登場人物たちのピュアさやまっすぐさを体現!北村匠海の進化と底が見えない潜在能力から目が離せない

ハンパない「ジャンプ力」と卓越した表現力で観る者を魅了する北村匠海(『東京リベンジャーズ』)
ハンパない「ジャンプ力」と卓越した表現力で観る者を魅了する北村匠海(『東京リベンジャーズ』)

©和久井健/講談社 ©2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

俳優としてカメラのフレームの中に立った時の、北村匠海の「ジャンプ力」はハンパない。岡田将生や松本潤、小栗旬などが扮する主人公の幼少期を演じた10代での快進撃も凄まじかったが、彼はその頃から、どこにでもいる普通の人間や、それこそ気弱で存在感が希薄な人物にさえ一瞬の輝きや魅力をもたらす潜在的な能力を備えていたような気がする。

■心を閉ざした少年の心情の変化を等身大の演技で丁寧に表現

2016年の『ディストラクション・ベイビーズ』や同年のドラマ「ゆとりですがなにか」「仰げば尊し」などではエッジの効いたキャラを振り切った芝居で体現した北村だが、その物静かで品行方正な青年のイメージを決定づけたのは周知の通り、2017年の初主演映画『君の膵臓をたべたい』で演じた【僕】役だ。

劇中の【僕】は、重度の膵臓の病で余命いくばくもないクラスメイトの桜良(浜辺美波)の秘密を偶然知ってしまったために、「『死ぬ前にやりたいこと』を叶えてほしい」という彼女の願いをしぶしぶ引き受けることになる。そして、桜良と同じ時間を過ごすうちに、事なかれ主義だった【僕】も緩やかに変わっていくのだが、北村はその微細な変化に等身大の芝居で説得力を持たせていた。

【僕】は内気で消極的な人物に見えがちだが、そうではない。本作の月川翔監督も公開時に「【僕】は休み時間にみんなが騒いでいても、一人読書をするようなタイプで、そこは北村匠海とも共通している」と語っていたが、北村には自分の世界や時間を静かに守り続ける揺るぎない「強さ」がある。だからこそ、彼の芝居が共演者の芝居と強く響き合い、化学反応を起こした時には、自らのアイデンティティに裏づけされた輝きや魅力をスパークさせるのだろう。

そのことをはっきりと印象づけた最初の映画が、『サヨナラまでの30分』(2020年)だ。『OVER DRIVE』(2018年)などで共演し、プライベートでも仲がいい新田真剣佑とのW主演を果たした本作で北村が演じたのは、他人と関わることを拒否する大学生の颯太。彼は1年前に事故で他界したバンドのボーカル、アキ(新田)が遺したカセットテープをレコーダーごと偶然拾い、テープを再生している30分間だけ中身がアキと入れ変わる日々を送るようになる。

出会うはずのなかった2人が紡ぐ奇跡のドラマは、北村の多彩な表情とアプローチがなければ成立しなかったに違いない。あることが原因で心を閉ざしていた颯太は、アキと心を通わせるうちに、みるみる前向きな思考に変わっていく。そんなその時々の彼を、同じ容姿でありながらも違う印象を与える言動や佇まいの繊細な変化で表現していた。

前半は伏し目がちの暗いオーラでもともとの颯太を演じ、アキと入れ替わった時は無邪気な明るさと優しさ、その裏にある彼の哀しみが滲み出る芝居を徹底。さらには、解散してしまったアキのバンドを再結成させ、彼の恋人だったカナ(久保田紗友)に再び音楽を始めさせようと奔走するまでの心の変化を、颯太の中に芽生えた強い意思を感じさせるそれまでとはまったく違う目の輝きと躍動感、最初は相手にもしてくれなかったバンドメンバーの心を動かす美しい歌声で成立させていて驚かされた。

■漫画原作のキャラクターにもリアリティをもたらす北村匠海の「ジャンプ力」

『とんかつDJアゲ太郎』(2020年)では、北村の音楽の才能とセンス、芝居の振り幅の大きさがコメディの形で爆発している。本作で演じたのは、父親からキャベツの千切りしか任せてもらえない老舗とんかつ屋「しぶかつ」の三代目・揚太郎。そんな彼が配達で初めて足を運んだクラブでダンスミュージックに魅せられ、とんかつもフロアもアゲられる「とんかつDJ」を目指す姿が描かれている。

とんかつもフロアもアゲられるDJを目指す揚太郎を演じる『とんかつDJアゲ太郎』
とんかつもフロアもアゲられるDJを目指す揚太郎を演じる『とんかつDJアゲ太郎』

Ⓒ2020 イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会

北村はそんな愛すべきおバカな揚太郎を、内気な心を表すことが多かったピュアな瞳で体現。深く考えずに思い立ったら行動に移す揚太郎の単細胞キャラを、被り物で踊ったり、タンクトップで渋谷の街を走り回ったりと、本人はおかしいとも恥ずかしいとも思っていない無邪気な芝居で形にして爆笑を呼んだ。

北村の芝居は常にまっすぐだが、揚太郎役はそのまっすぐさをコメディに転換させた好例と言えるだろう。彼自身は別に笑わせようとはしていない。だけど、傍から見たら勘違いも甚だしいことを全力で演じているからおもしろいのだ。

とんかつ屋の跡取り息子である揚太郎は突然、クラブDJになることを思い立つ!(『とんかつDJアゲ太郎』)
とんかつ屋の跡取り息子である揚太郎は突然、クラブDJになることを思い立つ!(『とんかつDJアゲ太郎』)

