
韓国で数々の賞を受賞した話題作「ラブ・イン・ザ・ビッグシティ」(2024年)が、6月から日本でも公開され好評を博している。W主演を務めたキム・ゴウンとノ・サンヒョンが来日を果たし、トークショーやファンミーティングなども大盛況となった。
自由奔放でエネルギッシュに生きるヒロインを好演したゴウンは、どんな作品やキャラクターでも高い共感を呼ぶ稀有な俳優の一人だ。社会現象になったドラマ「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」(2016年)や先日シーズン3の制作も決定したラブコメディ「ユミの細胞たち」シリーズ(2016年〜)など、数々の人気作で自然体の演技を見せてきた。
どこか身近にいそうな親しみのある愛らしいヒロインのイメージも強いゴウン。そんな彼女がまったく異なるギャップのある役柄を演じた作品が、「破墓/パミョ」(2024年)だ。7月20日(日)にWOWOWシネマで放送される本作は、韓国で約1,200万人を動員し2024年No.1大ヒットを記録したサスペンス・スリラーで、第74回ベルリン国際映画祭でワールドプレミアとして上映されるなど、国内外で大きな話題を呼んだ。

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物語はアメリカ・ロサンゼルスで幕を開ける。巫堂ファリムと弟子ボンギルは、跡継ぎが代々謎の病気にかかるという裕福な韓国系米国人一家から、同家の先祖の墓を韓国に改葬する仕事を桁違いの報酬で依頼される。先祖の墓が原因だと気づいたファリムらに、儲け話を嗅ぎつけた風水師サンドクと葬儀師ヨングンも合流。やがて4人はお祓いと改葬を同時に行なうが、掘り返した墓には恐ろしい秘密が隠されていた...。
ゴウンが演じるのは、陰と陽や科学と迷信の狭間にいる巫堂(ムーダン)と呼ばれるシャーマンのイ・ファリム。まだ若いが実力は確かな彼女は、お祓いを行なう凄腕の巫堂だ。これまでのイメージとは異なる、カリスマ性と神秘的な雰囲気を漂わせたクールなキャラクターを、ゴウンは堂々たる演技でリアリティを持って体現した。
極めて冷静に物事を見つめ、淡々とした口ぶりや余裕たっぷりの態度は貫禄すら感じさせる。悪地の中の悪地にある墓を改葬するため、一種の擬似お祓い"テサルお祓い"を行なうことにするファリム。青い装束に身を包み、刀を振り回して踊りながら奇声を上げ、何かが乗り移るかのように体を震わせてトランス状態に入っていく。エネルギーをすべて注ぎ込むような鬼気迫る表情と踊りは、まさに圧巻だ。
霊魂を呼び戻す儀式でも何にも動じぬ、他を圧倒するオーラを纏う。「オールド・ボーイ」(2003年)で映画賞を総なめにした演技派チェ・ミンシクをはじめ、個性派俳優ユ・ヘジンや若手注目株イ・ドヒョンらキャストに囲まれて、紅一点のゴウンが強い存在感を発揮した。
墓に隠された恐ろしい秘密を掘り返す戦慄のスリラーが展開する「破墓/パミョ」。韓国の歴史や風習も盛り込まれた異質なテーマながら好評を得て、大ヒットを記録したが、ゴウンの凄みのある熱演もその一因と言えるだろう。
文=中川菜都美
放送情報【スカパー!】
破墓/パミョ
放送日時:2025年7月20日(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
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