試練のダブル防衛戦が開幕。加えて叡王戦でも初の挑戦権を得て、豊島とはダブルタイトル戦となった藤井聡太。棋界の第一人者へ歩みを進める夏となるか。
※対局予定棋士との対戦成績は藤井から見た過去の対戦成績
■順位戦の連勝記録は22でストップも、初の防衛戦では幸先の良いスタート
6月3日に第80期順位戦B級1組2回戦で、藤井は稲葉陽八段と対戦。角換わり腰掛け銀から激しい変化の定跡に突入。形勢は難解だが、後手の藤井は実戦的に勝ちにくい戦いを強いられた。勝負所で稲葉に踏み込みを許し苦戦に。日付が変わるまで続く深夜の大熱戦になったが、最後は寄せ切られて敗戦。C級1組から続いていた順位戦の連勝記録は22でストップした。
6月6日には第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局で渡辺明名人と対戦。相掛かりからこちらも双方深い準備のある研究将棋となった。中盤、飛車取りを手抜いて強く踏み込んだ藤井が抜け出す。リードを奪うと好手連発で突き放し、最後は大差を付けて投了に追い込んだ。初の防衛戦は幸先の良いスタートを切った。
■「勝負の夏」が始まった藤井聡太、棋界の第一人者へ歩みを進められるか
6月13日の順位戦B級1組3回戦では、屋敷伸之九段と対戦。相掛かりから後手の藤井がわずかにリードを奪うが、屋敷も食いついて楽をさせない。終盤は際どい一手争いとなるものの、長手数の即詰みを読み切って藤井が制勝した。順位戦は2勝1敗と白星先行。4回戦は7月6日に久保利明九段(2勝3敗)と対戦する予定だ。
6月18日に棋聖戦五番勝負第2局で渡辺名人と対戦。藤井が先手で相掛かりとなり、序盤早々に筋違い角を放って局面を動かしにいく。難解なねじり合いが続き、藤井は時間も少なくなるが、正確無比な指し回しで渡辺を突き放した。最後は攻めを余して勝ち切り、防衛まであと1勝とした。第3局は7月3日に行われた。
6月22日の第6期叡王戦本戦では、丸山忠久九段と対戦。丸山得意の一手損角換わりに藤井は早繰り銀。仕掛けで「と金」を作りポイントをあげると、その「と金」を存分に活用してリードを拡大させた。着実に攻めをつないで快勝し、挑戦者決定戦に進出した。
6月26日に叡王戦挑戦者決定戦で斎藤慎太郎八段と対戦した藤井。斎藤が先手で角換わり腰掛け銀となり、押され気味の将棋ではあったものの、チャンスをとらえて抜け出す。リードを奪ってからは手堅い指し回しでまとめ、そのまま押し切り挑戦権を獲得した。豊島将之叡王との五番勝負は7月25日に開幕する。
6月29、30日にお~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第1局で豊島将之竜王と対戦。藤井が先手で相掛かりとなり、空中戦となった。藤井の動きに豊島が巧みに切り返してリードを奪うと、そのまま差が拡大し、完敗。第2局は7月13、14日に行われる。
第34期竜王戦は決勝トーナメントに進出。初戦は7月10日に山崎隆之八段(0勝1敗)と対戦する。
第47期棋王戦挑戦者決定トーナメントの組み合わせが決定。藤井は初戦で斎藤明日斗四段(初手合)と対戦する。
第71期ALSOK杯王将戦二次予選の組み合わせが決定。藤井は井出隼平五段─石田直裕五段の勝者と対戦する。2勝すればリーグ復帰となる戦いだ。また、第29期銀河戦、前回優勝の藤井はHブロック最終戦での登場となる。放映は10月の予定。
第71回NHK杯将棋トーナメントで、シードの藤井は2回戦で深浦康市九段─都成竜馬七段の勝者と対戦する。
第42回将棋日本シリーズは初戦シード。2回戦では羽生善治九段─千田翔太七段戦の勝者と対戦する。対局は9月25日の予定。
文=渡部壮大
放送情報
第28期 銀河戦 決勝トーナメント 決勝戦 藤井聡太二冠 vs 糸谷哲郎八段
放送日時:2021年7月19日(月)9:00~
※同日9:00~18:00は「藤井聡太Day」と称し、藤井二冠出演番組を一挙放送
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
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