いよいよシーズン大詰めのプロ野球。25年ぶりのリーグ優勝を目指し、千葉ロッテマリーンズと激しい首位争いを繰り広げているオリックス・バファローズのペナントレース全主催試合は、J SPORTSで生中継されている。今後、クライマックスシリーズを勝ち上がり、日本シリーズに進出して日本一に輝くためには、エース・山本由伸とともにチームを引っ張ってきた20歳の左腕・宮城大弥(みやぎ ひろや)の力投が不可欠だ。
■ハングリー精神で奮闘し、ドラフト"外れ外れ1位"でオリックスへ入団
沖縄県宜野湾市出身の宮城大弥は、貧しい家庭環境で育った。父が交通事故により左手が不自由になり、なかなか定職に就けなかったため、水道を止められたこともあるほど、厳しい生活を送っていたという。野球を始めた当初も、皮のグローブは買ってもらえず、わずか700円のビニールのグローブを使っていた。ユニフォームも新調できずに継ぎはぎだらけのものを着ていたが、その野球センスは幼い頃から投打ともに抜群だった。
中学ではU-15侍ジャパンに選出され、全国の強豪高校から誘いがあったが、地元沖縄の興南高校へ進学。高校では1・2年の夏に甲子園へ出場してマウンドに上がるも、いずれも2回戦までに敗退。雪辱を期した3年夏は、県予選決勝で沖縄尚学高校に惜敗し、甲子園でリベンジする夢はかなわなかった。だが、その実力を買われてU-18侍ジャパンに選ばれ、U-18野球ワールドカップに出場し、投手では3試合に登板して防御率1.04、打者では打率.375と、投打二刀流の活躍を見せた。
そして、2019年のドラフト候補として注目を集めるが、U-18侍ジャパンでチームメートだった佐々木朗希(大船渡高校→千葉ロッテマリーンズ)、奥川恭伸(星稜高校→東京ヤクルトスワローズ)らが複数球団から指名される中、身長171㎝の小柄な体を心配されてか、最初の1位指名で宮城の名は呼ばれなかった。そして、石川昂弥(東邦高校→中日ドラゴンズ)、河野竜生(JFE西日本→北海道日本ハムファイターズ)に抽選で外れた後の"外れ外れ1位"でオリックスから指名され、プロの門を叩くことになった。
■昨年プロ初勝利を挙げ、今季は開幕から勝星を積み重ねる大活躍
プロ1年目の2020年は、2軍のウエスタン・リーグで13試合に登板し、6勝2敗、防御率2.72で最多勝のタイトルを獲得。シーズン終盤には1軍に上がり10月4日の東北楽天戦でプロ初登板を果たし、11月6日の北海道日本ハム戦でプロ初勝利をマークした。
開幕1軍入りを果たした2年目の今季は、3月27日の埼玉西武戦で先発し、7回を投げて8奪三振、2失点で勝利投手に。その後も勝ち星を積み重ね、オールスターゲームにもパ・リーグ先発投手部門ファン投票1位で出場した。そして10月13日現在、12勝3敗、防御率2.31と、いずれもチームの先輩・山本由伸に次ぐリーグ2位の成績を残している。
■小柄な体から多彩な球種をコースに投げ分ける"小さな巨人"
プロ2年目で完全開花した宮城の投球の最大の特徴は多彩な球種だ。150㎞/h前後のストレート、切れ味鋭いスライダー、2種類の球速差をつけているダブルカーブ、打者の意表を突くチェンジアップと、全ての球種を際どいコースに投げ分けるコントロールも抜群。右打者にはより角度をつけて内角を攻めるために投球プレートの一塁側を踏み、左打者には内角に投げやすいよう三塁側を踏むといった工夫もしている。
今季初勝利を挙げた埼玉西武戦では、前の打席でヒットを打たれていた4番の山川穂高に対し、勝負所の場面の決め球でスライダーのサインだったにもかかわらず、投球中に狙われていると察知し、瞬時に握りを変えてカーブで三振を奪うという離れ業もやってのけた。
身長171㎝と小柄な体ながら、20歳の若武者とは思えない投球術と度胸で、強打者たちを抑えるピッチングは、まさに"小さな巨人"と呼ぶにふさわしい宮城大弥。昨年の投球回数が少なかったため、2年目の今季も新人王の資格を持っている。テンポのいい快投を披露してクライマックスシリーズを勝ち上がり、日本シリーズでチームを25年ぶりの栄冠に導いて、日本一と新人王を勝ち取れるか注目だ。
文=田口裕(エンターバンク)
放送情報
J SPORTS STADIUM2021オリックス vs. 埼玉西武
放送日時:2021年10月21日(木) 17:30~
チャンネル:J SPORTS 3
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