藤井聡太二冠にとって2020年は飛躍の年となった。この一年を振り返っていこう。
■新型コロナウィルスの影響も史上最年少で初タイトルを獲得
まずは2月の順位戦C級1組は9連勝で最終戦を前に昇級確定。前年に1敗で順位差から昇級を逃していたが、ぶっちぎりの成績で昇級を決めた。
同月の朝日杯将棋オープン戦では千田翔太七段に準決勝で敗れる。これまでデビューから2連覇の負けなしだったが、ついにストップとなった。
2月以降は棋聖戦、王位戦で勝ち星を重ねていくが、4月に入り新型コロナウィルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令。長距離移動を伴う対局は延期となり、愛知在住の藤井は一切の対局がストップとなった。だが、この後を考えてみるとこの期間で蓄えた力が飛躍の要因となったかもしれない。
緊急事態宣言が解除され、6月に入って対局が再開。棋戦中断により史上最年少での挑戦が危ぶまれていたが、怒涛の勢いで対局が付き始める。棋聖戦で準決勝、挑戦者決定戦を強い内容で制し、ぎりぎり屋敷伸之九段の持つ最年少タイトル挑戦記録を更新することとなった。
渡辺明棋聖との五番勝負は藤井の強さが光る内容となった。第3局こそ渡辺の研究の前に屈したものの、シリーズ全体では圧倒し、3勝1敗で奪取。史上最年少で初タイトルを獲得となった。
さらに並行して王位戦でもリーグを全勝、棋聖戦に続き永瀬拓矢二冠との挑戦者決定戦となった。こちらも制し、王位戦でも挑戦権を獲得。木村一基王位との七番勝負は第2局の逆転勝ちが大きく、終わってみれば4連勝と圧倒。初タイトル獲得からわずか1ヶ月で二冠目を獲得した。
■銀河戦で初優勝。2021年の活躍にも期待が高まる
竜王戦では3組決勝で師匠の杉本昌隆八段と対戦。この将棋を制してデビューから史上初の4期連続ランキング戦優勝となった。決勝トーナメントではベテラン丸山忠久九段の勝負術に屈したものの、竜王戦でも順調に昇級を続けている。
また、12月には銀河戦でも初優勝。これまではやや苦戦の続いていた30秒将棋だったが、本戦ブロックから10連勝と圧倒的な強さを見せた。
2020年の藤井は二冠獲得に銀河戦優勝と、名実ともにトップ棋士の仲間入りを果たした。2021年の夏には棋聖戦、王位戦で初の防衛戦も待っている。タイトルを獲得した若手棋士でも防衛戦はまた別物と言われ、時代を築くことを期待される棋士にとって試金石となる重要なシリーズだ。そしてまだ挑戦権争いできない名人戦を除いた5つのタイトルは獲得を目指すことになる。
藤井はすでにトップ棋士だが、一般的にはまだまだ伸び盛りの高校生。10代のうちにさらに力を伸ばし、三冠目、そして四冠、五冠の獲得が期待される。
文=渡部壮大
放送情報
藤井聡太Day 第70期 王将戦 挑戦者決定リーグ戦 藤井聡太二冠 vs 羽生善治九段ほか
放送日時:2020年12月27日(日) 10:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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