木村一基王位、座右の銘「百折不撓」はマラソン大会の景品から

1月11日に東京・日本プレスセンターで、新王位誕生を記念したイベント「木村一基王位トークショー ~史上最年長、初タイトル獲得への道~」が開催された。46歳での初タイトル獲得に、会場には木村王位を応援する幅広い年代のファンが来場。激闘となった第60期王位戦七番勝負の振り返りや、木村王位に関するさまざまな裏話も披露された。

第1部では、王位を勝ち取った実感について「浮かれないように心掛けているんですけど、やっぱり浮かれてしまいますね」と喜びを露わにすると、前日に第61期王位戦挑戦者決定リーグの顔ぶれが決まったことに対しては「永遠に来ないほうがいいんですけどね」と本音を語り、会場を笑わせた。

王位戦の挑戦者になった時のことを振り返る場面では、過去に「0勝4敗なら私でも取れる」とファンから言われた経験を受けて、「4連敗しない」と「大盤解説会が始まる前に終局しない」の2点を目標に掲げていたことを明かした。しかし、第1局は早々に敗戦が濃くなり「大盤解説会まで、どうやって引き延ばそうか」と途中から違う戦いに陥っていたことを告白。

相手の豊島将之王位(対局当時)については、何時間も考えた手が1分で返されるなど長考が少ないことを挙げるも、2連敗から初勝利した第3局で「良い手を指せば豊島さんも考えるんだな」と感じたことを吐露。一方、「相手が強いので、自分がミスをするかもしれない。判断そのものがミスかもしれない」と緊張していたことも打ち明け、最終局で勝利が見えた時には「思い描いていた勝ちの局面が実現したことに、不思議な感覚でした」と感慨深げに語った。

第2部では半生を振り返り、プロ棋士になれる年齢制限に「20歳を過ぎた頃から誕生日が怖くなった」とした上で、「後輩が次々とプロになっていく姿を見て、年齢ではなく努力の度合いで相手を推し量るようになりました」と回顧。その後もタイトル戦で勝てない時期が続いた時には「何回も挑めば1回くらい勝てるだろうと思うのに、全部負けてしまう。『着物を着たら勝てない』と言われてしまうので、早く勝ちたかった」と当時の思いを明かした。

続いて、話題が自身の弟子の高野智史五段のことに移ると「この世界に入ったのであれば、満足のいくように過ごしてほしい。欲をいえば師匠を越えるくらいに...」と、師匠ならではの思いを言いかけるも「越えなくてもいい」と訂正。「師匠の王位を脅かす人を叩いてほしい」と付け加える姿に、ファンからはこの日一番の笑いが起こった。

王位の防衛については「誰が来ても苦戦するでしょうね。夏から始まる王位戦は厳しい戦いになると思いますが、精いっぱいやりたい」と宣言。しかし、自身が勝利した王位戦の様子が載っている誌面の宣伝も行うなど、茶目っ気ぶりも発揮。ユーモアあふれるトークに、会場は温かい空気に包まれた。

そして、多くのファンが感銘を受けた座右の銘の「百折不撓」についても語った。奨励会で行ったマラソン大会の景品の四文字熟語辞典から選んだという意外なきっかけに会場中が驚き、「これ、言わない方が良かったですか?」と木村王位が慌てる場面も。その「百折不撓」も含む直筆の色紙プレゼント抽選会も行われ、当選者は嬉しそうに木村王位から色紙を受け取った。

最後に、今年の抱負を「ようやく念願のタイトルを獲得することができました。いつまで王位の座を保てるかは難しい課題ですが、やれるところまで頑張っていきます。将棋界は新しい人も昔からの人も頑張りを見せております。そういう人たちがぶつかる姿を、今年も堪能してください」と語り、イベントを締めくくった。

文・撮影=永田正雄

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放送情報

タイトル戦 徹底解説 #879 第44期 女流名人戦 第1局 里見香奈女流名人 vs 伊藤沙恵女流二段
放送日時:2020年1月31日(金)3:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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