今年の夏はお~いお茶杯王位戦七番勝負、叡王戦五番勝負でダブルタイトル戦を繰り広げた豊島将之竜王と藤井聡太三冠。両者は10月8日(金)、9日(土)に開幕する第34期竜王戦七番勝負でも激突することとなった。
豊島は先述した叡王をフルセットの激闘の末に奪われ、現在は竜王を保持している。2018年に第89期棋聖戦で初タイトルとなる棋聖を獲得して以来、6期のタイトルを積み重ねてきた。一時期はビッグタイトルの竜王と名人を同時に保持する、最強棋士の象徴「竜王名人」にもなっている。棋聖獲得以降無冠に転落したことはなく、今回は試練の防衛戦となる。今期の勝率は5割程度だが、黒星の大半が藤井によるもので調子が悪いわけではないだろう。藤井がこれまでにタイトル戦で喫した4つの黒星のうち3つを豊島が与えており、敗れはしたものの存在感を見せている。互いに先手番をキープした叡王戦では最終局で後手番になったのが不運と言えるだろう。
一方で今期の藤井は初防衛戦となるヒューリック杯棋聖戦で渡辺明名人を、並行する王位戦では豊島竜王を挑戦者に迎えた。最強の相手かつ、多くの棋士が苦しめられてきた初防衛戦のため苦戦の声もあったが、終わってみれば棋聖戦は3勝0敗のストレート、王位戦も4勝1敗と圧倒。加えて挑戦権を得た叡王戦も3勝2敗で制し、勝負の夏でタイトルを減らすどころか史上最年少の三冠を達成した。タイトル戦が続くトップ棋士になっても8割を超える勝率をキープし、不安を感じさせる要素が1つもない。最高位である竜王を奪取すれば3つのタイトルと合わせて棋界の序列1位となる。
昨年まで両者の対戦成績は豊島の6勝0敗と、内容こそ競っていたものの一方的な結果で相性の悪さを感じさせた。しかし今年1月の朝日杯将棋オープン戦で藤井が初勝利。さらにダブルタイトル戦も7勝3敗で一気に押し戻した。これまでの通算では豊島から見て9勝8敗とほぼ五分になっている。竜王戦七番勝負の戦型は2つのタイトル戦でも戦われた角換わり、相掛かりが中心となるだろう。両者の指した将棋がそのまま将棋界のトレンドとなるかもしれない。竜王戦と同じく2日制の王位戦では結果こそ藤井が4勝1敗だったものの、序盤は豊島が押す将棋が多かった。互いに課題も見えたシリーズで、竜王戦では修正した姿を見られることだろう。
注目の七番勝負は10月8日、9日に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」にて開幕する。フルセットになれば12月半ばまでもつれ込む長丁場だ。豊島が唯一のタイトルを死守するか、藤井が10代にして棋界の頂点に上り詰めるか。
文=渡部壮大
放送情報
【生放送】第71期 ALSOK杯王将戦 挑戦者決定リーグ戦 豊島将之竜王 vs 羽生善治九段
放送日時:2021年10月13日(水)13:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
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