「銀河鉄道999」製作陣が明かす、日本屈指のクリエーターで挑む"生ドラマ"の裏側

生ドラマ「銀河鉄道999」に挑戦する栗山千明と前田旺志郎
生ドラマ「銀河鉄道999」に挑戦する栗山千明と前田旺志郎

国民的大ヒット作である松本零士原作の「銀河鉄道999」が初の実写化。6月18日(月)、BSスカパー!で「銀河鉄道999 40周年記念生ドラマ『銀河鉄道999 Galaxy Live Drama』」として生放送される。
前代未聞の試みに挑む番組プロデューサーの小池秀樹氏、そして演出を手掛ける遠藤光貴氏の2人に、生放送という形式を採用した経緯や意気込みや、生放送でどのようにSF作品を見せていくのか、その演出法などを聞いた。

まずは、"生ドラマ"という企画が誕生した経緯をお聞かせください。

小池秀樹プロデューサー「生ドラマというのはそもそもテレビの黎明期、VTRがなかった時代に放送していました。その後、本格的に生でドラマをやったのは1977年の『ムー』(TBS系)というコメディータッチのファミリードラマで、それ以外だと最終回の一部だとか、深夜に実験的に放送するぐらいしか例がありません。なぜかというとそれはリスクが高いということに尽きるんです。CMを入れなきゃいけないとか、コンプライアンス問題とかいろいろなリスクがある中で、二の足を踏んでしまうんです。でも、そこは自由に編成できる"スカパー!"ならではの強みで、こういう型破りなものってウチしかできないんじゃないかな、と思いました。そこで『何をやるの?どんなものになるの?』という視聴者がすごく気になる、エッジの立った企画として打ち出しました」

確かに、今回は放送時間も90分間の尺になっていますね。

小池「90分枠の中、60分強を生ドラマで、その後はカット割りをせずに別セットに移動してアフタートーク、という形で行います。本当に生でやってるんだなというのが分かる形式です。ちなみに、スカパー!の収録スタジオは、ホリゾントが全部クロマキーのバーチャル用スタジオ(※背景が1色になっているような合成用のスタジオセットのこと)。CGを多用するので、そこはメリット大きいというか。テレビの原点でありながら最新技術を駆使するというのも、今回の企画の大きな見どころです。今回のCGチームは日本屈指のクリエーターが大集合してまして、予算大丈夫か!?という規模でやりますので、ご期待してください」

生ドラマだけでも大変そうですが、さらにこの「銀河鉄道999」という作品を選んだ意図は?

小池「元々10年近く前から実写化をやってみたかったんです。生ドラマとは全く別の企画として考えていましたが、生でやったら面白いんじゃないか?となったのが1年前。そこから転がるように進んでいきました。実写化が実現しづらかった理由は、企画の内容もあると思うんですけど、切り口とかタイミングがうまくかみ合わなかったのかなと思っています。松本先生に『生ドラマで』とご提案した際にはビックリされていました。『生なの?できるの?』って(笑)」

遠藤光貴「キャストさんの会見でも『どうやるの?想像つかない』って反応がありました。まさにそこがわれわれが狙っているところですね」

小池「確かに想像つきませんからね。これから今回のCGスゴイですよ、とかいろいろとご説明はしてゆくと思いますけれど、説明される方は多分ぼんやりすると思うんですよ(笑)。この『何だろう?』って見る前に思う楽しさっていうのが、テレビ本来の面白さだと思います」

原作者からはどんなリクエストがありましたか?

遠藤「いくつかエピソード案をプレゼンさせていただき、『メーテルのキャラクターはこうあるべき、こういう存在であるべき』といろいろなご指導をいただきました」

小池「メーテルの立ち居振る舞いだとか、メーテルの心情などはかなり推敲を重ねました。放送ギリギリまで台本には修正が入ると思いますけど、それができるのも生放送のメリット(笑)。いじるのは、セリフそのものより構成ですね。台本では、いくつものエピソードが並んでいますが、そのまま出来るのか、テンポは大丈夫か、などギリギリまで詰めていくと思います」

遠藤「ドラマといえば基本収録で、いくらでも編集できるし、芝居も気に入らなければ何テイクも撮って...ってスタイルですが、今回はそれができないので、当然ながらスタッフが誰も気を抜けない(笑)。例えば、演出の要となるCGチームは特に大変かもしれません。銃撃戦のエフェクトも、役者の画が決まらないと、作ったCGがうまくはまらないですし、発射音や着地音などの音も生で出していくんですよ。だから今回、スタッフ全員が全力疾走です。皆必死に一枚岩で駆け抜けないといけません!」

本番まではどのような進行で? 舞台のように通し稽古を重ねるのでしょうか?

