ドラマ仕立てのユニークな演出!ゴスペラーズが表現したコロナ禍での「喪失と再生」

今年でメジャーデビュー27年を迎える5人組ボーカルグループ・ゴスペラーズ。彼らによる全国ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2021 "アカペラ" #あなたの街にハーモニーを」の模様が、8月22日(日)にWOWOWライブにて放送される。

収録されたのは6月4日、⽇本⻘年館ホールにて開催された東京公演4日目。全編アカペラで構成されたアルバムとしては、前作『アカペラ』からおよそ18年ぶりとなる最新アルバム『アカペラ2』をリリースした彼らが、それを携え、9都市23公演を巡るツアーの終盤に行ったものだ。放送に先駆けて、そのライブレポートが公開された。

北山陽一はこのツアーへの思いを「コロナ禍、過酷に変化する環境の中で、許される条件を最大限活用し、制限を逆手に取って、会場全体で一つの作品を作り上げることを目指した舞台です。いつも通りとは言えないかもしれないけれど、ゴスペラーズが一番大事にしている『あなたの街に歌いに行きたい』という想いをもう一度言葉にした、本当に大事なツアーです」と言葉にしている。

この日ライブは、『アカペラ2』の冒頭を飾る「INFINITY」からスタート。まったく個性の違う5人の歌声が、時にぶつかり、時に混じり合いながら豊かなハーモニーを作り出していくさまは圧巻だ。続いて披露された「風が聴こえる」は、ゴスペラーズ初の試みとなるアカペラ楽曲の一般公募によって出会った楽曲。MCでは、「一体どのくらい応募があるのか不安だったけど、蓋を開けたら700曲以上も集まった」と、その反響の大きさを酒井雄二が嬉しそうに語っていた。

さらに「マジックナンバー」では、多種多様な「声」を合わせるゴスペルの楽しさや醍醐味を歌詞に乗せて高らかに歌い上げ、美しいバラード「インターバル」では、メンバーそれぞれの魅力を他のメンバーがリレー方式で、愛情たっぷりに紹介し合ってみせた。

今回のツアーがユニークだったのは、彼らのアカペラ・コンサートと並行して「アカペラドラマ」が繰り広げられていたこと。どうやら記憶を失くしてしまった「ある女性」と、なぜかその女性の傍にいる「ある男性」との会話劇になっており、「男性」の声をゴスペラーズとも親交のある声優・小野大輔が担当。「女性」のセリフは舞台上に字幕となって表れ、それを観客が「読む」ことによって、ドラマが成立するといった演出がなされていた。つまり「女性」役を務めるのは、会場で字幕を黙読するオーディエンスなのだ。

この演出について酒井は「コロナ禍のいま、収容率50%の客席に『拍手・手拍子のみ、声出し不可』など制限を課しての開催となったこのツアー。それを逆手に取った演出があれば、観る側に『不自由さ』ではなく『今しか観られない演目』と思ってもらえるはず...という気持ちでやっております。狂言回し役に声優・小野大輔さん、その相手役に声を出せない客席の『あなた』を配した、『最小限キャスト』でのストーリー仕立てのアカペラ舞台です」とコメント。

果たして「女性」は記憶を取り戻すことができるのか、傍にいる「男性」は一体誰で、「女性」とはどんな関係なのか。ちょっぴりミステリー仕立てのそんなストーリーが、ゴスペラーズの楽曲とゆるやかに繋がりながら進んでいく。さらに、北山が初めて作詞に挑んだ「ハーモニオン」、ルーパーを駆使しながらリアルタイムでリズムを組み立てていく「嘘と魔法」など、キャリア27年にしてなお健在な"果敢なチャレンジ精神"を観客に見せつけた。

安岡優は「チャレンジやトライしたいことが、まだまだ沢山あります。今回、その中から何を選択するかという答えに辿り着くのには、コロナ禍という条件が道を示してくれました。このステージは、ゴスペラーズにとって前進だと純粋に信じています。音源で聴くのとライヴで聴くのは、何が違うか?今回のステージは、より明確にその部分を伝えられていると思います。曲を繋ぐ物語、あなたが主人公になって楽しんでください」と語っている。

5人の個性がぶつかり合うゴスペラーズのハーモニーを、メンバー自ら「ケンカアカペラ」と称しているのは、ファンには有名な話。ケンカはケンカでも、お互いの個性を潰し合うことなくその先に「調和」を目指すゴスペラーズの音楽性。おそらくそれは、「多様性」が叫ばれながら「対立」と「分断」が加速している現代社会において、何かしらのヒントになるのではないだろうか。彼らの美しく、時に荒々しいアカペラを聴いて、さまざまな思いを巡らしてほしい。

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放送情報

ゴスペラーズ坂ツアー2021 “アカペラ” #あなたの街にハーモニーを
放送日時:2021年8月22日(日)16:00〜
チャンネル:WOWOWライブ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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