レース専用に設計されたスポーツプロトタイプカーと、市販車をベースに改造したグランドツーリングカーの2車種が、計4つのクラスに区分されて戦う、FIA世界耐久選手権(WEC)。6時間以上の耐久レースが全8戦開催され、シリーズの頂点に君臨するのが、F1モナコグランプリ、インディ500と並ぶ、世界三大レースのひとつ、ル・マン24時間レース。そのル・マンで今年優勝したのがトヨタの中嶋一貴だ。
(C)TOYOTA MOTOR CORPORATION
6月に行われたWEC第2戦のル・マン24時間レース。中嶋は、フェルナンド・アロンソ、セバスチャン・ブエミと組み、トヨタのTS050 HYBRID 8号車で出場。ポールポジションを獲得すると、決勝レースでは同じトヨタの小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペス組を抑えて優勝。日本車の優勝は1991年のマツダ以来、日本人ドライバーの優勝は2004年の荒聖治(アウディ)以来、そして日本人ドライバーが日本車で優勝するのは史上初の快挙だった。2年前のル・マンで、レース終了約5分前までトップを快走していたものの、突然のエンジントラブルでスローダウンし、無線で「ノーパワー!ノーパワー!」と絶叫しながらストップしてしまった悲劇を乗り越え、歓喜の初優勝を飾った。
日本人初のF1フルタイムドライバー中嶋悟を父に持つ中嶋一貴は、幼少時からレースを見て育った生粋のドライバーだ。1997年に12歳でカートレースへ参戦すると、2004年に全日本F3選手権、2006年にユーロF3と、着実にステップアップ。そして2007年にウィリアムズ・トヨタからF1デビューを果たした。F1では2009年まで走り、計36戦に出走して最高は6位入賞で計9ポイントを獲得。マシンの戦闘力は高くなかったが、父譲りの粘りの走りは評価されていた。2010年以降は、国内レースのスーパーフォーミュラやSUPER GT、そしてWECを主戦場にしている中嶋。どんなカテゴリー、どんなマシンでも、着実に結果を残す姿は、まさに"レース職人"と言えるだろう。
今シーズンのWECでは開幕戦のスパ・フランコルシャン(ベルギー)、第2戦のル・マン(フランス)と2連勝を飾っている中嶋。第3戦となる8月のシルバーストーン6時間レース(イギリス)でも、勢いに乗った走りで栄光のチェッカーフラッグを受けることができるか。長丁場のレースでも決して集中力の途切れない中嶋一貴の粘り強い走りに注目だ!
(C)TOYOTA MOTOR CORPORATION
Profile
1985年愛知県生まれ。2003年、スカラシップ生として挑んだフォーミュラトヨタでチャンピオンを獲得。2004年に全日本F3、2006年にユーロF3、GP2に参戦。2007年にF1デビューを果たし、2008・2009年はレギュラードライバーとして参戦。2012年からWECに参戦し、国内レースとともに活躍している。
文=エンターバンク
放送情報
FIA 世界耐久選手権(WEC) 18/19 第3戦
放送日時:2018年8月19日(日)20:30~
チャンネル:J SPORTS 1
2018 ル・マン24時間レースの舞台裏
放送日時:2018年8月5日(日)21:00~
チャンネル:J SPORTS 3
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
詳しくはこちら