松坂桃李が破天荒なマエストロ・西田敏行にブチ切れる!miwa中村倫也らキャストの吹き替えなしの演奏にも注目の映画『マエストロ!』

西田敏行が破天荒なマエストロを演じ、大河ドラマ『軍師官兵衛』などに出演し、後にアカデミー賞を3度も獲得する松坂桃李がコンサートマスター役を演じた音楽エンターテインメント映画『マエストロ!』。原作は第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞に輝いた、さそうあきらの作品でメガホンを小林聖太郎がとった。

クラシックに堅苦しく高尚なイメージを抱いている人もいるかもしれないが、本作に登場するマエストロ・天道徹三郎(西田)はボロボロの格好をして、軽トラに乗る変人。不況の煽りを受けて、一度は解散した楽団の面々が再び、集められ、練習場所を借りる余裕がないから廃工場に集まって音を出すという設定もある意味、リアルだ。松坂桃李が演じるのは若くしてこの世を去った父親が話していた宇宙と響き合うような"天籟"の音色を追い求める青年・香坂真一。亡き父への想いを抱いてプロとしてバイオリンを弾き続けている香坂が指揮棒の代わりに大工道具を振る天道に呆気にとられ、反発し、アマチュアのフルート奏者、橘あまね(miwa)に出会い、自身を縛っていたものから自由になっていくヒューマンドラマでもある。なお、キャストは撮影に臨むに当たって、楽器を猛練習し、吹き替えなしでベートーヴェンやシューベルトの曲に挑戦。松坂の弓使いや構えはプロからも絶賛された。

⒞2015『マエストロ』制作委員会⒞さそうあきら/双葉社

■凝り固まっていた香坂の考えを溶かしたのは天道とあまね

少年の頃から才能を認められ、若くしてコンサートマスターになった香坂は楽団をまとめるポジションであり、コンサートにかかる費用や報酬のことも考えなければならない立場だ。加えて真面目な性格であるため、下ネタを混じえながら団員のプライドをボコボコにするようなマエストロ・天道のやり方に疑問を感じている。松坂の表情の変化は、香坂の心情を雄弁に物語る。アマチュアであることで白い目で見られていたあまねが天道に「見本を見せろ」と言われ、子供の頃、父を震災で亡くした時の情景や悲しさを思い出しながらソロを吹くシーンでは、その音色に顔色が変わり、天道が楽団の先輩をジジイ呼ばわりし、何度もダメ出しした時には抑えていた感情を爆発させ、「いいかげんにしろ!時間の無駄だろ?」と楽団のみんなが引くほどマエストロにブチ切れる。何回、弾いても父のようにはなれないという葛藤を抱えながら心を閉ざして生きてきた香坂の音楽観、ひいては人生観をいい意味で壊したのは音楽を奏でることを心から楽しんでいるあまねと紙一重のはちゃめちゃなマエストロだった。

なお、本作にはティンパニ奏者として中村倫也も出演している。

■クラシックに興味がなくても心に刺さる名言続出

天道のコンプライアンスゼロのダメ出しは言葉こそ乱暴だが、的を得ている。「運命」を演奏する前には「これは決闘なんや」と緊張感を持たせ、息が合わない時には、まわりの音を聴いてちゃんと演奏しろ!と一喝する。あまねにソロを吹かせる前には楽団のみんなに「一滴の雫に宇宙が入っているような音を鳴らせ」と怒鳴るが、クラシックであろうがロックであろうがポップスであろうが、ジャズであろうが、同じことが言えるし、もっと言えば表現の真理を突いている台詞が多い。

映画のクライマックスとも言える舞台での「運命」「未完成」は世界的に活躍する佐渡裕による指揮、ベルリン・ドイツ交響楽団によるもので、プロの奏者とプロの役者との競演が実現。本番前の楽屋の緊張感、本番直前の袖での様子までたっぷり尺がとられ、本物のバイオリニストに成長した松坂の演奏シーンは感無量である。

文=山本弘子

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放送情報

マエストロ!
放送日時:2022年10月27日(木)18:45~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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