西島秀俊が三代将軍・徳川家光に！その上様っぷりと松下由樹ら大奥の女性陣に注目の「大奥～第一章〜」

松下由樹主演のスーパー時代劇「大奥～第一章～」(2004年)。江戸城大奥を舞台に繰り広げられる女の戦いを描く人気時代劇シリーズ。第1弾では主演の菅野美穂が第13代将軍・徳川家定の御台所・篤子(天璋院)を演じ、大奥総取締の瀧山を演じる浅野ゆう子らと壮絶なバトルを展開。幅広い年代の女性から高い支持を得て、一大ブームを巻き起こした。第2弾となる本作は、徳川幕府の黎明期「大奥」誕生が描かれる。戦国時代という激動を生き抜いた女たちが、新しい秩序の中で熾烈な生存競争を繰り広げていく。将軍家の乳母から出世して大奥の女たちを統括していた春日局の半生を軸に、さまざまな人間ドラマが展開する。

3代将軍・家光の乳母であり、大奥史上最も有名かつ最強の女帝として君臨した春日局(おふく)は松下由樹が演じた。人気コメディ「ナースのお仕事」シリーズ(1996年〜)やバラエティで見せる気さくで飾らない姿を封印。堂々たる貫禄の演技で、女帝と呼ぶにふさわしい圧倒的な存在感を見せる。眼光鋭く凄みのある声は奥女中ならずとも震えるほどの恐ろしさだ。2代将軍・秀忠の正室として春日局に立ちはだかるお江与は高島礼子が演じ、家光に見初められ尼僧から還俗した側室・お万役に瀬戸朝香、公家出身の御台所・孝子役の木村多江をはじめ、京野ことみ、野波麻帆らタイプの違う女性たちが次々と登場する。星野真里演じる語り役を担う若い女中から見る大奥の世界、豪華絢爛な女たちの火花散る対決も愛憎劇も見応え十分だ。

そして、大奥という女の園の中心に座する3代将軍・家光を西島秀俊が演じている。アカデミー賞国際長編映画賞を受賞するなど昨年の邦画界の話題をさらった『ドライブ・マイ・カー』に主演し、全米映画批評家協会においてアジアの俳優では初となる主演男優賞を受賞した西島。今年は、『シン・ウルトラマン』に続き、凶暴な顔を隠した元暴力団員を演じる主演作『グッバイ・クルエル・ワールド』も9月9日に公開したばかりだ。本作では、参勤交代の制定・鎖国・島原の乱の鎮圧など政治家として確固たる業績を残した将軍ながら、幼い頃に母から愛されなかったトラウマから癒やされない孤独を抱える家光を繊細に表現している。女性陣に劣らぬ多彩な和装姿も、凛々しく美しい。愛憎と策略が渦巻く中で将軍として厳しさを崩さず、憂いを帯びた瞳をのぞかせる。かと思えば、おふくや家臣に激しい怒りを向け、時に子供のような可愛らしい笑顔も見せる。愛されたいと願ってきた母・お江与の臨終に際する悲しみも、孤独な心をお万と通わせていく姿も、表情豊かに演じた。業に揉まれながらも多くの女たちに愛された人間味あふれる上様は、西島ゆえに魅力的に映った。硬軟自在な実力派としての現在の活躍も納得の、若かりし頃の麗しい姿を本作で堪能したい。

文＝中川菜都美

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