多くの映画ファンから熱狂的な支持を集めるイギリス出身の映画監督、エドガー・ライト。2017年に公開されたハリウッド本格進出作『ベイビー・ドライバー』のヒットによって、その才能はより多くの人に知られたのではないだろうか。
これまでの代表作といえば、ゾンビ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)、ポリス映画『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(2007年)、SF映画『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2013年)。イギリスきっての仲良し俳優コンビとして知られる、サイモン・ペッグ&ニック・フロストと組んだこの"スリー・フレーバー・コルネット三部作"は、いずれも世界中で絶賛された。
日本では当時、『ショーン・オブ・ザ・デッド』は劇場未公開の憂き目にあったが、『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』はファンの署名運動によって日本公開が実現したという、熱いエピソードがあるほど。
リスペクトを込めた過去の映画のオマージュ、あらゆるジャンルをミックスさせた作風、そして作品を彩る音楽へのこだわり。それらのオリジナリティによって独自の世界観を構築してきたライト監督。そして『ベイビー・ドライバー』では、実験的なまでに監督の音楽愛が炸裂している。
物語の主人公は、イヤホンでiPodの音楽を聴くことによって天才的なドライビングテクを発揮する、犯罪組織のドライバー(逃がし屋)、通称"ベイビー"(アンセル・エルゴート)。運命の女性デボラ(リリー・ジェームズ)との新たな人生のため、"最後の仕事"にのぞむ姿が描かれる。
"カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』"や"ミュージカルカーアクション"などと称されるこの『ベイビー・ドライバー』は、30曲以上の楽曲がすべてのシーンの映像と完璧なまでにシンクロ。いわば音楽がストーリーを語っている。『ショーン・オブ・ザ・デッド』で、ジュークボックスから流れるクイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」に合わせて主人公たちがゾンビと戦うというシーンがあったが、そのアイデアを全編通して使われているのだ。
とはいえ、なかなかイメージが沸きにくいかもしれないが、見始めればその魅力がすぐにわかるはず。ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの「ベルボトムズ」に合わせ、赤いスバルのインプレッサWRXでカーチェイスをこなす冒頭の約6分間。続く、ボブ&アールの「ハーレム・シャッフル」を聴きながら、ベイビーが歩いてコーヒーを買いに行くシークエンス...。セリフがほとんどないにも関わらず、オープニングからものの10分で、映画の世界へと引きずりこんでくれるのだ。ぜひ、6月1日(金)の『ベイビー・ドライバー』オンエアで、エドガー・ライトの快心作をチェックしてみよう。
文=エンターバンク
放送情報
ベイビー・ドライバー
放送日時:2018年6月1日(金)21:00~
チャンネル:スターチャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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