松雪泰子大森南朋の「大人カップル」に魅了...橋口亮輔ら4人の映画監督が紡ぎ出す「初めての情事」へのアプローチ

「初情事まであと1時間(第3話)」
「初情事まであと1時間(第3話)」

12組の男女が初めて結ばれるまでの"1時間"を、時にユーモラスに、また時にセンチメンタルに描き出す、前代未聞の恋愛オムニバスドラマ「初情事まであと1時間」。4人の監督たちがノッツによる同名コミックをもとに脚本を書き下ろし、2021年にドラマ化された同作は、日本映画ファンのツボに刺さる豪華な組み合わせが話題を集めた。

大森南朋と松雪泰子が大人の恋愛模様を展開した「初情事まであと1時間(第3話)」
大森南朋と松雪泰子が大人の恋愛模様を展開した「初情事まであと1時間(第3話)」

(C)「初情事まであと1時間」製作委員会

メガホンを取った演出陣には、日本映画界で確かな爪痕を残してきた橋口亮輔、三浦大輔、大九明子、谷口恒平といった4人の監督が起用。オフ会で意気投合したドール愛好家、40代後半に差し掛かった同級生の幼なじみ同士、不倫に悩む先輩と恋する後輩、演出家と女優、ラジオネームで呼び合うリスナー男女...など、"初情事"の裏側を通して浮かび上がる様々な関係性が赤裸々に描き出された。

また、十人十色の初情事の過程を体当たりで演じている俳優陣も、松雪泰子&大森南朋を筆頭に、数々の映画やドラマでキャリアを重ねる実力者たちが揃った。

■『ぐるりのこと。』の橋口亮輔監督が描き出す"初情事"の過程

「初情事まであと1時間(第1話)」
「初情事まであと1時間(第1話)」

(C)「初情事まであと1時間」製作委員会

先陣を切って第1話を担当したのが、2015年の映画『恋人たち』でブルーリボン賞監督賞を受賞している橋口亮輔監督だ。自身初の劇場公開映画『二十才の微熱』(1992年)が記録的なヒットとなり、続く『渚のシンドバッド』(1995年)や『ハッシュ!』(2002年)も国内外で高く評価されるなど、独自の作家性を持つ実力派として知られている。

また、リリー・フランキー&木村多江が演じる夫婦の10年間を紡ぎ出した『ぐるりのこと。』(2008年)への評価も同様で、数々の映画賞を獲得。どんなに滑稽で哀れでも愛おしい人間そのものにフォーカスし、慈愛に満ちた眼差しで温かく映し出してきた。

「初情事まであと1時間(第1話)」
「初情事まであと1時間(第1話)」

(C)「初情事まであと1時間」製作委員会

そんな橋口が監督を務めた第1話、8話、12話は必見だ。第1話「心の容れ物」のカップルは、工藤阿須加と臼田あさ美が演じるカスタムドール愛好家のオフ会で出会った聡と美智子。意気投合してホテルへ向かった2人は、ドールの前で愛をかわそうとする。ドールの無機質な瞳や白い手袋がかえってエロティックだ。

「初情事まであと1時間(第8話)」
「初情事まであと1時間(第8話)」

(C)「初情事まであと1時間」製作委員会

第8話「鍋の中」では、大友花恋と細田佳央太が、女優を目指すまみ子と彼女に恋する映画監督志望の裕司を演じた。互いに一方通行の恋をしている仲間5人で鍋を囲んだ後、部屋に残った2人はやがて見つめ合う。それぞれの想いの隠れた言葉が行き交う会話劇は絶妙なリアリティがある。

また、『恋人たち』に主演した篠原篤、成嶋瞳子を起用した第12話「ずっくん」は、社会のあぶれ者たちが働くカラオケ店を舞台に描かれる群像劇。篠原はカラオケ店員・ずっくん、成嶋は彼に会うために店を訪れた客をそれぞれ演じており、不器用ながらもどこまでもピュアな彼らのやり取りには惹き込まれてしまう。

「初情事まであと1時間(第12話)」
「初情事まであと1時間(第12話)」

(C)「初情事まであと1時間」製作委員会

■松雪泰子&大森南朋ら、実力派キャストが体現する多様な「愛のカタチ」

「初情事まであと1時間(第3話)」
「初情事まであと1時間(第3話)」

(C)「初情事まであと1時間」製作委員会

大九明子監督は、松雪泰子と大森南朋が登場する第3話「ビフォア」を担当した。故郷である海辺の小さな町で再会した同級生の幼なじみ・上田(大森)と青木(松雪)は、今は酒屋店主とそのパート店員という間柄。いつも通りの配達の帰り道、遠い昔のことを話していると、やがてどちらからともなく唇を交わして...。40代も後半に差し掛かった男女ならではの穏やかな会話や、落ち着いたムードがかえって生々しく、リアルな大人のラブストーリーに仕上がっている。

このほかにも大九監督は、第7話「プラスマイナス、インタレスティング」(主演:趣里、渡辺大知)と第10話「ラスタカラーの夜」を担当。第10話には、アカデミー賞ほか国内外の映画賞を席巻した『ドライブ・マイ・カー』(2021年)で赤いサーブを華麗に乗りこなすヒロインを務めた三浦透子が出演し、戸塚純貴と共に、ラジオネームで呼び合う初対面のリスナーカップルに扮した。

『勝手にふるえてろ』(2017年)や『私をくいとめて』(2020年)で、ヒロインの繊細な心情を丁寧かつユーモアを込めて映し出してきた大九監督ならではの、大人の恋愛にも注目したい。

「初情事まであと1時間(第10話)」
「初情事まであと1時間(第10話)」

(C)「初情事まであと1時間」製作委員会

「初情事まであと1時間(第6話)」
「初情事まであと1時間(第6話)」

(C)「初情事まであと1時間」製作委員会

過激でセンセーショナルなラブストーリーが話題となった映画『愛の渦』(2013年)や『娼年』(2018年)で知られる三浦大輔監督によるエピソードも。第2話「初体験まであと1時間」(主演:萩原利久、木竜麻生)では、付き合って3ヶ月の大学生カップルの"初体験"の裏側が描かれるほか、第6話「浮気の理屈」では、現在放送中のドラマ「六本木クラス」で共演中の中尾明慶とさとうほなみが、互いにパートナーがいながら浮気するカップルを演じている。

第9話「『演出家』と『女優』」は、音尾琢真と小川紗良が演じる演出家と女優の芝居を介した本音のぶつかり合いが展開する。前述の映画2作とは異なり"初の情事まで"を描く本作を、三浦監督がどう表現するのか気になるところだ。

「初情事まであと1時間(第9話)」
「初情事まであと1時間(第9話)」

(C)「初情事まであと1時間」製作委員会

この後も続く相手との初めての情事か、たった一度きりの情事か。恋人同士はもちろん、色んな偶然が絡まり合って訪れる"初情事までの1時間"を、覗き見している感覚が面白い。愛のカタチは様々で、思わずニヤニヤしたり胸に響いたり、懐かしく思い出すこともあるかもしれない。スタッフ・キャストともに豪華すぎる布陣で再現された、恋愛オムニバスドラマの世界。人と人とが触れ合うことがなかなか難しい今だからこそ、その得難い時間を改めて堪能したい。

文=中川菜都美

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放送情報

初情事まであと1時間
放送日時:2022年9月8日(木)3:00~
※毎週(木)(金)3:00~(2話連続放送)
チャンネル:ホームドラマチャンネル 韓流・時代劇・国内ドラマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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