2006年当時、福岡ソフトバンクホークスのエースだった斉藤和巳と読売ジャイアンツの清水隆行が、スポーツライブ+で放送される「球人たちの記憶」に出演。同番組は、福岡ソフトバンクホークス主催試合の中からファンの印象に残っている試合をピックアップし、その試合の当事者たちが映像を見ながら振り返っていく。
5月17日(火)の放送回では、2006年6月8日に福岡Yahoo!JAPANドーム(現・福岡PayPayドーム)で行われた交流戦の「ソフトバンク×巨人」戦を取り上げる。同年、投手5冠を獲得した他、当時パ・リーグ史上初となる2度目の沢村賞に輝いた斉藤投手が準完全試合を達成した試合を、当時スタメンで出場していた斉藤と清水が解説する。
今回、収録後の斉藤と清水にインタビューを行い、自身が出場した試合を解説した感想や交流戦を戦う時の心情などについて語ってもらった。
――ご自身が出場した試合を解説した感想は?
斉藤「勝てた試合ですし、しかもいいピッチングができた試合だったので、当時の気持ちを思い出させてもらって、最初から最後まで非常にいい気分で収録させてもらいました(笑)。現役中は自分の試合を全く観なかったので、こうやって始めから最後までじっくり観させていただくというのはなかなかないことなのでありがたかったです」
清水「自分が出場した試合を解説するという機会はあまりないので不思議な感覚でした。今回の試合の記憶は残っているのですが、今日観て『(斉藤投手に)手も足も出ないような感じでやられたな』と、あらためて思いました(苦笑)。当時は打席から観ていましたが、今回は解説というかたちで観て、『やっぱりすごいボールだったな』と思いましたね」
――この試合後、当時の王貞治監督が「ピッチングの神様が乗り移ったようだった」と評されていましたが、斉藤さんご自身ではどのような心境でマウンドに立ってらっしゃったのですか?
斉藤「監督のコメントは試合の次の日に新聞で見ましたけど、自分としては試合後に振り返って、『よく"ゾーンに入る"という表現がされるけど、もしかしたらこれがそうなのかな』という感覚でした。その感覚になったのは唯一あの試合だけなので、それまでピッチャーとしてやってきて一番(の出来)でした。自分の中で求めていた"イメージする投げ方"ができたという感覚はあの試合だけでしたから」
――清水さんは、そんな斉藤投手との対戦をどのように感じられていましたか?
清水「(ピッチャーからバッターまで)18.44mの距離があるんですけど、それを支配されているような感覚がありましたね。他の方はどう思っているか分からないですけど、僕が打席に立っている時は『このボールを意識しながら、このボールに対応していけたらいいな』っていう感覚で待つんです。逆にいえば、それでも対応できるからそういうふうに待つんですけど、あの試合の斉藤投手に対してはそういう待ち方ができなかったです。ストレートならストレート、カーブならカーブを(打ちに)いかないと、『これを待ちながら、他の球種も...』みたいなことをさせてもらえないボールでした」
斉藤「バッテリー側からするとバッターに考えてもらった方が勝率が上がるので、今清水さんからバッター側の意見をあらためて聞いて、バッテリーの作業もプラスされてそこまで感じもらえた部分があると思います。僕のボールだけでは難しかったですよ。(当時バッテリーを組んでいた同級生の)的場(直樹)は認めたくないですけど(笑)」
――今年も5月24日(火)から交流戦が始まりますが、交流戦ならではの気持ちの変化などはあったのでしょうか?
斉藤「この試合は交流戦が始まって2年目なのですが、僕の中では『ピッチャーが有利だな』という感覚がありました。対戦成績が少ない分ピッチャーの方が先手でいけるので、初めに印象付けておけば、あとはつないでいけるかな、と。また、当時の個人的な感じ方なんですけど、セ・リーグの審判の方とパ・リーグの審判の方でストライクゾーンの大きさの違いを感じて、セ・リーグの審判の方は横を広く取ってくれる印象があったので、『横も使えるな』と感じて、実際には違うかもしれないんですけど、心の余裕ができましたよね」
清水「僕個人の意見ですが、バッターからすればほとんど対戦経験のないピッチャーと対戦することになるので、一応スコアラーの人から事前にたくさん情報はもらうんですけど、やっぱり実際に自分が打席に立ってみて『何が自分にとって嫌なものなのか』を知りたいんです。だから、なるべくその感覚を早くつかみたいなと思って打席に立ってましたね。だから、早く(打ちに)いった方がいいのはいいんですけど、『ボールから入ってくれないかな』とは思っていました」
――番組タイトルに掛けて、お2人それぞれの一番記憶に残っている試合を教えてください。
斉藤「僕は初勝利した試合は外せないですね。手術を経てやっとつかんだ勝利でもあったので、自分のスタートといいますか。また、ずっとお世話になっている小久保(裕紀)さんとお立ち台に立てて、『頑張っていれば、こんなことって本当に起きるんや!』と何か体にスイッチが入ったような気がして、『またこれを味わいたい』という気持ちがユニホームを脱ぐまで続いたので」
清水「2002年に巨人が日本一になった試合ですね。河原(純一)さんがクローザーで投げて三振で決まった瞬間をレフトから見ていたんですけど、その日本一が決まった瞬間は特に記憶に残っています。僕は毎日必死で全然余裕がなくて、あまり楽しく野球をやるということが少なかったんですけど、あの試合は楽しくわくわくした気持ちで野球ができた試合でした」
――最後にファンの皆さん、視聴者の方々にメッセージをお願いします!
斉藤「僕がいいピッチングしているだけに『ここを見てください』とか言いづらいんですけど...(苦笑)。僕が何回ドヤ顔をしているか数えてもらえたら!(笑)」
清水「ジャイアンツファンの方は悔しい思いをされるかもしれませんが、野球ファンとして観ていただけるといいかなと。すごいボールを投げるピッチャーの映像を観て、『すごいピッチャーがすごいピッチングをしたらこうなるんだ』というのを堪能していただけたら!」
文=原田健
放送情報
球人たちの記憶#6 ~ソフトバンク×巨人(2006年6月8日開催)
放送日時:2022年5月17日(火)21:00~
チャンネル:スポーツライブ+
※放送スケジュールは変更する場合があります
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