侍ジャパン唯一のルーキー・栗林良吏が勝利のため腕を振る!

栗林良吏
栗林良吏

3年ぶりのリーグ優勝を目指して奮闘を続ける広島東洋カープ。今季もペナントレースの主催試合はJ SPORTSで生中継されている。下位に低迷する厳しいチーム状況の中、開幕からクローザーとして活躍しているのがルーキーの栗林良吏だ。今年プロ入りしたルーキーとして唯一、侍ジャパンに選出された栗林は、東京五輪でも抑えを任される可能性があり、金メダル獲得はその右腕にかかっている。

■名城大で活躍するもドラフト指名漏れの屈辱を味わう

愛知県愛西市(旧海部郡佐織町)出身の栗林は、兄の影響で小学2年から野球を始めた。小中学校時代は野手で、愛知黎明高校2年時に投手へ転向している。だが、高校時代は目立った活躍はなく、甲子園とは無縁だった。栗林の素質が開花するのは名城大学に入学してから。大学のコーチだった山内壮馬(元中日・楽天イーグルス)の指導を受け、投球フォームをバランスよく矯正すると、制球力が安定して急成長。3年春には愛知大学野球リーグでノーヒットノーランを達成し、大学日本代表にも選ばれ、リーグ通算32勝あげた。そして上位指名候補に名前が挙がって迎えた2018年のドラフト会議、栗林を指名する球団は無かった。セッティングされた記者会見場で名前が呼ばれるのを待ったものの、まさかの指名漏れ。「関係者や後輩たちが指名を待ってくれていたのに、無駄な時間を費やすことになり、本当に申し訳ないです」と頭を下げる屈辱を味わった。

■トヨタ自動車でストレートとフォークを磨き広島へ入団

社会人野球のトヨタ自動車に進んだ栗林は1年目からエースとなるも、捕手の細山田武史(元横浜DeNA、福岡ソフトバンク)から衝撃の言葉を受ける。「このスライダーは通用しない。曲がり始めが早いためレベルの高い打者には見極められてしまう」と、自信を持っていた球種を真っ向から否定された。そこで栗林はスライダーではなくストレートとフォークに磨きをかけ、都市対抗野球やアジアウインターリーグなどで活躍。今度は自信を持って昨年のドラフト会議に臨み、広島から単独1位指名を受けて、念願のプロ野球選手の道を歩み始めた。

■プロ初登板から22試合連続無失点の日本記録を樹立!

今季の開幕前、広島に激震が走った。過去2年で計31セーブを挙げていた守護神のフランスアが右膝を手術し、前半戦の出場が絶望となってしまったのだ。そこで佐々岡真司監督が白羽の矢を立てたのがルーキーの栗林だった。クローザーに指名された栗林は、開幕2戦目の中日戦でプロ初登板初セーブをマーク。その後も順調にセーブを積み重ね、4月25日の巨人戦では8回に6点差を追いつかれ、9回に1点勝ち越した乱戦の9回裏に登板。巨人の丸佳浩、岡本和真らを三者連続空振り三振に斬って取る快投を披露した。そして5月8日の中日戦では1点リードの8回裏、1死満塁の大ピンチに緊急登板して併殺で切り抜けると、9回も続投して試合を締めくくり、6連敗中だったチームを救った。そして無失点を続け、プロ初登板から22試合連続無失点のプロ野球記録を樹立。初失点を喫した2日後の6月15日の西武戦では9回を3者連続三振で仕留めるなどすぐに復調し、7月9日現在、17セーブ、防御率0.57、奪三振率は驚異の14.78をマークしている。

■最多セーブ、新人王、東京五輪金メダルに向かって突き進む!

最速154km/hのストレート、140km台のフォークとカットボール、そして緩いカーブを操る栗林は、どの球種でもストライクゾーンで勝負できる球のキレがある。最大の武器はフォークで、落差の大きい空振りを取るフォークと、シンカー気味に鋭く落ちるカウントを稼ぐフォークの2種類を使い分けている。そして何と言っても気持ちを前面に出した闘志あふれる強気のメンタルはとても新人とは思えない風格だ。野球日本代表の稲葉篤紀監督も「マウンド度胸、堂々とした姿はすごい。試合の終盤の方で使いたいと考えている」と、侍ジャパンでもクローザー候補に挙げられている。ルーキー史上初の最多セーブ、佐藤輝明(阪神)らと争う新人王など、タイトル獲得なるかにも注目が集まるが、東京五輪で日本が金メダルに輝く歴史的なマウンドに、栗林良吏が仁王立ちしていることを期待したい。

文=田口裕(エンターバンク)

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放送情報

J SPORTS STADIUM2021 広島 vs中日
放送日時:2021年7月14日(水)17:55~
チャンネル:J SPORTS 1
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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