ロックの素晴らしさを体現する女性シンガー

今から約10年前、Superflyの1stシングル『ハロー・ハロー』を初めて聴いた時、なんとパワフルでソウルフルでみずみずしい歌声なんだろう、あの華奢な体のどこからあんな声が出るんだろうと衝撃を受けたのを覚えている。そして彼女は、独自の世界を切り拓き、「ロック」という枠組みを越えた豊かな音楽を展開していった。そんな中、今年11月15日に一夜限りのプレミアムライブ、『Superfly 10th Anniversary Premium LIVE "Bloom"』を行うことが発表された。10周年の感謝の思いを込めた1年半ぶりのステージであると同時に、彼女にとって初のオーケストラ編成。彼女の新たな魅力に触れる機会にもなりそうだ。ここではSuperflyの10周年を祝福しつつ、「ロック」を感じる歴代の素晴らしい女性シンガーを紹介していこう。

Superflyのルーツでもある伝説のロック・シンガーは?

まず紹介したいのはジャニス・ジョプリンだ。Superflyの志帆はデビュー当時、「和製ジャニス・ジョプリン」と呼ばれていて、彼女自身もフェイバリット・ミュージシャンとしてその名前をあげていた。また、日本武道館公演でジャニス・ジョプリンの『Piece of My Heart』のカバーも披露している。

ジャニスは1943年、アメリカ、テキサス州に生まれて1970年10月4日、27歳で短い生涯を閉じたのだが、ロックの歴史に残した足跡は鮮烈だ。彼女の名前が一躍、世間に広まったのは1967年のモントレー・ポップ・フェスティバルと1970年のウッドストック。ロック、ブルース、フォークなどを消化した自在な歌声は圧巻だった。テクニックも卓越しているのだが、彼女の体の奥底からあふれてでるような歌声の存在感は唯一無二だった。

「ボール・アンド・チェイン」「サマータイム」などのスタンダードも彼女が歌うと、彼女のために存在する曲のような気がしてしまう。力強い歌声の背後には純粋無垢で孤独な魂が存在している。こんなにも切実に、そして激しく愛を求めるラブソングを歌うシンガーはそうはいない。彼女の根源的な歌声は今もなお聴くものを激しく揺さぶっていく。

詩をビートに乗せて炸裂させたパティ・スミス

70年代を代表するロック・レジェンドにして、文学と音楽との垣根を取り払った先駆的な存在がパティ・スミスだ。ニューヨーク・パンクの旗手として1975年にアルバム『ホーセス』で鮮烈なデビューを飾り、今も精力的に活動している。呪術的なポエトリー・リーディングからシャウトへと言葉のパワーを加速させ、炸裂させていくその唱法は画期的だった。60年代のアンダーグラウンドなカルチャーとパンクロックのスピリッツを融合・更新したのも彼女だ。単なる反逆の音楽ではなくて、戦争や差別の根絶を願い、愛のために闘う音楽を彼女は奏でている。個人的には2001年のフジロックフェスティバルで、ギターの弦を引きちぎりながら、『Rock 'N' Roll Nigger』を歌う彼女の清冽な姿は一生忘れられない。

崇高さと猥雑さとが共存するPJハーヴェイ

すでにジャンルとしての「ロック」という枠組みを逸脱した音楽活動を展開しているのだが、姿勢や精神性において、「ロック」を感じる女性シンガーはPJハーヴェイである。1969年イングランド生まれ、1991年にデビューして、数多くの傑作アルバムを発表して、全世界で高い評価を受けている。デビュー当初はパンク色、オルタナティブ・ロック色の強い音楽を展開し、ニルヴァーナのカート・コバーンが彼女の1stアルバムを絶賛したこともあった。

作品ごとに新境地に挑んでいて、昨年発表の新作『ザ・ホープ・シックス・デモリッション・プロジェクト』は彼女がコソボ、アフガニスタン、ワシントンDCを旅する過程で作った楽曲が収録された旅のドキュメンタリー的な作品で、戦争、紛争、貧困などをモチーフとしたメッセージ性の強い曲が並んでいる。こう書くと、理屈っぽくて、頭でっかちのアルバムと思うかもしれないが、真逆なのだ。生命力あふれる「民衆の音楽」として成立しているところが素晴らしい。民族音楽から現代音楽まで、幅広い要素を自在に融合したサウンドはクリエイティブであると同時にプリミティブで、崇高で野蛮で猥雑な音楽なのだ。

今年1月31日にオーチャードホールで彼女のステージを観たのだが、個人的には現時点で今年のベストアクト最有力候補となっている。彼女も含めた10人編成のメンバーが多彩な楽器を持ち替えながら演奏して、バンドというよりも楽団的。知性も感性も野性も刺激されるスリリングなステージだった。Superflyのルーツのひとつはジャニス・ジョプリンかもしれないが、ここであげた3人との共通点をあげるとするならば、ロックのマインドを持ちながら、愛と平和の歌を歌っていること。プレミアムライブがどんなステージになるかわからないが、愛にあふれた空間が出現するのは間違いないだろう。

Writer:長谷川誠

※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。

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放送情報

生中継!Superfly 10th Anniversary Premium LIVE“Bloom”

放送日時:2017年11月15日(水)19:00~

チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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