日向坂46が苦境を乗り越えたどり着いた現在地

2020年12月6、7日に初の東京ドーム公演の開催が決定している日向坂46。まさに今、最も勢いのあるアイドルグループと言えるだろう。

このグループが生まれたきっかけは"長濱ねる"。15年8月に行われた欅坂46の最終オーディションに残りながらも母親に反対されて最終審査を断念。諦めきれない長濱の思いを汲んだ父親が運営に直談判し、同年11月に特例として"欅坂46"に加入することとなった。正規メンバーと区別するため、急遽生まれたのが"けやき坂46"だった。欅坂46は"漢字欅"、けやき坂46は"ひらがなけやき"と呼ばれ、ひらがなけやきは漢字欅の妹分的存在としてスタートした。

グループ発足と同時に「けやき坂46」の追加メンバーの募集がはじまり、翌16年5月に加藤史帆、齊藤京子、佐々木美玲ら11人がけやき坂46の1期生として加入し、12人編成に。しかし、4月にリリースしたデビューシングル「サイレントマジョリティー」が大ヒットし、続いて8月に発表した「世界には愛しかない」で勢いを増した欅坂46への注目度が高まり、アンダー的存在のけやき坂46にすぐにはスポットライトが当たらなかった。そんな状況に挫けそうになりながらも逆境を原動力に、"12人で頑張る"という強い思いで前へと進み続けた。

2017年、けやき坂46にとって大きな変化が訪れた。3月に初の単独公演を行い、自信をつけたところに、4月の「欅坂46デビュー1周年ライブ」でけやき坂46のメンバー追加オーディション(2期生募集)が行われることが発表された。"12人で"という気持ちでグループの絆を強めたところでの発表だっただけに動揺したメンバーも少なからずいたようだ。8月に9人が2期生として加わったが、9月には欅坂46と兼任していた長濱が欅坂46専任になるためグループを離れることに。ここでバラバラにならずにメンバーのモチベーションを高めたのが、後にグループのキャプテンを務めることになる佐々木久美だった。危機感を持ちながらも、見る者を幸せにする"ハッピーオーラ"というけやき坂46のモットーを掲げ、2期生を含めた20人で新たな絆を築いた。

2018年は大いなる助走の年。1月30日から2月1日までの3日間、公演が急遽キャンセルとなった欅坂46の替わりに日本武道館3DAYS公演を行なった。当時のメンバーの心境を代弁するかのような新曲「イマニミテイロ」を披露したこと、「誰よりも高く跳べ！」でのワイヤーを使った演出など、印象的なシーンが多かった。4月から初の冠番組「ひらがな推し」が始まり、6月に初の単独作品となるアルバム『走り出す瞬間』をリリース。アルバムをひっさげてのツアーも開催された。12月には再び日本武道館での3DAYS公演を開催。今回はピンチヒッターではなく、自分たちで掴みとった3日間だった。

そして2019年は新たな始まりの年。2月、けやき坂46から"日向坂46"へと改名することを発表。ひとつの独立したグループとして歩み始めることとなった。小坂菜緒がセンターを務めた3月発売のデビューシングル「キュン」は発売初週に47.6万枚のセールスを記録し、「女性アーティストの1stシングル初週売上枚数」の歴代1位に輝く。7月発売の2nd「ドレミソラシド」、10月発売の「こんなに好きになっちゃっていいの？」、20年2月発売の「ソンナコトナイヨ」も1位を獲得し、1stから４作連続で初週売上40万枚超を達成。これは史上初の快挙となった。19年の締めくくりとして、大晦日の「第70回NHK紅白歌合戦」初出場も果たした。

2020年、「ソンナコトナイヨ」で幸先のいいスタートを切ったが、新型コロナウイルスの影響で3月公開予定だった初のドキュメンタリー映画「3年目のデビュー」、3月から予定していた全国アリーナツアーは残念ながら延期となってしまった。しかし、12月の東京ドーム公演2DAYSという目指す場所がある限り、日向坂46のメンバーたちは前に進み続ける。

そんな中、6月3日に「日向坂46ドキュメンタリー映画 46分の予告編 完全版」が、6月4日と5日の2日間に渡って「セルフDocumentary of 日向坂46」全6回がTBSチャンネル1にて放送されることが決定。彼女たちの歴史の一端に触れることができる「～46分の予告編完全版」、メンバー同士のインタビューで個性を掘り下げる「セルフ〜」の２番組で、日向坂46の魅力を再確認してもらいたい。

文＝田中隆信

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