Ⓒ2020 イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会

その一方で北村の音楽センスが冴えわたり、キャベツやとんかつをさくさくと切るリズミカルな音が「とんかつとDJは同じだ!」と思う揚太郎の思考に観る者も共感させる。そこに嘘がないからこそ、自分のDJプレイに酔って暴走し、フロアの客からドン引きされた揚太郎がどん底の中で初めて大切な「気づき」を得るその前のシーンにも説得力がある。

それこそ、カリスマ人気DJの屋敷蔵人(伊藤健太郎)とクラブでDJセッションをするクライマックスの揚太郎には、音を自由に楽しそうに操る北村本人の表情も見え隠れしてカッコいい。事の本質を理解し、すべてが変わった揚太郎が、見た目だけではない心揺さぶる本物のDJプレイを炸裂させるからひと際輝いて見えるのだ。

天然の勘違い野郎から本物のとんかつDJに!コミック原作の映画化で、コメディのジャンルに分けられる本作がリアルで身近なものになったのは、あのぶっ飛んだ設定も具現化できる北村の底知れぬジャンプ力があったから。それは間違いない。

音楽にとんかつ、そして恋。バイブス全開で青春を走り抜く揚太郎を北村が全力で演じた(『とんかつDJアゲ太郎』)
音楽にとんかつ、そして恋。バイブス全開で青春を走り抜く揚太郎を北村が全力で演じた(『とんかつDJアゲ太郎』)

Ⓒ2020 イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会

『東京リベンジャーズ』(2021年)で演じたフリーターの花垣武道(通称:タケミチ)は、そんな北村のジャンプ力が最も活かされた現時点での一番の当たり役と言っていいだろう。和久井健の人気コミックを実写化した本作は、ボロアパートに住み、バイト先のレンタルビデオ店では年下の店長からバカ扱いされているダメダメフリーターのタケミチが、荒れていた10年前の高校時代にタイムリープし、殺された恋人の橘日向(今田美桜)と彼女の弟・直人(杉野遥亮)を救うために関東最凶の軍団「東京卍會」に乗り込んでいくSF青春アクション。

負け犬人生を送っていた青年が、大切な人を救うために高校時代へタイムリープする『東京リベンジャーズ』
負け犬人生を送っていた青年が、大切な人を救うために高校時代へタイムリープする『東京リベンジャーズ』

©和久井健/講談社 ©2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

夢も希望も、生きる目標もないどん底の現在を生きているタケミチがタイムリープした10年前の世界で日向を救うために奔走し、その中で強く前向きに変わっていくところが最大の見どころだが、本来の彼は普通の気弱で控えめな男の子。まさに、普通が絵になる北村にピッタリなキャラクターで、実際、映画冒頭のアパートの汚い部屋で目を覚ます淀んだ目をしたタケミチのイケてなさにはまったく違和感がない。

それだけに、タイムリープで現代と過去を何度も往来しながらどんどん変わっていくタケミチの姿から目が離せなくなる。

ボサボサの髪で見た目もパッとしない現代から、本人は最低だったと思っている、金色に染めた髪を逆立ててイキがっていた高校時代へ。そんな外見だけではなく、逃げてばかりいた過去をやり直すために、ケンカに明け暮れる猛者たちの世界に飛び込んでいくタケミチの変化を北村はここでも迫真の芝居でリアルなものに。ケンカが決して強くなく、天敵のキヨマサこと清水将貴(鈴木伸之)にボコボコにされるが、それでも何度でも立ち上がり、向かっていく。決して屈しないし、諦めない。

そこには北村自身の中にある熱いものも感じられるから、東京卍會の総長、佐野万次郎=マイキー(吉沢亮)や副総長の龍宮寺堅=ドラケン(山田裕貴)がタケミチを認め、仲間に引き入れる展開も自然に受け入れられる。

自分よりも大きくて、強い相手にも果敢に立ち向かうタケミチがカッコイイ!(『東京リベンジャーズ』)
自分よりも大きくて、強い相手にも果敢に立ち向かうタケミチがカッコイイ!(『東京リベンジャーズ』)

©和久井健/講談社 ©2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

大切な人を救うためなら、強くなれるし、敵わないと思える相手にも立ち向かっていける。相手とちゃんと向き合えば、わかり合うこともできる。マイキーやドラケンと心を通わせ、彼らが本当は優しい心を持っていることにも気づくそんなタケミチを、北村が全身で肯定していたから観る者も自然に熱くなる。本作が多くのファンから支持されたのは、原作コミック同様、現実から目を逸らしがちな自分を見つめ直す物語だったからに違いない。現実さえも変えてしまう北村の芝居が、私たちのリアルと確実にフィットしたのだ。

となると、早くも気になるのは、2023年公開予定の『東京リベンジャーズ2』で北村がどんなタケミチを見せてくれるのか?進化し続ける彼の、さらなるジャンプ力を期待せずにはいられない。

文=イソガイマサト

イソガイマサト●映画ライター。独自の輝きを放つ新進女優、ユニークな感性と世界観、映像表現を持つ未知の才能の発見に至福の喜びを感じている。「DVD & 動画配信でーた」「J Movie Magazine」「スカパー! TVガイド」「ぴあアプリ」「MOVIE WALKER PRESS」や劇場パンフレットなどで執筆。映画やカルチャー以外の趣味は酒(特に日本酒)と食、旅と温泉めぐり。

放送情報

東京リベンジャーズ
放送日時:2022年12月2日(金)21:20~
チャンネル:チャンネルNECO

とんかつDJアゲ太郎
放送日時:2022年12月3日(土)11:05~、19日(月)11:05~
チャンネル:日本映画専門チャンネル

勝手にふるえてろ
放送日時:2022年12月29日(木)18:45~
衛星劇場

ディストラクション・ベイビーズ
放送日時:2022年12月7日(水)3:00~
WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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