来季から新リーグが発足するため、ジャパンラグビートップリーグは現状の形では今季が最後となる。J SORTSでは、全20チームがトーナメント戦で優勝を争うプレーオフを全試合生中継。今回、日本のラグビー界を長年引っ張り続け、今季を最後に引退することを発表した五郎丸歩(ヤマハ発動機ジュビロ)に、これまでの道のりやラストシーズンの思いなどを聞いた。
■新たにチャレンジしながら、道を切り開くためにヤマハへ入団
昨年12月、トップリーグの開幕を前に、五郎丸は今季限りでの現役引退を発表した。シーズン開幕前の発表には、どんな思いがあったのだろうか。
「ヤマハに入団した時から第一線で戦えるのは35歳が節目だと思っていたので、今シーズンを最後に引退しようというのは、早い段階で決めていました。チームからは、来シーズン以降も選手兼コーチのような形で続けてほしいと言っていただいたのですが、自分は1つのことに集中してやってきた人間なので、性格的に2つの立場を掛け持ちするのは難しいと思い、引退を決断しました。コロナ禍で今シーズンは途中で中断、終了の可能性もあるので、応援してくださる全ての方に事前に伝えておきたいと思い、開幕前の発表になったんです」
五郎丸がヤマハ発動機に入団したのは2008年。早稲田大学で全国大学選手権を3度制し、日本代表にも選出されていたスター選手の五郎丸が、当時強豪チームとはいえなかったヤマハに入団したのは驚きもあった。
「周囲から『どうしてヤマハなの?』と聞かれることはよくありましたけど(笑)、自分としてはこのチームに大きな可能性を感じて入りました。大学の時は学生日本一になることを義務付けられているようなチームでしたが、ヤマハに入って新たにチャレンジしながら道を切り開き、日本一を目指すことは、とても刺激的で魅力的でした。2010年度には下部リーグとの入れ替え戦でトップリーグ残留を決めるなど、苦しい時期もありましたが、そこから這い上がって2014年度の日本選手権で優勝することができました。チームメイトだけではなく、会社のサポートや地域の方々の支援にも感謝しています。いい時ばかりではない、いろいろな経験をさせてもらったという意味でも、ヤマハに入って本当に良かったと思います」
■2015年のワールドカップで活躍、"五郎丸ポーズ"でブームを巻き起こす
五郎丸の名前がラグビーファン以外にも知られるようになったのは、2015年のワールドカップでの大活躍がきっかけ。キック時の"五郎丸ポーズ"が人気を集め、一躍、時の人としてブームを巻き起こした。
「2015年のワールドカップは、2019年の日本大会で歴史を変え、ラグビーを取り巻く環境も変えるための前段階として大事な大会でした。準々決勝には進出できませんでしたが3勝を挙げて、最低限の目標は達成できたと思います。帰国後、"五郎丸ポーズ"で自分一人にスポットが当たってしまいましたが、ラグビーは1人をフォーカスするスポーツではないので違和感がありましたね。CMやイベントへの出演など、ラグビーと直接は関係のない依頼もたくさんありましたが、嫌という気持ちはなかったです。ラグビーを知らない方に少しでも広めたいという気持ちと、2019年のワールドカップを成功させたいという思いがありましたから、いろいろな機会をいただいて、ありがたいなと思っていました。2019年のワールドカップ開幕戦のロシア戦で、解説者としてスタジアムに入った瞬間、超満員の観客を目にして涙が出そうになりました。こうなってほしいと思っていた光景がそこに広がっていたので、本当に感無量でしたね」
■新リーグでは試合観戦に「どれだけの付加価値をつけられるかが重要」
今季で現役を退く五郎丸が、今後のラグビー界に期待することとは?
「来シーズンから新リーグがスタートしますが、各チームがアカデミーを持って、次世代の子供たちがジュニアチームに入り、トップチームを目指す形が出来上がっていけばいいと思います。また、現在のリーグはスタジアムに来て試合を見て帰るだけということが多いと思いますが、新リーグでは、そこにどれだけの付加価値をつけられるかが重要になってくると思います。僕はフランスのRCトゥーロン、オーストラリアのレッズと、海外のチームを経験しましたが、試合を見るプラスアルファのものがそこにはありました。日本の新リーグでも、1日いても楽しめる、来て良かったと思ってもらえるような空間を提供してもらえればと思います」
文=田口裕(エンターバンク)
放送情報
ジャパンラグビー トップリーグ 2021 プレーオフトーナメント 準々決勝
放送日時:2021年5月8日(土)12:45~ほか
チャンネル:J SPORTS 3ほか
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