スペシャルインタビュー 漫画家・池田理代子

毎月、さまざまなジャンルで活躍する著名人が、自身の人生に影響を与えた映画について語るムービープラスの「この映画が観たい」。

6月5日に放送される第45回目に登場するのは、漫画「ベルサイユのばら」の作家・池田理代子。デビュー50周年を迎えた現在もなお、飽くなき制作意欲を抱く女流作家が選んだ5本は、66年の「わが命つきるとも」や73年の「ソイレント・グリーン」など社会派の映画たち。池田理代子が求める映画とはどんなものなのだろうか?

恋愛モノよりも社会派やB級ホラーが好き

-今回は"自分の生き方に影響を与えた作品"として挙げた「わが命つきるとも」を始め、選ばれた映画は「未知への飛行」(64年)、「ドイツ・青ざめた母」(80年)、「人間の値打ち」(13年)など、ジャンルとしては社会派に属するものばかり。普段からこういった作品がお好みなのですか?

そうなんです。中でも学生の時に観た「わが命つきるとも」(※1)は、私もこのように生きようと思えた映画でした。
映画は私にとって大切なアイテムなので、今回の5本も悩まずにスルッと選びました。今回選ばなかったものでは、南アフリカが独立する以前に白人が支配していた頃が舞台の作品や、マハトマ・ガンジーを描いた映画なども好きですね。
普段のお仕事で恋愛モノやラブコメに関するお話をいただくことが多いんですけど、私、ラブストーリーやラブコメはほぼ観ないんです。

-映画を好きになったきっかけは?

子供の頃、母親と観た「風と共に去りぬ」(39年)や、シモーヌ・シニョレ主演の「悪魔のような女」がきっかけだったようにも思いますが、自分では体験できない世界を見せてくれるので、自然と好きになりました。

-番組の中でも語っていらっしゃいましたが、映画をつくることにも興味がおありなんですよね?

ええ、好きですから。昔、我が家にはレーザーディスクやビデオが山のようにあったの。最近はテレビのリモコンで映画が買えて、すぐに視聴できる時代になりましたから、多い時は1日3本ぐらい、家で映画を観ていることもあります。ただ、1日3本観ていますと、中にはつまらない作品もあるんですよね(笑)。
こんなものに誰かが何千億も出資したのかと考えると、私にも作らせてよと思ったこともありました(笑)。

-作るとしたら、やはり社会派映画ですか?

それはいろいろです。
私、B級ホラーも好きなの。B級ホラーなら、そうね、私、『死霊のえじき』が大好きでね。怖くて、怖くて、何回も観ました。あと、『エイリアン』も。続編もありますが、最初のがやっぱりすごいですよね。
映画を制作する人は細部にこだわっていたりしますから、繰り返し観ることで新たな発見もありますし。何度観ても色褪せない作品というのが、名作なんだと思います。

-観る映画を選ぶ時の基準は?

勘みたいなものですかね。
だから、キャッチコピーやポスターは大事だなと思います。
あとは好きな俳優が出ていることも。ジョン・トラボルタとか、「わが命つきるとも」に出演しているナイジェル・ダヴェンポートとか。
世間の女性が騒いでいるような細身の俳優はあまり好きではなく、体躯のしっかりした人が好きなんです。
究極はシュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)で、一番好きなのは「ターミネーター」(84年)。あと、(シルヴェスター・)スタローンも好き。彼の一番は「ロッキー」(76年)ね。

-「わが命つきるとも」など今回選ばれた作品には、登場人物が信念を貫く"ベルばら"の世界観と共通するところがありますが、B級ホラーやアクション映画は池田先生の作風から考えると意外だなと思いました。

ふふ。一方で社会派映画を観て、一方でそういう映画を観ることでバランスが取れているんじゃないかと思います。

-作品を描く上で、映画から影響を受けたことも?

手塚(治虫)先生もおっしゃっていましたけど、映画はいろんなアングルから撮りますでしょう、俯瞰からとか。漫画のそういった表現は、映画から学んで生まれたものだと思います。
私も映画ならどう撮るかというのを念頭に置きながら、漫画を描くんです。カメラが寄っていくように、ロング(引き画)からアップにして行ったり、バックにはどんな音楽が流れているのかをイメージしたり。漫画を描く上で映画から本当に多くのことを学ばせてもらいました。

-最近は漫画原作の映画が多いですが、そんな状況をどう感じていらっしゃいますか?

「ベルサイユのばら」が発売された頃、マスコミから批判を受けることもありました。
漫画は活字と比べると絵があるから子供たちの想像力を削いでしまうと。
その時に「じゃあ、映画はダメじゃないのか?」と反論したんですけどね(笑)。それが今や、日本映画の多くは漫画原作じゃないですか。テレビドラマも然り、こんなことでいいのか!?と思いますね(笑)。
とか言って、自分の作品で朝ドラにしてほしいなと思うのがあるんですけどね。
「ベルサイユのばら」を描く少し前の作品で「章子のエチュード」(※2)というのがあるんですけど、ぜひとも朝ドラ化してもらいたい(笑)。

-では、最後に映画とはどんなものだと思いますか?

人間は限られた時間しか生きられません。
しかし、他の人の考えを形にした映画を観ることで、人生を180年にも200年にもしてくれる。
そういうものだと思います。

PROFILE
いけだ・りよこ
●'47年12月18日生まれ、大阪府出身。'67年、現・筑波大学在学中に漫画家デビュー。'76年「ベルサイユのばら」で少女漫画家としての人気を確立。'95年、45歳で東京音楽大学声楽科に入学し、卒業後、声楽家としても活動。'14年、40年ぶりの発表となる、「ベルサイユのばら」11巻を発売し、話題に。「デビュー50周年記念展 池田理代子―『ベルばら』とともに―」の長野での展示が、7/20より北野カルチュラルセンターにて開催(9/20まで)。

撮影●笹沢賢一 取材・文●及川静香

※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。

この記事の全ての画像を見る

放送情報

この映画が観たい#45 ~池田理代子のオールタイム・ベスト~

放送日時:2017年6月5日(月)23:00~

チャンネル名:ムービープラス


番組説明:

毎月、様々なジャンルで活躍する著名人が自身の人生に影響を与えた映画について語る「ムービープラス」のオリジナル番組。6月は池田理代子が自身のオールタイム・ベストとして選んだ5作品(「わが命つきるとも」(66年)「未知への飛行」(64年)、「ソイレント・グリーン」(73年)、「ドイツ・青ざめた母」(80年)、「人間の値打ち」(13年)について、自身の人生での様々なエピソードを交えながら振り返っていく。

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

関連人物