今年、結成40周年を迎える筋肉少女帯と、デビュー33年目の人間椅子。80年代終盤のバンドブームを牽引した2つの個性派バンドが合体!その名も「筋肉少女帯人間椅子」として、6月11日に東京のLINE CUBE SHIBUYAで、WOWOWプラス主催によるライブ『地獄のアロハReturns』を開催した。
古くは2012年5月19日、赤坂BLITZで対バンを行ったことを契機に、一緒に音源を制作することで意気投合。2015年にシングル「地獄のアロハ」をリリース、同年6月、建て替え前の渋谷公会堂で合体ライブを行った。翌年にも大阪、東京でライブを開催、それ以来6年ぶりの合体・集結となったのである。
ちなみにこれは対バンではない。ライブは3部構成で、1部が人間椅子、2部が筋肉少女帯、そして3部は全メンバーが揃っての「筋肉少女帯人間椅子」という、世にも珍しい形態でのライブなのである。
まずは人間椅子の登場。ギターの和嶋慎治、スキンヘッドに奇抜なメイクで怪僧のようないで立ちのベース鈴木研一、そしてドラムのナカジマノブの3ピースで、「夜明け前」「神々の行進」からスタートした。青森出身の和嶋と鈴木による津軽弁の歌詞、土着の怪奇性を漂わせながら、そのプレイはパワフルで聴く者を圧倒する。小泉八雲の『怪談』に題材をとった3曲目「芳一受難」では、鈴木曰く「メンバー3人が唱えるありがたい般若心経」に合わせ観客がヘッドバンキングする、人間椅子のライブではおなじみの光景が繰り広げられた。バックには赤と緑の火の玉が飛び交うようなライティング。
「無情のスキャット」を挟んで、お互いの曲をカバーし合うパートへ。人間椅子がカバーするのは江戸川乱歩の同名小説にインスパイアされた筋少の「孤島の鬼」だが、人間椅子というバンド名も、乱歩の小説由来であることはご存じの通り。すなわち、この2バンドの音楽的方向性や世界観には共通するものがあるのだ。
続いてはドラムのナカジマがボーカルを取る、「至上の唇」へ。パワフルなドラムに合わせ和嶋と鈴木も背中で弾きまくり、ラストは人間椅子ライブの定番「針の山」。和嶋がジャンプしながらギターを弾けば、オーディエンスも飛びまくる。
続いて登場した筋肉少女帯は、「イワンのばか」でスタート。続く「バトル野郎~100万人の兄貴~」ではギターの橘高文彦がピックを会場にばらまき、観客もペンライトを振りまくる。その一糸乱れぬ呼吸は圧巻だ。
ご存じ「日本印度化計画」では、ヴォーカルの大槻ケンヂが「日本を印度に!」と叫べば観客が「してしまえ!」と返すコール&レスポンスがおなじみだが、声を出せない状況下の中、ハンドクラップで応える。一度の練習できれいに揃った手拍子に、大槻も驚きながら感慨深い表情に。続いて畢生の名曲「元祖高木ブー伝説」が登場し客席は早くもヒートアップ。
今度は筋少による人間椅子のカバーで「ダイナマイト」を熱唱。最新作「楽しいことしかない」に続き、内田雄一郎のベース、サポートの三柴理のピアノ、橘高のギターのソロで繋ぐ「サンフランシスコ」で幕を閉じた。
いよいよ第3部、まずは橘高のボーカルで内田、鈴木、ナカジマによる「ブラック菩薩」で開幕だ。続いてブラック・サバスのカバーが2曲続き、途中で和嶋も加わり、さらに橘高がオジー・オズボーンばりにコウモリのぬいぐるみを食いちぎるパフォーマンスも。
ゆるゆると登場してきた大槻に、筋少ギターの本城聡章、和嶋、鈴木、ナカジマの5名による「君は千手観音」。92年に大槻と人間椅子が参加した、みうらじゅん率いる「大日本仏像連合」の名曲だ。この日、この会場を訪れたファンには周知のナンバーで、一層激しくペンライトの明かりが飛び交う。
さらに、鈴木と内田、2名のベーシストが、弾きながら血を吐く、KISSばりのパフォーマンスを披露。床が汚れぬようマットを敷いたり片付けたりと大忙しだ。何より2つのバンドが合体することで、まったく新たな個性のバンドが生みだされたことを目の当たりにする思いである。
そして、筋少のサポートメンバーも加わった全員で、このバンドのオリジナル曲「地獄のアロハ」に。ツインドラムとツインベース。ギターとボーカルが3名という大人数から繰り出す圧倒的な音の洪水に、観客も激しくヒート。ラストは人間椅子「りんごの泪」から筋少の「釈迦」を披露した。
今回の熱いライブの模様は、WOWOWプラスにて8月17日(水)にテレビ初の独占放送が決定。このスペシャルな一夜の体験を見届けたい。
文=馬飼野元宏
放送情報
『筋肉少女帯人間椅子 地獄のアロハ Returns』
2022年8月17日(水)23:00〜
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
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