大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)で堂々の主演。鎌倉時代の総理大臣とも言える執権・北条義時を演じている小栗旬。そんな彼が日曜劇場に『日本沈没』(2021年TBS系)に先立ち初主演した『獣医ドリトル』(2010年TBS系)がTBSチャンネル1で一挙放送される。
同名漫画を原作に、瀕死の動物でも救うことのできる、凄腕の獣医・鳥取健一(小栗)とその助手となる田島あすか(井上真央)、テレビなどで人気のカリスマ獣医・花菱優(成宮寛貴)らが、ペットの犬から競走馬や水族館のイルカ、伝書鳩まで、さまざまな動物の治療に当たるエピソードが展開。ドリトルこと鳥取は「獣医は慈善事業じゃない。ビジネスだ」と言い切るクールな男で、心優しいあすかが捨て猫などを持ち込んでも、報酬がなければ治療しようとしない。しかし、あすかは、鳥取の下で働くうちに、彼の中にある温かい心に触れていく。
小栗は、ポマードをつけたテカテカのウェーブヘアと銀縁メガネで、まず外見から原作漫画のドリトルにきっちり寄せている。ドリトルは動物版ブラックジャックとでも呼ぶべき一匹狼で、相手が診療費を払う客だろうが年上の獣医師だろうが遠慮なく厳しい言葉を突きつける。そんなアウトローを男らしい骨太さを漂わせつつ好演。原作のジャンルで言えば、少年・少女漫画の世界から青年漫画の世界へ。このとき27歳で、着実に大人の俳優に脱皮しつつあった。
また、12年前の作品とあって今見ると、キャストの顔合わせが懐かしくもエモい。小栗と井上と言えば、『花より男子』での花沢類と牧野つくし。「まーきの!」という小栗のモノマネが有名になったきっかけにもなった。この2人がシリーズ終了2年後にこの作品で再会し、井上は素直でちょっとドジなキャラ、小栗はちょっとSっぽい傲慢なドリトル役で、息の合ったやり取りを見せているのが楽しい。一方、小栗と成宮は学園ドラマ『ごくせん(第1シリーズ)』(2002年日本テレビ系)では同級生役で共演したことがあり、このドラマでも大学獣医学部の同期という間柄を演じている。
終盤にはドリトルの宿敵である大物獣医師の次男役で菅田将暉も出演。菅田はこのとき16歳で、前年に『仮面ライダーW』(2009年テレビ朝日系)でデビューしたばかり。学ランを着たフレッシュな姿で、ドリトルに動物医療の厳しさを見せつけられ動揺するという繊細な演技を見せている。小栗と菅田は、このドラマで初共演。その後、映画『銀魂』シリーズで銀時と新八を演じるなどして信頼関係を築き、小栗が『鎌倉殿の13人』の主演を引き受けるときはその決断を菅田が後押ししたという。そして、菅田自身も同作に源義経役で出演し、話題になった。
『獣医ドリトル』ではそんな人気キャストの共演に注目しつつ、1話ごとにさまざまな本物の動物が登場するエピソードを楽しみたい。動物の治療はきれいごとではなく。タワーマンションから落下してしまったネコの手術、感染症にかかったイヌの安楽死など、人間の都合で動物の命が脅かされる過程も描かれる。そして、言葉を話せない動物の代わりにドリトルが人間のエゴを指摘し、物語に深みを与えている。
文=小田慶子
放送情報
獣医ドリトル
放送日時:2022年8月7日(日)10:30~【全話一挙放送】
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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