北川景子主演、岡田将生が恋人役を演じたのが今から12年前に公開された映画『瞬 またたき』だ。原作は『余命』、『HOKUSAI』の脚本を手がけた河原れんのデビュー小説。多くの読者の涙させたラブストーリーで交通事故で恋人を失い、衝撃のあまり、その時の記憶が抜け落ちてしまったヒロイン、泉美を北川景子が、美大生の恋人、淳一を岡田将生が演じている。ポッカリ心に空いた穴を抱えて彷徨うように歩く泉美は当時"こんな北川景子は見たことがない"と評されたほど憔悴したヒロインになりきり、それだけに淳一と過ごした回想シーンがキラキラと輝いている。
■気まぐれで優しかった岡田将生演じる恋人との思い出
バイクの事故から2ヶ月、怪我は治ったものの、泉美はその時の記憶を思い出せず、苦しんでいる。精神科の先生に今はその記憶は眠らせた方がいいとアドバイスされ、病院で偶然知り合った弁護士、真希子(大塚寧々)の職場を探して相談に行くが、自分が思い出したくないから脳が記憶を消していると断られてしまう。事故の断片的な記憶のフラッシュバックに夜もうなされている泉美が思い出すのは今となっては眩しい2人の思い出ばかり。河川敷で生まれ育った出雲のイメージの絵を描く淳一に一緒に故郷に行こうと誘われたこと、花屋で働く泉美のもとをバイクで訪ね、突然、「明日、桜見に行かない?」と言われたこと。空の色に似たパーカーがよく似合う気まぐれな淳一を岡田将生が爽やかに演じている。当時、岡田はまだ20代半ば。泉美に向ける微笑みにもあどけなさが残り、優しい彼氏を自然体で演じている。
■魂が抜けたような北川景子の演技と凄惨な事故での2人の熱演
思い出すことがどんなに辛いことであっても、大好きだった恋人との最後の記憶を失ったまま生きていたくないと願う泉美は真希子のもとを何度も訪れる。根負けした真希子は泉美を連れて、2人が運ばれた病院や警察で話を聞き、事故現場に行き、記憶を取り戻すサポートをすることになる。自身も辛い記憶から逃れられないでいる真希子が協力したのは思いつめた泉美が心配だったからなのだが、生気のないヒロインを表情も含め全身で表現している北川が印象的だ。映画では失われた10分間が終盤で再生される。言葉を失うバイクとトラックの事故現場での北川と岡田の演技はそれまでのほのぼのした回想シーンが遠くの出来事に思えるほど壮絶だ。現実と必死に向き合い、記憶を取り戻した先に泉美は何を思い、見つけるのか。泉美の生き方によって自分が避けてきた家族と向き合うことを決意する真希子との関係性も描かれ、生きること、かけがえのない大切なものについて考えさせられる。
文=山本弘子
放送情報
瞬 またたき
放送日時:2022年6月12日(日)12:30~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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