1965年の歌手デビュー以来、艶やかかつパワフルな歌声で数々のヒット曲を飛ばしてきた布施明。華やかなルックスや紳士的なふるまいも相まって、今なお音楽ファンを惹きつけてやまない。そんなレジェンドが、デビュー55周年を記念したツアーを開催。コロナ禍の中断などを経て、ついに6月、東京国際フォーラムでファイナルを迎えた。この模様が8月15日(日)にWOWOWライブにて放送される。
グラマラスなジャズバンドの音色が響き始めると同時に、緞帳が上がり特別な夜がスタート。タキシードを着た指揮者が背を向け、踊るように指揮棒をふり、バンドを導いていく。次の瞬間、指揮者が踵を返し、それがこの夜の主役、布施明だと分かり会場から拍手が沸き起こった。代表曲「君は薔薇より美しい(2021 JAZZ Ver)」の豊かなバンドサウンドに合わせて、しなやかな歌声を会場いっぱいに響かせ、記念の宴は華やいだ空気に包まれた。
打って変わって、妖しげで大人の香りが漂う「Besame Mucho」では、ラテンのビートに合わせて、華麗にステップを踏みながら情熱的にパフォーマンス。最初のMCでは、挨拶を済ませたあと「先日、若い記者さんからファイナルライブということはご勇退ですか、と尋ねられましたが、『辞めません』と断言しました」と笑いを誘いつつ、歌い続けることを宣言し、観客を喜ばせた。
叙情的でメランコリックなバイオリンの独奏から、ミリオンヒットとなった「シクラメンのかほり」をしっとりと歌唱。「カルチェラタンの雪」を語るように歌うと、コミカルなパントマイムを彷彿とさせるパフォーマンスが印象的な「Mr. Bojangles」では優しく歌いかけた。
2度目のMCで「今にぴったりな応援歌を作りました」と紹介した新曲「まほろばの国」。自らが想いを込めてつづったという歌詞を、エバーグリーンなサウンドに乗せて朗々と歌い上げた。その力強い声と言葉に、オーディエンスは励まされたに違いない。
当初、予定になかったという「独白コーナー」では、ハーモニカを軽やかに吹きながら、一人芝居を熱演するように、思いのたけを言葉と音に乗せて届けた。俳優としてもキャリアを重ねてきた布施だからこその、圧倒的な表現力には、惹きつけられてしまうはずだ。
後半のハイライトの一つは、アカペラで歌い始める「霧の摩周湖」をはじめ、「愛は不死鳥」などを繋げた人気曲のメドレー。ワンコーラスごとに移ろいゆく歌の世界観は、まるで万華鏡のように輝いて見える。
ライブもいよいよ佳境を迎えると、さらに歌声は情熱という熱を帯びていく。セクシーかつ上品に「Stardust」を歌ったかと思えば、弾むようなリズムの「恋のバカンス」をスマイル全開で歌い、会場のムードはさらに明るさを増していく。自らが作詞を手がけた「1万回のありがとう」では、大きな愛を優しさがにじむ大らかな歌声で精一杯届けた姿が印象的だった。
アンコールでは、純白のタキシード姿で再登壇。ピアノの温かな音色と共に布施の代表曲の一つである「マイ・ウェイ」を真心込めて歌い上げた。この曲は、後進に道を譲るために「紅白歌合戦」を勇退する決意をしたときにも歌唱した特別な曲。歌を愛し、音楽と共に生きる彼の清々しい生き様を映し出している楽曲なのかもしれない。
終演を伝える1曲は、クラシックをもとにした「Tristesse」。ライブ終盤とは思えない豊かな声量で、スケール大きくオペラのように歌い上げ、特別なライブは幕を下ろした。
ゴージャスで厚みのあるバンドサウンドの音色と、それに決して負けることのない布施の豊潤で色鮮やかな歌声、そして全身を使ったパフォーマンスは、掛け値なしにザッツ・エンターテインメント。見ればきっと元気や勇気が湧いてくることだろう。光る汗や柔らかな笑顔、歌の世界観に合わせた繊細な表情の移り変わりまでを、高精細な映像美でしっかりと胸に刻みたい。
放送情報
布施明 55th ANNIVERSARY LIVE TOUR〜陽はまた君を照らすよ〜 FINAL SPECIAL!!
放送日時:2021年8月15日(日)18:00〜
チャンネル:WOWOWライブ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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