久しぶりに将棋界のスーパースターが大舞台に帰ってきた。羽生善治九段が第33期竜王戦挑戦者決定戦で丸山忠久九段を破り、竜王戦の挑戦権を獲得したのだ。2年前の竜王戦七番勝負で広瀬章人八段にフルセットで敗れて無冠に転落して以来のタイトル戦登場となる。
羽生善治九段は平成棋界の第一人者で、七冠制覇をはじめ、名前を知られた棋士だろう。タイトル獲得は史上最多の99期。永世称号も七冠すべてで獲得しており、永世七冠を機に国民栄誉賞も受賞した。永世七冠を獲得したのが通算99期目のタイトルとなる竜王だったが、そこから羽生の苦難が始まる。翌年の名人戦では史上初の6者プレーオフを勝ち抜いて挑戦権を得たものの、佐藤天彦名人(当時)に2勝4敗で敗れる。次の棋聖戦の防衛戦では豊島将之八段(当時)にフルセットで敗れて初タイトルを許し、秋の竜王戦でも冒頭で触れたように広瀬に敗れて無冠に転落した。100期を懸けたタイトル戦に3連敗したこととなる。
将棋は歴史的に見ても20~30代が強く、40代後半になるとトップ棋士でも陰りが見えてくる。中原誠十六世名人は40代前半が最後のタイトルだったし、長らく無敵を誇っていた昭和の大棋士大山康晴十五世名人も40代後半で無冠に転落した。羽生を持ってしても年齢を重ねる中で勝ち続けるのは容易ではない。
無冠に転落後の羽生はA級順位戦、王位リーグ、王将リーグなどリーグ戦では安定した強さで上位についていたものの挑戦には届かず。また、トーナメントでは苦戦を強いられ、早い段階での敗退が続いていた。そんな中で今期の竜王戦には星が集まり、ランキング戦1組で4連勝。スーパーシードとなった決勝トーナメント準決勝では若手の梶浦宏孝六段に貫録を見せ、挑戦者決定戦に進出。
挑戦者決定戦の相手は羽生と同い年の丸山忠久九段。第1局は不出来な将棋であっさりと土俵を割ってしまうが、第2局、第3局は良い内容で快勝。逆転で挑戦権を獲得した。
羽生は9月に50歳の誕生日を迎えた。平成以降で50歳以上のタイトル挑戦を決めたのは大山以来2人目となる。4度目の100期を懸けたタイトル挑戦で、非常に注目度の高いシリーズとなるだろう。
豊島将之竜王はタイトルを多く獲得しているが、意外にも防衛戦は成功したことがない。対戦成績は羽生から見て17勝16敗とまったくの互角。昨年も4局指して2勝2敗と、拮抗したシリーズとなるだろう。タイトル戦ではこれまで3回顔を合わせているが、2日制での対戦は初めてとなる。
藤井聡太二冠の誕生で盛り上がりを見せる将棋界だが、このタイトル戦も熱いものになりそうだ。
文=渡部壮大
放送情報
(生放送)第33期 竜王戦七番勝負第1局 2日目 豊島将之竜王vs羽生善治九段
放送日時:2020年10月10日(土)8:50~、14:00~
※対局終了まで延長放送
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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