前人未到の八冠なるか!?タイトル全制覇を目指す藤井聡太、今後の展望

史上最年少デビューからの29連勝で一躍、時の人となった藤井聡太竜王。その後は順調に昇級、昇段を重ね、2020年からはタイトル戦にも登場。いまだに番勝負では無敗のまま、ついに王将戦で五冠目を獲得するに至った。これまで10代のタイトルホルダーでさえ歴史上2人(屋敷伸之九段、羽生善治九段)しかいなかったことを考えると、五冠は驚異的な記録だ。今回は八冠全制覇への道のりを見ていきたい。

タイトルの過半数を長きに渡って持ち続け、時代を作った棋士は木村義雄十四世名人、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、羽生善治九段の4人。藤井も今後多くのタイトルを持ち続け、この系譜に名を連ねることは間違いないだろう。

木村十四世名人の時代は実力制名人が始まった頃。タイトルは名人ひとつしかなかった時代だが、圧倒的な強さを誇り、十数年にわたって名人位に就いていた。

大山十五世名人は戦争の影響で出世が遅れたが、三冠に増えたタイトルを独占。その後創設されたタイトルも難なく獲得し、四冠、五冠独占と続けて無敵時代を築いた。当時七、八冠あってもおそらく全冠制覇を達成していたであろう。晩年もトップの実力を維持し、66歳での棋王挑戦、そして69歳で亡くなるまでA級に在籍した。

中原十六世名人は大山時代を破った棋士で、六冠のうち五冠を同時に保持した。六冠独占に挑んだこともあるが、はね返したのは当時棋王を持っていた加藤一二三九段だ。今はテレビでおなじみの加藤九段だが、大山十五世名人、中原十六世名人とタイトル戦で戦い続けた超一流棋士である。

羽生九段は七冠フィーバーが記憶にある人も多いだろう。七冠全制覇を成し遂げた棋士だ。タイトル獲得数は歴代最多の99期。50歳を超えた現在もタイトル戦の決勝トーナメントや挑戦者決定リーグで戦い、100期目のタイトルを目指している。

現在のタイトルはこれまでで最も多い8つ。当然ながら多いほど全冠制覇の難易度は上がるが、藤井の強さはその困難さを感じさせないほどだ。竜王戦、王将戦ではタイトルホルダーを4タテしての奪取で、番勝負で負ける姿が想像できない。

現在、五冠を保持している藤井聡太
現在、五冠を保持している藤井聡太

残すタイトルは名人、王座、棋王の3つ。A級は総当たりのリーグであるため、高勝率を誇る藤井は名人への挑戦権の本命だろう。

王座戦は第66期(2018年)のベスト4がこれまでの最高成績。藤井のタイトル初挑戦なるか注目を集めたが、斎藤慎太郎七段(当時)に敗れた。なお、前期は挑戦者決定トーナメント1回戦で深浦康市九段に敗れている。

棋王戦は不思議と相性が悪く、決勝トーナメントの白星がほとんどない。前期は2回戦で斎藤慎太郎八段に敗れた。ベスト4からは2敗失格制となるため、そこまでたどり着けるかが鍵となるだろう。

いずれも今期は予選進行中で、タイトルホルダーの藤井は挑戦者決定トーナメントからの登場となる。圧倒的な強さを誇る藤井も、一発勝負のトーナメントを勝ち抜くのは容易ではない。来年度は保持する5つのタイトルの防衛をしつつ、残り3つの挑戦権を狙うことになる。年齢的にはまだ成長期。さらに実力を付け、前人未到の大記録を達成できるか、今後に注目だ。

文=渡部壮大

この記事の全ての画像を見る

放送情報

第71期 ALSOK杯王将戦 七番勝負 第2局 渡辺明王将 vs 藤井聡太竜王
放送日時:2022年3月31日(木)10:30~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物