今年もいろいろなニュースがあったが、日本ではあまり報じられなかった世界のニュースはどのようなものだったのだろう。「コロナ諸問題も重要。だがもっと大きな問題が海外では報じられていた」とモーリー・ロバートソンさんは語る。
■人類がおびやかされる危機!?日本が報じない不都合な真実
コロナ禍、ワクチン、オリンピックや菅義偉政権の是非に終始した印象のある日本の2021年。モーリー・ロバートソンさんは「一方、世界では地球規模でのビッグイシューがニュースで語られていた」と解説する。
「アメリカの山火事や観測史上初レベルの大雨による大洪水に代表されるように、今年は世界で気候の不安定化が目立っていました。これを受けて米政府は解決のためのインフラに何百兆円も投資。環境問題における経済リスクを専門家が計算するなど、このままでは人類が地球に住めなくなるのではないか、という大問題に報道のウエートが置かれていたんです」
また中国のウイグルなどの人権問題にも注目が集まった。
「ウイグルの人たちが人権を剝奪され、とても安いコストで働かされている問題です。これに対し、欧米の多くの国は批難声明を出しました。ですが日本のいくつかの企業は中国市場に依存しています。さらに中国の人権問題に言及した企業には中国政府主導での不買運動などの揺さぶりで、日本政府も企業も煮え切らない態度を取ってしまったんです。中国からのインバウンドを期待した結果でもあるでしょう。しかしこれは経済的に大きな失点。なぜなら人権意識の強い欧米では、意識が軽薄な企業の品物にNOを突きつけるからです。日本の商品が欧米市場で弱くなってしまうんですね。これらを総括するに、今年は政治リスク、環境リスク、経済リスクがセットになって訪れた年。各ジャンルのシャッターがすべて開いてしまい、広い視野を持つ重要性が見えた一年でした」
経済学者の理論だけでは政治問題を考慮に入れられない。同様に、環境問題による経済リスクも計算できない。政治・環境問題が抜けた対応をすることで間違った経済の"処方箋"が出されてしまっている状況だ。さらに格差問題もある。富の一極集中、市場原理主義の行き過ぎで労働者が貧困化。この国内のデフレを支えているのがウイグルなどの安価な労働力で、その裏に政治、人権問題がある。
「ですから海外のニュース・報道に目を向けることは重要です。気候変動が、人権問題が、中国に依存した政治が、どれほど経済に大きな影響を与えるか。今は多様化され選択肢も広がった時代。知見を広げることが我々の明るい未来に繋がるでしょう」
取材・文=衣輪晋一
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