第32期竜王戦七番勝負で竜王位を奪取した豊島将之竜王・名人の竜王就位式が、東京・セルリアンタワー東急ホテルで開催。この日の主役、史上4人目となる8大タイトルの中でも最高峰となる「竜王」「名人」の同時保持者・豊島竜王・名人のほか、竜王戦ランキング戦各組優勝者となる1組・渡辺明三冠、2組・佐藤天彦九段、3組・鈴木大介九段、4組・藤井聡太七段、5組・近藤誠也六段、6組・梶浦宏孝五段の6人が登壇した。
就位式では、豊島竜王・名人に日本将棋連盟から竜王推挙状、読売新聞グループから竜王杯と優勝賞金4400万円が贈られたほか、歴代竜王に学ぶことができる「竜王アカデミー」の受講生代表から花束が手渡された。さらに、ランキング戦各組優勝者の表彰も行われ、渡辺三冠らに記念メダルがそれぞれ贈呈された。
来賓祝辞では、豊島竜王・名人がファンだという作家の綾辻行人がステージに登場。綾辻は「作家は無責任な妄想をするもの」と前置きを入れつつ、「ここで何か事件が起こると大変なことになりますね。このセルリアンタワーが嵐の山荘になったらどうしましょう」と小説家ならではのユーモアを交えて観客を笑いに誘うと、「次の新作では、豊島もしくは将之という美少年を登場させたいと思います」と宣言。その発言に豊島竜王・名人は「犯人役でもかまわないので、出演させていただけたら嬉しいです」と喜びを露わにした。
謝辞で豊島竜王・名人は「シリーズの行方を左右したのは第5局でした。厳しい戦いの中でひねり出した手が今も印象に残っています。どの戦いも際どい将棋ばかりでしたが、諦めずに指して良かった」と七番勝負を振り返った。さらに、「最近の将棋界は厳しい戦いが続いているので、明日から気を引き締めて来季の防衛戦に向けて精進していきます」と感謝の意を表すとともに気持ちを新たにして挨拶を締めた。
その後、祝賀パーティーが行われ、会場を訪れた多くの関係者やファンとともに乾杯を実施。各組優勝者によるトークセッションも披露され、3年連続で優勝した藤井七段は「良い結果が出せているので、今期も出していきたいと思います」と自信をのぞかせ、高校生活について聞かれると「楽しくやっています」と笑顔を見せた。一方、永世竜王の資格を持つ渡辺三冠は「最近は竜王と間違われなくなりました」と寂しげに語るも、2019年の成績が良かったことについては「実力です(笑)」と一転して晴れやかな顔で会場を笑いに誘った。
就位式を終えた豊島竜王・名人は「多くの方が来ていただいて嬉しいです。竜王になったなという実感が湧きました」とコメントし、「昨年は逆転勝ちをすることが多かったのですが、それまであまりすることはなかったので、自分の棋風の幅が広がったのかなと思います」と総括した。2020年の目標については「昨年は防衛戦で2つ負けてしまったので、今年は防衛をできるように頑張ることと、これまで通りたくさん対局をしていきたいです。努力を続けて少しでも強くなりたいですね」と意気込みを語った。
文・撮影=永田正雄
放送情報
タイトル戦 徹底解説 No.935
放送日時:2020年1月30日(木)9:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
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