前人未到の通算1500勝を達成した羽生善治九段!対藤井聡太の王将戦の展望はいかに?

羽生善治─藤井聡太のタイトル戦がいよいよ実現。将棋ファンなら誰もが夢見たスーパースター同士のタイトル戦だ。

羽生は2020年の竜王戦七番勝負に登場するも、シリーズは1勝4敗で敗れ、その後は大舞台から遠ざかっていた。そして2021年度は年度成績で大きく負け越し、29期連続で在籍していたA級(名人含む)から降級。2018年の無冠転落に続き、A級から落ちたことは1つの時代の終わりを告げたかに見えた。降級したことによりフリークラス宣言の可能性も噂されたが、羽生はB級1組で再びA級を目指す道を選ぶ。

1度は終わったかに見えた羽生だが、2022年度は調子を上げていく。2016~2020年度は5割台、2021年度は3割台まで落ち込んだ勝率も、今年度は7割前後を推移。中でも持ち時間4時間での安定感が素晴らしく、棋王戦、王将戦で好成績をあげた。今年6月には前人未到の通算1500勝も達成している。

今期の王将リーグは開幕戦で関西俊英の服部慎一郎四段(当時)と対戦。相掛かりから激しい乱打戦となるが、巧みに緩急をつけた羽生が快勝。続く2局目は糸谷哲郎八段と対戦。終盤は互いに攻防手の出る一分将棋の競り合いとなるが、最後に羽生が抜け出して制勝。3局目は近藤誠也七段を相手に、積極的な動きから攻めまくって快勝。3連勝と星を伸ばすが、後半にタイトル戦常連の3人を残しているため、ここからは苦戦が予想された。

4局目では幾度もタイトル戦で激突した渡辺明名人と対戦。あっさり千日手となり、指し直しは得意の横歩取りへ。勝負どころでリードに成功し、最後は差がついて押し切った。5局目はこれまで相性が悪く、大きく負け越している永瀬拓矢王座。リーグの山場となった本局は、難解な終盤で「羽生マジック」と呼ぶに相応しいしのぎの妙手を見せて逃げ切った。

最終戦は豊島将之九段との対戦。豊島はリーグで唯一の1敗で、敗れるとプレーオフで再戦となる状況だ。挑戦権の懸かった大一番だったが、中盤で豊島に見落としがあり、大きく差が開いてしまう。以下は慎重に押し切って豊島を投了に追い込んだ。

今期の王将リーグは最年長ながら強豪、俊英を相手に6戦全勝で挑戦権を獲得。待ちに待った藤井聡太王将とのタイトル戦が実現した。かつて羽生と中原誠十六世名人のタイトル戦は惜しくも実現せず、今回の羽生と藤井もすれ違ってしまうのではないかと懸念されていたが、羽生が見事に藤井への挑戦権をもぎ取った。

羽生は現在52歳で、タイトル挑戦の年長記録としては大山康晴十五世名人、升田幸三実力制第四代名人に次ぐ歴代3位となる。これからの羽生は年長記録を打ち立てていくだろうが、まずは目の前にある七番勝負が待ち遠しいところだ。

文=渡部壮大

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放送情報

王将戦 挑戦者のリーグ戦対局 一挙放送
※羽生善治九段の王将リーグ対局全6局を一挙放送
放送日時:2023年1月1日(日)10:00~
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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