「生き残る術をいつも必死で探しているのかもしれません」
U-20フットサル日本代表の監督を勤める鈴木隆二は自身のキャリアをそのように語る。10代で行った"代理人なし通訳なし"でのブラジル留学から始まり、選手としては晩年にあたる29歳でのスペイン移籍。そして、指導者となった現在も2018年より筑波大学院に入学と新しい知見への貪欲さは増すばかり。その背景には自身の、そして、日本フットサル界への危機感があった。
「現役当時、日本人で構成されるグループでブラジルやヨーロッパの国々に対抗できるイメージが全く浮かびませんでした。世界のトップと戦い、勝利を収めるためには何が必要なのか。スペインに移籍したのはそのヒントを得るためです。フットサルの歴史ではブラジルよりも後発にも関わらず世界最高峰と呼べるレベルまで辿り着いた国が、どのような価値観を持って、どのような取組みを行っているのか知りたかった」
そうした動機で移籍したスペインでは現地の指導者資格である「モニトール」も取得している。しかし、意外にも当時は指導者への興味は全くなかったという。
「モニトールの資格は、最初のオフシーズンに集中講義で取得しました。当初は指導者になりたいと考え資格を取りに行ったのではなく、単純に素晴らしい選手がたくさんいるということは、その選手を育てる優れた指導者がいるはず。そして、その指導者を養成するカリキュラムを知ることでスペインの強さの秘密や自身の成長につながると考えてのことでした」
「僕の中では選手を引退したという感覚はないんですよ」と笑う鈴木氏であるが、常に新しいものを取り込もうとする視野の広さや、「日本の団体ボール競技を世界のトップクラスにしたい」という想いを持ち続けてきた彼がU-20フットサル日本代表監督就任することは必然だった。この先のキャリアは自身の経験を伝えていくステータスに突入する。
「日本は集団で物事を進めていくのは僕が経験してきたどの国と比較しても優れていると思います。しかし、それを集団ボール競技に移して考えると、状況が少し変わってしまいます。一般的に言われるフィジカルの差はあるかもしれませんが、それを補っても余るだけの集団としてパワーを発揮できるものが日本人にはあるはず。ただ、それはあくまでも集団ボール競技の核を理解し学ぶことで発揮されるもの。その核となるであろうことを自分はスペインで学ばせてもらっています。これは日本の若い選手に絶対に伝えなければならないことだと考えています」
U-20フットサル日本代表監督が考えるFリーグの見どころ
フットサル日本代表が世界に追いつくためには国内リーグの活性化は必要不可欠である。12年目のシーズンとなるFリーグを鈴木氏はこのように捉えている。
「Fリーグは技術的にも戦術的にも大きく進歩したと思っています。しかし、世界はどんどん進化していきます。追いついているとは言えない状況です。試合を視察する際は今携わっているU-20日本代表でのチーム作りのフィロソフィーに沿う形で3つのポイントに注目します。中核に置いているのは「どんな困難な状況でも常に前のめりの行動をとること」。次は「選手同士シンクロすること」、3つ目は全員が「ファミリーになること」です。勝利を呼び込むには、コミュニケーション力、戦術的集中力、攻守の闘争心をお互いに示しながら信頼できる仲間に成長していくことが大切だと思っています」
さらに若手を指導する鈴木氏ならでは視点で見どころも紹介してくれた。
「今年からFリーグに参入している「Fリーグ選抜」は面白いですよ。各チームからU-23の選手が選抜されたチームなのですが、僕がU-20フットサル日本代表の活動で指導した選手が7人入っています。若い選手が活躍できる場が増えることは嬉しいですし、ファンの皆さんにも是非注目してもらいたいですね」
【プロフィール】
鈴木隆二(すずきりゅうじ)
1979年5月7日生まれ 東京都出身
小3よりサッカーをはじめ、小4より読売サッカークラブユースS所属。16歳でブラジルBOTAFOGO FC(サンパウロ)ジュベニール所属。2000年大検合格を経て駒澤大学サッカー部所属。大学卒業後フットサルへ転向。2005年フットサル日本代表に選出。日本、スペインでプロ選手としてプレー。スペインサッカー協会フットサル指導者資格トップレベル3取得。12年以降スペイン2部Bリーグ監督、育成年代監督、U12,14カタルーニャ州選抜コーチ等歴任。16年以降U19フットサル日本代表監督、兼フットサル日本代表コーチを務めている。
取材・文:玉利剛一
放送情報
フットサル Fリーグ 18/19
放送日時:2018年10月12日(金)・13 (土)
チャンネル: J SPORTS 2
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
詳しくはこちら