将棋ファンには毎年恒例となっている夏のイベント「第53回東急将棋まつり」が8月2日~4日に、東京・渋谷の東急百貨店にて開催された。指導対局やサイン会などで第一線で活躍中のプロ棋士たちと触れあえるということもあり、渋谷駅・東横店西館8階の特設会場には、幅広い年代の将棋ファンが大勢詰めかけた。今回は初日となる8月2日のイベントの模様をピックアップして紹介する。
夕方から開催されたのは、永瀬拓矢叡王と羽生善治九段による「東急ドリームマッチ」。解説に松尾歩八段、聞き手に本田小百合女流三段を迎えて行われたこの対局は、多くの将棋ファンの注目を集め、会場の立ち見エリアに観客が入りきらないほどの盛況ぶりをみせた。
永瀬叡王の実家がラーメン店を営んでいることなど、将棋初心者も楽しめるエピソードなどが盛り込まれた本田女流三段のトークに、客席から笑いが起こる場面も。対局は、116手で永瀬叡王が羽生九段を破り勝利を収めた。永瀬叡王が足がしびれて動けなくなったり、足りないスリッパを羽生九段が探しに行ったりと、棋士たちの微笑ましい一面にも触れることもできた。
続いて行われたのは、羽生善治九段、将棋親善大使でもある乃木坂46の元メンバー・伊藤かりん、そして伊藤の師匠でもある戸辺誠七段を迎えての「お楽しみトークライヴ!」。伊藤は本イベントの「将棋親善大使就任記念!特選ペア対局」で長谷部浩平四段とペアを組み、上田初美女流四段・本田小百合女流三段チームと対局していた。
その感想を聞かれた伊藤は「人前に出るのが久しぶりだったので、緊張しちゃいました。でも、全国どこへでも来てくれるファンの方たちの顔もちらほら見えるので安心しました」と、笑顔で会場に詰めかけた自身のファンたちへメッセージを送り、場内は大きな笑いに包まれた。
司会の矢内理絵子女流五段から、卒業前最後ライブについて聞かれると、伊藤は「お2人にも来ていただいて」と、羽生九段と戸辺七段も会場に足を運んでいたことを明かした。戸辺七段が「かりんちゃんの感動のスピーチがあったりして。もうちょっとで泣くところまでいって我慢しちゃいましたね」と言うと、伊藤は「泣かせたかったんですけどね」と笑みを浮かべた。
「私はその次の日にお伺いして『昨日、戸辺先生がいらっしゃっていました』というお話を聞いてニヤッとして」という羽生九段の言葉には、戸辺七段も「ビックリしたんですよ!『え!羽生先生が来ているんだ』って」と驚いていた様子。
伊藤は「乃木坂のスタッフも将棋にそこまで詳しくない人も多いので、戸辺先生たちが10人くらいでいらしても『いつもの将棋の方たち』みたいな感じだったんですけど、羽生先生の時は『羽生先生が来る!』って、みんな緊張していましたね」と、羽生九段が訪れた際の、楽屋裏でのエピソードを明かした。
続けて、伊藤が「羽生先生がいらした日は、その時の曲でみんなで踊ろうみたいなコーナーがあって、恥ずかしいと思う人も踊るような空気感だったんですね。その時に羽生先生を見たらちゃんと踊っていて...」と言うと、羽生九段はすかさず「踊っていました」と答え、会場からはどよめきが起こった後、温かい拍手が壇上に送られた。伊藤は「貴重すぎて、個人的にステージのモニターにメンバーではなく羽生先生を映して欲しいと思ってしまいました」と笑顔で語った。
また、伊藤が将棋親善大使に任命されたことが話題にあがり、「4年間、『将棋フォーカス』に出演させていただいたことが実を結んだと思います」と伊藤が答えると、戸辺七段が「『将棋フォーカス』もそうですし、イベントもたくさん出ていただきました。何より将棋への愛ですよね。棋士や将棋界のことを本当に広く理解してくださって(将棋親善大使に任命されることは)当然だと思います」と語った。そして、将棋親善大使の先輩で、兄弟子にあたる俳優・つるの剛士とは、戸辺七段との3人で深夜まで将棋を指したりしていることも明かした。
最後に、伊藤から「将棋親善大使として、何をどうしたら将棋界に貢献できるのかを日々考えていて、いつか自分たち主体でイベントを開催できたらいいな、なんて思っています。また、乃木坂46を卒業して、少しずつ動いているところなので、皆さんにそのうち、良いお知らせをお伝えできると思っています。楽しみにしていただけたら」とメッセージが送られると、会場からは大きな拍手が上がり、この日のイベントは大盛況の内に幕を下ろした。
文・撮影=中村実香
放送情報
第27期 銀河戦 決勝トーナメント 1回戦第8局 羽生善治九段 vs 大平武洋六段
放送日時:2019年8月29日(木)20:00~ほか
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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