窪田正孝の新たな魅力を引き出した映画『ヒーローマニア-生活-』

2016年に公開された映画「ヒーローマニア-生活-」は、人気漫画家・福満しげゆきの代表作「生活【完全版】」を原作とする実写作品だ。冴えないフリーターの青年が、一癖ある仲間と共に地元で悪さをする悪人たちを退治するという物語で、コメディ色の強い極めて個性的なヒーロー映画に仕上がっている。

主人公の中津を演じたのは、本作が初のコメディ挑戦となった東出昌大。その仲間であり、バイト先のコンビニで迷惑な客を退治した男・土志田を窪田正孝が演じている。土志田は謎の身体能力を持つ格闘技の達人だが、趣味が下着泥棒というニート。普段は気弱でおとなしい性格で、いつも赤いニット帽を被っている。この造形からして極めてユニークで、物語の核になっている人物だ。さらに、2人の仲間になる情報収集能力に長けた女子高生・カオリ役に小松菜奈。下着を盗もうとした土志田と遭遇し、数日後再会した彼らの活動に興味を持って仲間に加わる。クールで知的な性格で、普段は三つ編みの髪型でメガネをかけている。もう1人、チーム最年長にして"若者殴り魔"の異名を持つ定年間近の男・日下を円熟期に入ったベテランの片岡鶴太郎が演じており、バラエティに富んだ豪華キャストの競演が実現した。

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」製作委員会

ステレオタイプではないユニークなヒーロー像である彼らが、小さな社会悪を退治する自警団を結成し、その活動は市民たちからも支持されるようになる。このあたりのストーリー展開は新鮮かつ痛快だ。希望を見い出せずにいた主人公が、自警団の活動を通して生きる術を見出していく物語にもなっている。ただ、自警団はやがて巨大組織へと成長して、中津らはホームレスの宇野(船越英一郎)を社長に迎えて組織を法人化。「ともしび総合警備保障会社」を設立するが、その力を私欲のために使おうとする新メンバーが現われたことで秩序が乱れはじめていく...。

アクションあり、笑いあり、さらに後半のストーリーにも惹きつけられる。監督は「ソフトボーイ」や「花道道中」などで知られる俊英・豊島圭介が務めているが、近年では「特捜9」シリーズ」(テレビ朝日系)や「新・信長公記〜クラスメートは戦国武将〜」(日本テレビ系)などテレビドラマでの活躍も目立ち、本作での軽快なテンポ感はテレビドラマ的で心地よい。漫画原作の実写映画化という点では、「森山中教習所」(2016年)でも高く評価された。

同作でも主演の野村周平をはじめ、役者の新たな魅力を引き出すのがうまい監督だという印象が強かったが、本作はそれ以上だ。知的でクールな印象の東出昌大をあえてダメダメなフリーターに配した点もいいが、窪田正孝のポテンシャルには改めて感心させられる。下着泥棒かつ格闘技の達人であるというハチャメチャな設定にもまったく違和感なく、アクションも素晴らしい。主人公が狂言回し的な位置づけでもある分、彼の存在がストーリーのキモにもなっているし、窪田が演じるからこそ説得力もある。また、本作では小松菜奈も映画賞を総ナメにするなど、その演技を高く評価されている。

ヒーローとは何なのか? 人はどうすればヒーローになれるのか? そんな定義をも考えさせられる作品になっており、見どころは満載の映画だ。そんな「ヒーローマニア-生活-」が、WOWOWで放送される。アクション満載で、爆笑シーンもたっぷり。ちょっと変わったヒーロー映画として大いに楽しめる。窪田正孝をはじめ、東野昌大、小松菜奈ら出演俳優陣の新たな魅力に出合える作品として、改めておすすめしたい。

文=渡辺敏樹

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放送情報

ヒーローマニア-生活-
放送日時:2022年12月5日(月)13:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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