それぞれの公開年に日本の実写作品でトップの興収を記録した『キングダム』と『東京リベンジャーズ』。大ヒット漫画を実写化し、映画としても人気を得ることができた理由について、映画ライターのSYOさんが解説する。
日本のメジャー作品において漫画原作映画はひとつの潮流として存在する。その中で成功する作品には「原作への愛情と熱量がある」とSYOさんは言う。「多くの映画が作られる大きな要因は原作の認知度ですね。過度なプロモーションをしなくてもどんな映画か分かりますし、見る/見ないは別としても原作のファンは話題にする。また、そういう企画にはお金が集まりやすいので、製作全体がうまくいくという背景があると思います。ヒットした作品に共通しているのは、やはり原作に対する愛情と熱量。"ホンモノ"なら観客も見れば分かりますし、制作陣からそれが伝わってくる作品は原作ファンも応援して、さらに広がっていくはずです」
昨年、日本の実写映画でトップの興収を記録した『東京リベンジャーズ』は、原作ファンから愛された好例といえるだろう。「タイムリープ×不良という設定も斬新ですが、登場人物たちがとにかく魅力的で"推し"が大量に見つかる原作でした。映画の成功は、原作ファンから『完璧じゃん!』と思わせるようなキャスティングがカギだったと思います。北村匠海さんをはじめキャストから伝わってくる原作や映画化への本気度は半端じゃない。キャストに対するネガティブな声はほとんどなかった印象です。また、映画には原作ファンがニヤッとするような展開がありますが、英勉監督のコメントの端々に『あっ、ガチな人だ』と感じましたね」
原作への愛情もさることながら、SYOさんがその熱量の高さに驚いたというのが、同じく大ヒットした『キングダム』だ。「熱狂的な原作ファンが多い作品ですし、『東京リベンジャーズ』以上に映画化への期待値が高かったと思いますが、見事な熱量で押し切った印象です。舞台が春秋戦国時代の中国ということで中国ロケを敢行していますし、エキストラの方がたくさんいるので画面がとても豪華、しかも一瞬しか映らないような衣装や美術まで手抜きがない。山﨑賢人さん演じる主人公・信は泥くさく、猪突猛進で熱いキャラクターですが、画面の端々にリアリティーが宿っているので、少しフィクショナルな演技がむしろ存在感を際立たせていたと思います。映画版『キングダム』は小細工をせず、大作らしく真正面からドン! と勝負した成功例といえますね」
しょう●1987年生まれ、福井県出身。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学んだ後、編集プロダクションなどを経て独立。インタビュー、コラムを執筆する他、映画情報番組にも出演している。
取材・文=山崎ヒロト
放送情報
東京リベンジャーズ
放送日時:2022年9月10日(土)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
キングダム
放送日時:2022年9月4日(日)21:00~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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