映画ライター・竹之内円が語る、怪獣特撮の技が光る『ゴジラ』シリーズの魅力

「特撮の神様」円谷英二の名を世界へ知らしめた怪獣特撮の金字塔『ゴジラ(1954年)』
「特撮の神様」円谷英二の名を世界へ知らしめた怪獣特撮の金字塔『ゴジラ(1954年)』

■2021年の映画鑑賞納めは、日本が世界に誇る怪獣映画で

太平洋戦争が終わってわずか9年後の1954年、世界の映画史に残る2本の日本映画が公開された。1本は黒澤明監督の『七人の侍』、そしてもう1本が本多猪四郎監督・円谷英二特殊技術の『ゴジラ』だ。『ゴジラ』は日本国民の10人に1人が観たという記録的な大ヒットとなり、翌1955年には続編『ゴジラの逆襲』が公開、その後シリーズ化されて最新作で『シン・ゴジラ』(2016年)まで全29本、劇場用アニメ3本、ハリウッド版3本が公開されるなど、世界でも類を見ない長寿シリーズとなっている。

日本映画専門チャンネルでは今年、ハリウッド版『ゴジラvsコング』の公開に合わせて月1本の放送で好評を博した「ゴジラ」シリーズ 4Kデジタルリマスター版、全8本を12月31日(金)に一挙放送する。昭和ゴジラを映画館で観てきた世代ほど、この4Kデジタルリマスター版(以降、4K版とする)には驚かされる。デジタル放送のハイビジョンに対4倍の画素数を持つ4Kの高画質がどれほどすごいのか?今回は第1作『ゴジラ(1954年)』と、シリーズ初のカラー作品『キングコング対ゴジラ』(1962年)を例に紹介したい。

■気付いても、気付かなくてもすごさを証明する「鮮明な色彩」

非常に重く、動きづらく、視界も狭い三重苦のゴジラスーツを、中島春雄が着てゴジラを熱演した。(『ゴジラ(1954年)』)
非常に重く、動きづらく、視界も狭い三重苦のゴジラスーツを、中島春雄が着てゴジラを熱演した。(『ゴジラ(1954年)』)

TM & Ⓒ 1954 TOHO CO., LTD.

『ゴジラ(1954年)』はタイトル・クレジットが出た瞬間に驚くか、まったく気付かないかの反応になるだろうが、実はいずれの反応も4Kのものすごさを表している。同作はスタンダード・サイズの映画なので、現在のテレビ画面では左右に黒い帯部分が生じるのだが、映画自体の黒地と左右の黒帯の境目がわからないのだ。従来のブルーレイ版では、黒地は暗めのグレーで、本編映像と左右の黒味の境目がはっきりわかる。だが4K版はそれがまったくない。黒地は黒で、そこにくっきりと「ゴジラ」の白文字が浮かび上がるのだ。

さらに冒頭、夜の海で謎の沈没を遂げる漁船・栄光丸から炎が白く立ち上がり、船尾の日の丸がはためいている様子がはっきりわかる。そして夜の東京に上陸したゴジラは銀座の街を破壊する。被爆しケロイド状といわれるゴジラのゴツゴツした皮膚に光が反射し、背びれの輪郭が浮かび上がり、その不気味さを増す。

『キングコング対ゴジラ』は熱海城を挟んでの激闘のほか、本物のタコを大ダコとして撮影した演出にも注目
『キングコング対ゴジラ』は熱海城を挟んでの激闘のほか、本物のタコを大ダコとして撮影した演出にも注目

TM & Ⓒ 1962 TOHO CO., LTD.

カラー作品の『キングコング対ゴジラ』もまた、始まった瞬間に驚かされる。東宝スコープのロゴ・タイトルも鮮やかで、中心から広がる放射状の虹色がこんなに綺麗だったのかと。夜のシーンが多かった『ゴジラ(1954年)』に対し、キングコングとゴジラの戦いは2戦とも白昼。タイプの異なる二大怪獣の質感の違いやディテールを楽しめる。

特撮ファンのなかには「高画質だと特撮の粗も目立ってしまうのでは?」と心配する方もいるだろう。粗を挙げて申し訳ないが、本作で最も気になっていたのが、コングが電車の中から浜美枝を掴むシーン。これまではコングの顔に合成された浜美枝の姿が青味がかったグレーに映り合成であることが明らかに伝わっていた。だが、4K版では彼女のワンピースの黄色もはっきりとわかり、むしろ違和感のない映像となっている。

今回のデジタルリマスター作業に立ち会った後期昭和ゴジラを手掛けた中野昭慶特技監督は4K版を観て、「最初の試写を観た時のようだ」と感嘆の声を上げたという。4K版では、かつて映画館で観た時より綺麗なゴジラに出会えるのだ。

■CGのない時代に、大怪獣に命を吹き込んだ職人芸

今や『シン・ゴジラ』やハリウッド版で初めてシリーズを観た世代も多く、「今さらアナログ特撮の昭和ゴジラなんて...」と思われるかもしれない。だが、ご覧になれば「CGのない時代に、ここまで撮れるとは!」と驚くに違いない。そこには昭和の特撮職人による匠の技が込められている。

