昨年女流棋界でブレイクを果たし、2020年度の優秀女流棋士賞を受賞したのが山根ことみ女流二段だ。今春初のタイトル戦登場を決め、女流棋界の新たなスターとしての活躍が期待されている。
山根は愛媛県松山市出身。地元の松山将棋センターで腕を磨く。前期順位戦で昇級を決めた黒田尭之五段は幼馴染で同じ将棋センターの出身だ。各種アマチュア大会で活躍後、女流棋士を目指して関西研修会に入会。すんなりC1に昇級し、2013年10月に女流3級。その後も白星を重ね2014年5月に女流2級に昇級し、正式な女流棋士となった。
後に地元の愛媛から東京に出て、順調に力を付けていく。2019年の第5回YAMADA女流チャレンジ杯で棋戦初優勝を飾った。だが安定した成績を収めてはいたものの、なかなか突き抜けた結果を出すには至らなかった。
一気に実力を開花させたのは2020年度。2020年10月27日の対局に勝ってから2021年2月23日の対局で敗れるまで17連勝と勝ちまくる。連勝の中には加藤桃子女流三段、清水市代女流七段、上田初美女流四段などタイトル経験のある強豪も含まれている。女流棋士歴代3位タイとなる記録で、自身初となる挑戦者決定戦進出(女流王位戦)を決めた。リーグ最終戦で甲斐智美女流五段に敗れて連勝こそストップしたものの、勢いは止まらない。
続く挑戦者決定戦の相手はタイトル戦の常連である強豪の伊藤沙恵女流三段。相振り飛車から形勢が二転三転する大熱戦となったが、最後は入玉を目指した伊藤玉を捕まえて競り勝った。難敵を下し、初のタイトル戦登場を決める。
山根は四間飛車と相振り飛車を得意とする振り飛車党だったが、近年は雁木系統の将棋も取り入れている。大山康晴十五世名人の棋譜並べや詰将棋など、古くからある勉強法で鍛えた中終盤の力が持ち味だ。
迎え撃つ里見香奈女流王位は清麗、女流名人、倉敷藤花と合わせ四冠を保持する女流棋界の第一人者。今回のシリーズを制すると通算44期目のタイトルとなり、清水市代女流七段の持つ記録を抜いて単独1位となる。シリーズ開幕までの対戦成績は里見から見て2勝0敗だが、急速に力を付けてきた山根からすれば気にはならないだろう。
女流王位戦五番勝負の第1局は4月27日に行われ、里見が先勝した。続く第2局は5月18日(火)に行われる。前人未到の道を切り開くか、新スターの誕生か、注目の五番勝負だ。
文=渡部壮大
放送情報
タイトル戦 徹底解説 #971 第5回 YAMADA女流チャレンジ杯 決勝 伊奈川愛菓女流初段 vs 山根ことみ女流初段
放送日時:2021年5月9日(日)17:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
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