藤井聡太竜王の初防衛戦となる第35期竜王戦七番勝負が10月7、8日に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」にて開幕する。
今期の挑戦者決定三番勝負へは広瀬章人八段、山崎隆之八段が勝ち進み、どちらが勝っても藤井とタイトル戦番勝負で戦うのは初の組み合わせとなった。結果は熱戦の末に広瀬が2局とも競り勝って、2連勝で挑戦権を得ることになった。
広瀬は第31期竜王戦で竜王を奪取している。相手は羽生善治竜王(当時)で、羽生が27年ぶりに無冠に転落したのは大きなニュースとなった。翌年の防衛戦では豊島将之名人(当時)に敗れて失冠したものの、今回3期ぶりに七番勝負の大舞台へ戻ってくることとなった。安定した実力者で、まだ八段であることに違和感があるほどである。
藤井は2年前の棋聖戦で初タイトルを獲得して以降、タイトル戦で一度も負けることなく防衛、奪取を続け、早くも10期に到達した。まだ20歳の若さながら、竜王を含む五冠を保持して堂々たる棋界の王者だ。
広瀬は藤井がタイトルホルダーになる前に大勝負を戦うことが多かった。
藤井が初の棋戦優勝を飾ったのは2017年度の第11回朝日杯将棋オープン戦だが、決勝の相手となったのが広瀬だ。その時は終盤で妙手を放った藤井が制し、中学生で全棋士参加棋戦優勝の快挙を成し遂げている。これが広瀬との初手合だった。
2度目の対局は2019年の第69期大阪王将杯王将戦挑戦者決定リーグの最終戦。互いに4勝1敗でリーグトップを並走した状態での直接対決で、リーグ戦ながら実質挑戦者決定戦となった大一番だ。藤井が最初にタイトル戦登場に手を掛けた一局である。相矢倉から二転三転の大激戦だったが、結果は藤井が最後に応手を誤ってのトン死で、広瀬が挑戦権を手にした。これにより藤井の初タイトル挑戦は半年後の棋聖戦まで待つこととなった。
手痛い負けを喫した藤井だが、その後は藤井が現在まで4連勝しており、対戦成績は5勝1敗となっている。
戦型に関しては共に相手の得意を堂々と受けるタイプの居飛車党で、相掛かりや角換わりの最新形となるだろう。藤井は時間が長いほどより安定感が増し、二日制の対局では驚異の20勝2敗(黒星はいずれも豊島将之九段)と、手が付けられないほどの強さだ。広瀬は終盤力に定評のある棋士だが、長時間の藤井に対しつけ入るスキを見つけることができるか。広瀬がどのような作戦を用意してくるかに注目したい。
文=渡部壮大
放送情報
第71期 ALSOK杯王将戦 挑戦者決定リーグ戦 藤井聡太三冠 vs 広瀬章人八段
放送日時:2022年10月19日(水)16:15~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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