『ゴジラ(1954年)』では、シーンによって着ぐるみの他にも、放射熱線を吐くシーンでは「ギニョール」と呼ばれる人形で、山陰から顔を出す初登場シーンでは中に手を入れて動かす「ハンドパペット」で、さらに遠景用のミニチュア人形などを使い分けてゴジラを撮影し、その違いを見るのも楽しみのひとつ。『キングコング対ゴジラ』では、攻撃準備をする自衛隊員たちの奥に侵攻するゴジラが映るシーンがあるが、これは遠近法を用いた合成なしの一発撮りだった。

「最も美しい怪獣」といわれるモスラが成虫、幼虫の親子でゴジラに挑む『モスラ対ゴジラ』
「最も美しい怪獣」といわれるモスラが成虫、幼虫の親子でゴジラに挑む『モスラ対ゴジラ』

TM & Ⓒ 1964 TOHO CO., LTD.

『モスラ対ゴジラ』(1964年)のモスラは、撮影に使われたミニチュアは最大のもので翼が2m以上あり、これをピアノ線で操作し羽ばたかせる「操演」は、まさに昭和の職人芸。『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)、『怪獣大戦争』(1965年)、『怪獣総進撃』(1968年)の三つ首の敵怪獣キングギドラは、ハリウッド版『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)ではフルCGで表現されたが、昭和ゴジラでは10人がかりで三つ首と2本の尻尾、そして翼をピアノ線で吊って操演している。キングギドラが空を飛びながら都市を反重力光線で破壊しまくるシーンは、CGでは表せないカタルシスを生む。おまけに『怪獣大戦争』ではゴジラが当時人気を博した「おそ松くん」のイヤミの持ちネタ「シェー」をしてみせる。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』にも登場した怪獣たちが総登場する『三大怪獣 地球最大の決戦』
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』にも登場した怪獣たちが総登場する『三大怪獣 地球最大の決戦』

TM & Ⓒ 1964 TOHO CO., LTD.

今年公開50周年を迎えた『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)は、公害が生んだ異色の怪獣ヘドラを登場させ、ダークな社会派作品として評価も人気も高い。登場するたびに姿を変えるヘドラは、『シン・ゴジラ』の「第○形態」と進化するゴジラの元ネタでもある。そして、日本映画専門チャンネルがゴジラ生誕60周年を記念して2014年に行った「ゴジラ総選挙」で1位となった作品が『ゴジラVSビオランテ』(1989年)。無数の触手でゴジラに挑むビオランテは全長3m、32本のピアノ線を20人がかりで操演している。その巨大なビオランテがクライマックスでゴジラに向かって突進するシーンは圧巻である。

脚本になかった突進シーンを演出した川北紘一特技監督の手腕、すぎやまこういちの音楽も秀逸な『ゴジラVSビオランテ』
脚本になかった突進シーンを演出した川北紘一特技監督の手腕、すぎやまこういちの音楽も秀逸な『ゴジラVSビオランテ』

TM & Ⓒ 1989 TOHO CO., LTD.

『ゴジラ』シリーズは、反戦・反核映画、悲しいラブストーリー、そして極限状態の人間ドラマでもある。「怪獣モノだから」という先入観でもし見ていないのならば、あまりにももったいない。最高の怪獣映画を最高の映像でご堪能いただきたい。

文=竹之内円

竹之内円●映画ライター。生まれたとき親が映画館で働いていたので、幼少期は毎日映画を観て過ごし、3歳で「007」と怪獣映画のファンとなる。雑誌や劇場用パンフレット、サントラCD封入の解説などを執筆。今年はドルビーシネマ「平成ガメラ」55周年パンフレットやムック「ジェームズ・ボンドは永遠に」を執筆。

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放送情報

ゴジラVSビオランテ<4Kデジタルリマスター版> ※2Kダウンコンバートにて放送
放送日時:2021年12月31日(金)13:00~

ゴジラ対ヘドラ<4Kデジタルリマスター版> ※2Kダウンコンバートにて放送
放送日時:2021年12月31日(金)15:00~

怪獣総進撃<4Kデジタルリマスター版> ※2Kダウンコンバートにて放送
放送日時:2021年12月31日(金)16:40~

怪獣大戦争<4Kデジタルリマスター版> ※2Kダウンコンバートにて放送
放送日時:2021年12月31日(金)18:20~

三大怪獣 地球最大の決戦<4Kデジタルリマスター版> ※2Kダウンコンバートにて放送
放送日時:2021年12月31日(金)20:05~

キングコング対ゴジラ<完全版>4Kデジタルリマスター ※2Kダウンコンバートにて放送
放送日時:2021年12月31日(金)21:50~

モスラ対ゴジラ<4Kデジタルリマスター版> ※2Kダウンコンバートにて放送
放送日時:2021年12月31日(金)23:40~

ゴジラ(1954年) <4Kデジタルリマスター版> ※2Kダウンコンバートにて放送
放送日時:2022年1月1日(土・祝)1:20~

チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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