カーライフ・ジャーナリスト渡辺陽一郎「70年代まで、日本人はアメリカ車に心底憧れていた」

1970年代まで、日本での輸入車の主役はアメリカ車だった。そんな当時の思い出を振り返りつつ、突如転機を迎えたアメリカ車の歩みをカーライフ・ジャーナリスト渡辺陽一郎に聞いた。

「かつてアメリカ車(アメ車)は、日本人にとって、まさに憧れの象徴でした。戦後の日本には、進駐軍の持ち込んだアメ車が多く走っており、小さくて性能も貧相だった日本車と見比べると、とても立派に映ったのです」と話す渡辺氏。自身も1961年生まれで、横浜で青春時代を過ごしたこともあり、当時のアメ車人気を肌で感じていた一人だ。渡辺氏も堂々たる風格の高級車キャデラックに憧れたという。

「キャデラックの内装は、ふかふかのソファのようなシートが備わり、まるで応接室のよう。当時の国産高級車の内装が応接室風なのも、アメ車の影響です。今や高級車といえば欧州車ですが、当時は排気量が小さく、質実剛健の造りに重きを置いた州車の影は薄かったんです」と振り返る。

そのアメ車天国だった日本を揺るがしたのが、1973年の第一次オイルショックだ。原油価格の高騰から、大食らいのアメ車が敬遠されるようになる。それは本国も同様で、アメ車のダウンサイズのきっかけとなった。

「1975年発売のキャデラック・セビルは、その象徴的な存在です。排気量は5.7 Lありましたが、それ以前は7L車などが普通でしたから、十分にダウンサイズされていました」

皮肉にも、ダウンサイズ化の流れは、小型で高性能であることを重視していた欧州車の世界的な人気を高めるきっかけとなり、日本でも外国車の主役が欧州車へと変化していく。

「ナイトライダー」より

(C) 1982 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved. 

しかし、アメ車も元気をなくしてしまったわけではない。欧州車を意識した自動車開発を行い、巻き返しを図った。また1980年代では、クルマを主役にしたドラマが生まれるなど、スクリーンでは輝き続けた。最も有名な作品が「ナイトライダー」だ。ナイト2000と呼ぶマシンには、GM製の最新型車ポンティアック・トランザムを起用した。

「主人公と意思を持つ自動運転車がコンビを組み活躍する姿は、まさに自動車の未来。それを見事に娯楽の中で表現したのです。部分的な自動運転やAIの活用などは、既に実現されています。そんな今だからこそ、登場する技術に注目して見ると、作品を違った角度で楽しめるはずです」

わたなべ・よういちろう●1961年生まれ。自動車専門誌の編集長を約10年務めた後、カーライフ・ ジャーナリストに転向。現在はさまざまな媒体に執筆している。

取材・文=大音安弘

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放送日時:2020年1月4日(土)19:00~
チャンネル:ヒストリーチャンネル 日本・世界の歴史&エンタメ

ナイトライダー(シーズン1〜3)
放送日時:2020年1月6日(月)18:00~
チャンネル:AXN 海外ドラマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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