1987年にスタートして以来、子供を夢中にさせている原ゆたか作の児童図書「かいけつゾロリ」シリーズ。子供が夢中でページをめくる楽しい工夫や仕掛けが特徴で、現在62巻まで出版されている。今回はカートゥーン ネットワークでの劇場版アニメ3作品の放送を記念して、原ゆたかに"ゾロリ"が長年愛される理由を聞いた。
昨年で30周年を迎えましたが、人気の秘訣は何だと思われますか?
「僕は、子供の本は子供の気持ちが分かる作家が書くべきだと思っています。実は、ゾロリは自分の小学生の時に面白かったことを書いてきただけなんですよ。おならとか親父ギャグって、あの時代、やっぱり面白い(笑)。30年前と今、文化や流行は変わってきていますが、小学生の楽しいことはそんなに変わっていないと感じますね。僕は小学5年生のころ、友達と怪獣映画をつくったんですよ。誰も教えてくれないからアイデアを絞り、粘土で工場をつくったり、お線香で煙を出して煙突に見立てたりして。自分たちのお小遣いの範囲で、どうできるのかを考えるのが楽しかった。そうやってちゃんと遊んだ思い出が基礎になっていると思います。自分の小学生時代に楽しかったことが、この本の原点ですね」
毎回どんでん返しの繰り返しで読み手を飽きさせない工夫をされていますが、どのようにお話をつくっているのですか?
「私、昔は映画監督になりたかったんです。ただ、人を使うのが下手くそだったため(笑)、本の中だったら映画がつくれると思って、絵を描き始めたんです。お話を書くのも得意ではなかったので、脚本の書き方の研究をしていくうちに、ハリウッドの映画の脚本のつくり方に出合いました。ハリウッド映画は、大体初めの15分で誰が何をするのかが分かる仕組みになっていて、この枠に当てはめるのが一番子供に受け入れやすい。単純で誰にでも分かりやすんですね。私は娯楽の1つとして本も面白いなと思ってもらいたいんですよ。ゲームやアニメといったものと同じ土俵に載せたい。本は面白いものなので」
冒険しているゾロリから伝えたいことはどのようなことですか?
「ゾロリは成長していないように見えるけれど、実は少しずつ自立していっています。ゾロリはマザコンで、ママがいたらきっとニートになっていただろうけど(笑)、ママが亡くなってしまい、『自分でお城を建てよう』『ママのようなステキなお嫁さんをもらいたい』という気持ちが出てきます。ゾロリは失敗するけれど"あきらめない"ですよね。僕は昔、植木等の映画(『無責任男』シリーズ)を観ていて、"失敗しても笑って前を進む"生き方に憧れを持ったんですが、あれに近い感じです。よく大人は失敗しないように子供に道をつくってあげるんですが、失敗してでもやらないと身に付かないことってあると思います。失敗しても前に進む力を伝えられたらと思います」
今回は、本で人気の作品を映像化したものが放送されます。
「できれば一番スケールの大きい話から映像化してほしいと思っていたので、うれしかったですね。ハリウッドのシステムでつくってきたから、映像化されたら絶対に面白くなるという自負がひそかにあったんですよ。本だと動きがないのでスケール感がアップされて、また違う形で楽しめる作品になっていると思います。ちなみに同じストーリーでも、本と映画はストーリーも少し変わっていたりします。その違いを楽しんでもらいたい。また時代を超えて見られる作品になっていると思うので、それぞれ感じとったことや思ったことを、親子で話し合ってもらえるとうれしいです」
ひそかに成長しているというゾロリ。シリーズの最終回について構想はあったりしますか?
「小学生の時の面白かったことを思い出しながら書いているんですが、最近はネタが少しずつ尽きてきて、どうしようかなとは思っていますね(笑)。今の子供たちに面白いと思ってもらいたいので、いつまで書けるものなのか。なるべく子供時代を思い出して、説教っぽくないお話を書き続けたいです。『男はつらいよ』の寅さんは、映画は終わったけど、まだどこかでふらふらと旅をしているんだろうと思う"心の中の寅さん"が、みんなの中にいるように、ゾロリもずっと旅を続けてほしいです」
文=玉置晴子 撮影=尾木司
放送情報
映画かいけつゾロリ だ・だ・だ・だいぼうけん!
放送日時:2018年7月30日(月)13:00~
映画かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご
放送日時:2018年7月31日(火)13:00~
劇場版「まじめにふまじめかいけつゾロリ なぞのお宝大さくせん」
放送日時:2018年8月11日(土)07:00~
チャンネル:海外アニメ!カートゥーン ネットワーク
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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