福岡・北九州で10月18日から7日間に渡って開催された「世界体操(世界体操競技選手権)」。五輪と並び、体操競技の世界一決定戦という重要な位置付けにあたる今大会は、2011年の東京大会以来10年ぶりの日本開催となっただけでなく、史上初めて「世界新体操(世界新体操選手権)」(10月27日~31日開催)と同時に開催されたことでも大きな話題を呼んだ。
例年とは桁違いの注目が集まる中、「世界体操」では前評判に違わぬ数々のドラマが誕生した。中でも熱い視線が注がれたのが、鉄棒種目で相まみえた新旧王者、内村航平選手と橋本大輝選手による直接対決だ。
■世界トップレベルの闘い!内村航平、橋本大輝による新旧王者対決
約3ヶ月前、内村選手が"人生最大の目標"と掲げた東京五輪。得意種目の鉄棒一本に絞って臨んだものの予選落ち。そして王者・内村不在の中で、その鉄棒種目を制し、史上最年少の19歳で個人総合優勝を成し遂げた橋本選手の躍進ぶりは、いまだ記憶に新しい。
そうした東京五輪を経て迎えた今回の世界体操では、H難度の大技を決めるなど、随所で輝きを放っていた内村選手。特に、最も難関とされる着地については、本人も「会心の一撃」と明かした通り、世界王者たる"完璧な着地"を見せつけた。ライバルである橋本選手や海外選手からもグータッチでリスペクトを受け、会場からも大きな拍手が送られた。結果は6位とメダルには届かなかったが、「この大会でスポーツは結果が全てではないことを知ることができた」と充足感を滲ませ、晴れ晴れとした表情が印象的だった。
一方、ロンドン大会(2009年)以来となる日本人史上最年少優勝(内村選手の20歳9ヶ月)が期待されていた橋本選手。中国の張博恒(21歳)と激しいトップ争いを繰り広げた個人総合では、僅か0.017点差で銀メダルに。また、最終日に行われた種目別決勝・鉄棒では、内村選手の演技直後に登場。高難度の離れ技を次々と決め、最終的には2位でフィニッシュとなった。初の新旧王者対決を制した橋本選手には大きな拍手が贈られたが、会見では「五輪後の調整不足」と、自らの結果を冷静に分析。五輪と世界選手権を併せて8連覇した大先輩・内村の偉大さについて、改めてリスペクトの姿勢を見せていた。
■現役引退を決断!女子エース、村上茉愛の"有終の美"
注目を集めた男子チームに負けず劣らず、芦川うららが種目別 平均台で67年ぶりの金メダルを獲得するなど、活躍著しかった女子チームの面々。その中で最も大きな注目を集めていたのが、エースの村上茉愛だ。
東京五輪の種目別ゆかで銅メダルを獲得し、日本の女子選手として初めての個人メダルを手にした彼女は、今回の「世界体操」でも、平均台で銅メダルを獲得。芦川うららと共に表彰台を飾ったほか、得意のゆかでは、五輪と僅差のスコア(14.066点)を叩き出して念願の金メダルを手中に収めた。
最後の最後で表彰台の頂点に立ち、涙を見せていた村上選手。現役引退の可能性を示唆して臨んだ今大会も左足首を負傷しながらの出場となったが、閉会式後の会場で、「みなさん応援ありがとうございます。私は今日で引退します」と、その日限りでの引退を宣言。満身創痍の中で日本女子体操界を牽引してきたエースが、自ら手繰り寄せた"有終の美"。見る者の感動を呼び起こす、最高の演技と涙の表彰台は、何度も見返したい今大会最高のハイライトといえそうだ。
■"5大会連続メダル"へ挑んだ新生フェアリージャパン
男子の新旧王者の直接対決、女子エースの引退と、感動的なドラマが生まれた「世界体操」に続き、10月27日~31日に開催された「世界新体操」では"新生フェアリージャパン"が躍動。8位入賞となった東京五輪から2人が引退し、新たなメンバーで臨むことになった団体戦。それ以上に、17年に渡って様々な改革を断行し、フェアリージャパンを率いてきた強化本部長・山崎浩子(※「崎」は正しくは「立さき」)が今大会を持って退任するとあって、多方面から注目が集まっていた。
団体総合では惜しくも4位とメダルを逃したが、大会最終日に行われた種目別決勝では、ボール、フープ・クラブ共に2種目での銅メダルを獲得。"5大会連続メダル"のプレッシャーが大きく圧し掛かっていた中、見事に次へと繋げてみせた。
フィジカル面での負荷の大きい体操・新体操競技では、長く第一線で活躍し続けることは至難の業だが、それでも、後進の選手たちへと見えないバトンを繋ぐように、今出来うるベストを模索し続ける選手たち。そういった意味でも、今回はパリ五輪に向け、日本代表の新たな可能性が見出された大会だったと言えそうだ。
文=HOMINIS編集部
放送情報
世界体操・北九州2021
女子個人総合決勝
放送日時:2021年11月19日(金)0:30~
男子個人総合決勝
放送日時:2021年11月23日(火)0:30~
種目別1日目
放送日時:2021年11月24日(水)0:30~
種目別2日目
放送日時:2021年11月25日(木)0:30~
世界新体操・北九州2021
個人種目別決勝
放送日時:2021年11月26日(金)0:30~
団体総合決勝
放送日時:2021年11月27日(土)0:30~
個人総合決勝
放送日時:2021年11月29日(月)0:30~
団体種目別決勝
放送日時:2021年11月30日(火)0:30~
チャンネル:テレ朝チャンネル2
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