「花子とアン」「まれ」など、朝の連続テレビ小説に出演し、清楚な美貌とはつらつとした笑顔、そして聞き心地のよい美声で幅広い年齢層から高い人気を誇る土屋太鳳。2008年に映画『トウキョウソナタ』で女優デビューを果たした彼女は、2011年に映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE』でのヒロイン役や、連続ドラマ初レギュラー作となった「鈴木先生」で演じた小川蘇美役などで注目を集めたことで知られている。その後は、『orange -オレンジ-』『青空エール』『となりの怪物くん』など、人気コミックの実写映画版で次々とヒロイン役に抜擢。なかでも、大きな秘密を抱える女優を演じた『累 -かさね-』での劇中劇「サロメ」では、高い身体能力をいかしたダンスを披露したことでも話題を呼んだ。
田中圭は、2000年代前半よりTVドラマを中心に活躍。親しみやすい笑顔と自然体の演技が持ち味の彼は、2008年公開の初主演映画『凍える鏡』で、悲しい過去を抱える画家志望の青年を好演したことを皮切りに、『ホームレス中学生』『子育てプレイ』などのドラマでも主演を務めるように。そんな田中の人気を一躍、国民的なものに押し上げたのは、お人好しの青年・春田創一を演じた2018年放送の連続ドラマ「おっさんずラブ」だ。大きなリアクションとくるくる変わる表情、そして潤んだ瞳で誰からも愛される春田を好演し、多くのファンを獲得。その後も、ドラマや映画、舞台などで活躍する他、「おっさんずラブ-in the sky-」で共演した千葉雄大と共に、音楽番組「MUSIC BLOOD」でMCを担当するなど、活躍のフィールドを拡大している。
そんな2人が運命のいたずらで惹かれ合う男女を演じたのが、2021年公開のサスペンス映画『哀愁しんでれら』だ。
土屋が演じるのは、母に捨てられた過去を抱えながらも、平凡な毎日を送っていた26歳の児童相談所職員・小春。ある夜、祖父が風呂場で倒れたことを皮切りに、家から出火したり、彼氏が職場の先輩と浮気している現場を目撃するなど、怒涛の不幸に襲われる。そんな彼女が偶然出会い、命を救ったのが、田中演じる41歳の開業医・大悟だった。大悟が男手一つで育てている8歳の娘・ヒカリとも良好な関係を築くことができた小春は、出会って間もない彼のプロポーズを承諾。海辺の豪邸で誰もがうらやむ日々を過ごしていたが、家族となったことで顕在化したヒカリの不可思議な行動をきっかけに、小春の世界が揺らぎ始める。
年齢も収入も大幅に上の大悟と出会い、愛情を注がれるなかで、輝きを倍増させていく小春をみずみずしく演じた土屋。聴診器で互いの鼓動を確かめてからはじまる情熱的なキスシーンや、結婚式のシーンでみせた真紅のドレスからのぞく引き締まった背中など、大人の魅力もたっぷりと披露している。
一方の田中は、人の良さそうな笑顔の中に潜む大悟の闇を絶妙な出力で表現。小春との会話の中で覗かせる冷徹さなど、少しずつ本性を現していく過程を丁寧に演じたことで、クライマックスで描かれるできごとに大きな説得力を持たせることに成功している。
幸せになりたいと願い続けた女性に舞い込んだシンデレラストーリーのその先を、細部までこだわった美しい映像で描いた本作。土屋と田中が迫真の演技で作り上げた、美男美女カップルの物語の結末をその目で確かめて欲しい。
文=中村実香
放送情報
哀愁しんでれら
放送日時:2022年7月1日(金)4:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
詳しくはこちら