遠藤「出演者のみなさん全員多忙の中で参加して下さるので、全員が集まるということ自体が貴重な機会になっています。映像をシンクロさせるタイミングを決めるのも、俳優さんを使わずにCGを先行発注しておく、というスタイルです。CGがガイド的な役割を果たすとも言えますが、それって実はかなり精密な段取りを組むという事なので、その緊張感が絵に出ると思います。生放送だけでもハードル高いのに、更に上げるという(笑)。再放送もありますが、この緊張感は本当に生ならではなので、楽しんでいただければと思います」

 

(C)松本零士・東映アニメーション/スカパー!

メーテル役の栗山千明さん、鉄郎役の前田旺志郎さんのお2人の間では「アドリブしますか?」なんて話も出ていましたが。

小池「それはドキドキですよね。そんな余裕が...あればいいけれど」

遠藤「カメラ位置はほぼ決まっている訳ですけど、どういう芝居をするかは本番一発ですから。カメラも俊敏に動かないといけないし、写しちゃいけないものが映るかもっていう緊張感で汗だくになってやるんだろうなと。これはリアルタイム視聴した方が絶対楽しいですよ」

なかなか想像がつきづらいです!(笑) 場面転換は、複数のセットを組んでつなぐということでしょうか?

遠藤「そうです」

小池「スタジオをまたいで移動してもらったりということもあります」

遠藤「裏側もきっと面白いですよ。生ドラマがどうやって成立するの?というところを楽しみにしていただきたいです。生ドラマで"999"って、何やるの?って疑問だと思うんですが、エンタメを正面からやっていこうと思っています」

999(スリーナイン)の車体をどう写すか?など、気になるポイントはいろいろあります。

遠藤「『銀河鉄道999』って、ちょっとエキセントリックなSF作品だと思います。SLが宇宙を飛んでいるという、飛んでいるモノ自体はアナログというか、レトロフューチャーなところがあるんですね。そういう意味で、列車の中はレトロな世界観です。車窓が宇宙だったり、星だったりして景色が変わっていくので、そこの部分を日本で初めてやる技術を使おうかな、といろいろ試行錯誤しているところです」

主演のお2人に関して、役としての演出はどのように?

遠藤「基本は皆が思っているキャラを裏切らないように考えています。メーテルだったらミステリアスながら母性のあるキャラクターで、男の人だったら一緒に旅したらドキドキするような面がありますよね。でも、メーテル自身は大きな使命を抱えていて、鉄郎という真っ直ぐな少年に影響されて自分の運命が変化していくという、2人の関係のリアルな部分は演劇的にも見せたいところです。鉄郎は、未来の機械化した世界の中、真っ直ぐで、ある種大人が失ってしまったプリミティブな感情を表現しなくてはならない。前田くんはそれができると思うので、そこに見ている方が感情を乗せていただければと思います。もちろん、前田くんは(まえだまえだとして)漫才をライブでやってきていますが、漫才ではなくお芝居というところで、うまくハマってくれたらショーとして面白いと思います」

今回の衣装や小道具など、こだわりどころも教えてください。

小池「まつ毛の長さも何種類も作ってもらって。ウィッグは色を厳選して、いろいろ調整しながらブロンドカラーを出しました。栗山さんご自身もメーテルになりきっている感じで、漫画から抜け出てきたような雰囲気が出ていると思います」

遠藤「鉄郎の帽子やマントも原作やアニメを全部見てリアリティーが出るようオリジナリティーを加えました。貧民街出身ながらどこにでもいる少年感がリアルに出るように仕上げています。鉄郎に関しては、原作の世界観が"荒野、開拓、ガンフロンティア"がベースになっているので、その感じを加味しております。"戦士の銃"も美術担当が原作ベースにリアリティーを加えました。そこからCG(の光線)が出るはず、です!(笑) あと、メーテルと鉄郎が携帯するトランクは探し回りまして、アンティークでいい味のものを見つけました。持ち物は全体にレトロな感じで統一しています」

文=magbug 撮影=伊原正浩


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放送情報

銀河鉄道999 40周年記念生ドラマ『銀河鉄道999 Galaxy Live Drama』

放送日時:2018年6月18日(月)20:00~

チャンネル:BSスカパー!

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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