

この記事の全ての画像を見る