【前編】「野球に詳しすぎる」と評判の山本萩子。野球愛の原点は「尊敬する」宮本慎也と"灼熱"のヤクルト戸田球場

MLB特集番組のキャスターを務めるほか、WEB媒体で「6-4-3を待ちわびて」という連載コラムを持つ山本萩子。日本のプロ野球からメジャーリーグまで熟知し、「野球に詳しすぎる」とファンや解説者から評判だ。物心ついた頃から神宮球場に通い、愛猫に「バレンティン」と名づけるほどヤクルトに愛情を注ぐ山本が語る、スワローズとファームの魅力とは――。

■"仕事人"の二遊間の虜に

私が野球とヤクルトを好きになったのは圧倒的に両親の影響です。父は野球全般に詳しく、母はスワローズのことを聞けば何でも教えてくれるという感じでした。

出身は横浜で、周りはほとんどベイスターズファン。朝のラジオでベイスターズの短いコーナーがあって、毎日聴いていましたね。対戦相手の情報を仕入れて、両親とずっとヤクルトの話をしていました。周りにベイスターズファンばかりという環境で、ブレずにヤクルトファンを貫けたのは両親の英才教育のおかげです(笑)

初めて神宮に行ったのは5歳くらいの頃で、宮本慎也さんが好きになりました。決して華やかなタイプの選手ではないですが、動きが純粋にカッコいいと思ったんです。

当時は宮本さんと土橋勝征さんがショートとセカンドのコンビを組んでいました。二人とも決して派手なわけではないですが、難しい打球でも簡単に処理しているように見せます。ある意味、スマートの極みという守備ですよね。打線においてもすごく重要な役割を担い、"仕事人"という姿がカッコよくて。私は宮本さんの内野守備に惚れたことがきっかけで、気づけば二遊間が好きになっていました。

■宮本慎也とMLB名手の共通点

今でもそうですが、守備でファーストランナーが出ると二遊間に目を向けて"待機"してしまいます。見せ場であるダブルプレーを待つという意味ですね。内野守備の魅力が詰まっているので、「6-4-3」のダブルプレーは特に好きです。

子どもの頃は父親と家の近所の公園に行って、ゴロを捕球してすぐ右手に持ち替える練習をひたすらしていました。私自身は野球をプレーしていたわけではないですが、宮本さんのグラブさばきがカッコよくて憧れて。父は宮本さんのすごさを当時から教えてくれていましたしね。野球への姿勢や考え方、リーダーシップを含めて宮本さんは一番尊敬する人物です。

私は2019年からメジャーリーグの番組を担当するようになり、世界にはいろんなプレイヤーがいるんだなって知りました。いわゆる常識にとらわれないようなプレーをする選手がいて、その魅力もすごく感じる一方、しっかり正面で捕球して素早く持ち替えて正確な送球をするという、宮本さんの"野球の基本"が自分の中にもベースとしてあるなと思うことがあります。

メジャーリーグを見始めて最初に好きになったのがマット・チャップマン(現トロント・ブルージェイズ)という三塁手ですが、宮本さんと通じるところがあるんです。アメリカにはすごい体勢から投げる選手はたくさんいるけれど、チャップマンは決して難しく見せないタイプの選手。1歩目が速くて、正面から打球に回り込めて、ファーストに正確な送球がいく。そういう意味では、私はやっぱりこういうタイプが好きなんだな、ブレないなって思います(笑)

■選手もファンも育てる「過酷な」戸田球場

子どもの頃から膨らませてきたヤクルト愛はどんどん深まり、二軍も見に行くようになりました。横浜で育った私にとって唯一のヤクルトファンの友だちが高校時代にいて、「ファーム、観に行きたいね」ってなったんです。神宮まで普通に試合を見に行くような感覚で、戸田までよく足を運んでいました。

ヤクルト戸田球場は周りに遮るものが何もなくて、特に夏場は非常に熱いんです。一軍に上がってくる選手はみんな真っ黒になっていますが、その理由が一瞬でわかりました(笑)

選手にとってなかなか過酷な環境ではあるけれども、ここを乗り越えて一回り、二回り大きくなって一軍で活躍していく。そういう地盤を作る場所なんだろうなって感じるくらい、戸田の環境は厳しいです。でもファンとすれば、「ホント、過酷だよね」と言いながら見るのが楽しいんですよね。

今年、ファームの本拠地を茨城県守谷市に移転するための協議、検討を開始するという発表が球団からありました。2019年10月、"過去最強クラス"と言われた台風19号が来たときにはグラウンドの目の前にある荒川が氾濫し、球場が冠水したことも理由の一つのようです。確かに選手やチームにとって、少しでも練習しやすい環境のほうがいいですよね。

でも灼熱の戸田はヤクルト名物の一つなので、もし移転が決まれば寂しさもあります。私は今、お仕事で野球に関わらせてもらっていますが、あの暑い戸田で野球を見たことは大きな経験になっていると思うくらいです。あそこでファームの試合を見ておいて良かったと率直に感じるので、まだ行ったことがないヤクルトファン、プロ野球ファンの方はぜひ足を運んでみてください。

ヤクルトのトークショーの際にプレゼントされた特製ユニフォームと。背番号は山本萩子が好きなダブルプレーの「6-4-3」にちなんで。(写真:本人提供)
ヤクルトのトークショーの際にプレゼントされた特製ユニフォームと。背番号は山本萩子が好きなダブルプレーの「6-4-3」にちなんで。(写真:本人提供)

■二軍からつながるヤクルトの強さ

ファームで言えば、コロナ禍以前には宮崎県西都市の春季キャンプに3年連続くらい行っていました。一軍のキャンプ地の沖縄県浦添市に行き、二軍の西都にも行く。大学生になってからは本当にしょっちゅう見に行きましたね。

村上宗隆選手が入団1年目の2018年には、生前の野村克也さんが見に来ていて2人でずっと話していました。その姿を友だちと見ながら、「どんな会話をしているんだろうね?」って話していた記憶もあります。

球場のすぐそばには西都原古墳群があり、169段の石貫階段で選手たちは何本もダッシュを行います。今、一軍で活躍している選手たちはこの場所で鍛錬を重ねてきたという、ファンにとって聖地のようなところです。ヤクルト名物と言われる場所に初めて行けたときは嬉しかったですね。

プロ野球におけるファームは、ベテランの調整や、若手の育成など目的意識がすごくはっきりしている場所だと思います。ファンとしてそういう環境を見に行くことで、選手たちはどんなことを教えられ、首脳陣はどうやって選手を育てようかという方針が見えてくる部分もたくさんあります。

監督も現在の高津臣吾さんや、真中満さん、若松勉さんも二軍監督を経験された後に一軍に昇格し、優勝監督になっています。二軍でしっかり目をかけて育ててきた選手を一軍の舞台で信頼して使うシーンもたくさんありますよね。

高津監督は特にそうです。高橋奎二投手や村上選手、巨人に移籍した廣岡大志選手もすごく目にかけて育てようとしていました。外野手の濱田太貴選手もそうです。

それぞれがどういうタイプなのか特性を見抜きながらやってきた二軍監督時代があるからこそ、起用法も含めて一軍の舞台で信頼して任せることができる。そういうところまで見えてくるのも、やっぱりファームを見る魅力ですよね。

だからこそ、そういう目線で見るのも面白いと思います。どういう目線だろうっていう感じですけど(笑)

インタビュー/構成=中島大輔 企画=This、スカパー!

【インタビュー後編はこちら】 ※後編は7月3日11時00分に公開予定

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