希代のヒットメーカー・内川聖一が加入し、ヤクルト打線がさらにパワーアップ！

各地でオープン戦が行われ、いよいよ3月26日(金)の公式戦開幕が近づいてきた日本プロ野球。今季も東京ヤクルトスワローズの主催試合は、フジテレビONEの「SWALLOWS BASEBALL L!VE 2021」で全試合生中継される。高津臣吾監督体制となって2年目を迎え、6年ぶりのリーグ優勝を目指すヤクルトは今季活発な補強を行った。その目玉が、ソフトバンクから移籍してきたベテランの内川聖一だ。

■2008年に右打者史上最高打率で首位打者を獲得

大分県大分市生まれの内川は、法政大学時代に東京六大学野球リーグでベストナインに輝いたこともある父・一寛氏の影響で野球を始めた。大分工業高校時代は骨に穴が開く病、骨のう腫を患い左足かかとを３度の手術。監督だった父とともに甲子園出場を目指したが、夢はかなわなかった。しかし、病魔を克服した2年夏からの実質1年で43本塁打を放った強打を評価され、2000年のドラフト1位で横浜ベイスターズ(現横浜DeNA)へ入団した。

プロ入り4年目の2004年、開幕スタメンに名を連ねた内川は、2006年には124試合に出場して115安打と、ほぼレギュラーの座をつかんだ。そして、2008年は開幕から好調でヒットを積み重ね、打率.378で初の首位打者に輝き、最多安打(189安打)、最高出塁率(.416)のタイトルも獲得。打率.378は右打者として日本史上最高の記録で、日本人選手のセ・リーグ最高記録でもあった。2010年に自身初の全試合出場を果たし、3年連続の打率3割超えを記録した内川は、シーズン終了後にFA(フリーエージェント)権を行使。パ・リーグの福岡ソフトバンクホークスへ移籍することが決まった。

■抜群の集中力を発揮する「ミスター短期決戦」

ソフトバンク1年目の2011年、左脚のケガに悩まされるも、セ・パ交流戦でMVPに輝くなど活躍した内川は、打率.338で2度目の首位打者を獲得。中日やロッテなどに在籍した江藤慎一以来、史上2人目となるセ・パ両リーグでのリーディングヒッターとなった。その後も2014年に7年連続の3割をマークし、2018年に通算2000本安打を達成するなど、多くの実績を積み重ねてきた内川は、ここ一番で発揮する集中力もすさまじい。クライマックスシリーズ通算歴代最多の10本塁打を放っており、3度のMVPを獲得(2011年、2015年、2017年)。日本シリーズでも2014年にMVP、2017年に優秀選手賞を受賞しており、「ミスター短期決戦」の異名を持っている。

2019年には一塁手として史上2人目、パ・リーグでは初となる守備率10割(無失策)を記録し、自身初となるゴールデングラブ賞を獲得。しかし、昨年は開幕が延期になって調整が難しかったことも影響してか、練習試合で不振に陥り、開幕から2軍生活が続いた。それでも調子を取り戻し、2軍で打率.327と結果を残したものの、若返りを図るチームの方針もあって一度も1軍に呼ばれることはなく、退団を決意。12月にヤクルトへ移籍することが決まった。

■今季は史上4人目の両リーグ1000本安打達成を狙う

ヤクルトへの移籍を決めたのは、杉村繁打撃コーチが在籍していたことが大きい。内川は2008年に横浜のコーチになった杉村から、バッティングを徹底的に改造された。それまでは差し込まれることが嫌でヒットポイントを前に置いていたが、しっかりとボールを引き付けて力が伝わる打ち方に変えられ、それが功を奏して首位打者を獲得できたのだ。その杉村コーチから、今度は違うことを学びたいと内川は言う。「技術を伝える側のことも学びたいです。状況に応じてどんなアドバイスをするのかなど、そういう部分も感じとれば、自分が現役を辞めて伝える側になった時、役立つことがたくさんあるんじゃないかと思います」と、将来の指導者への道も見据えている。

38歳の大ベテランながら、積極的に声を出してチームを盛り上げるムードメーカーでもある内川は、ヤクルトの明るいチームカラーにもマッチしている。山田哲人、村上宗隆、青木宣親らに内川が加わる強力打線は相手チームにとって脅威だ。オープン戦初戦ではいきなりホームランを放ち、おなじみの"あごタッチ"で笑顔を見せるなど、好スタート切った内川。あと23試合の通算2000試合出場、あと43打点の通算1000打点、あと55安打の両リーグ1000本安打に向けて、今季はファイトあふれる元気なプレーを見せてくれるはずだ。

文＝田口裕(エンターバンク)

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