2019年の製作当時、結婚後初の主演ドラマということもあって「アスダル年代記」(2019年)が高い注目を浴びたソン・ジュンギ。韓流ドラマでは初となる古代が舞台というチャレンジングな設定は、韓国版「ゲーム・オブ・スローンズ」との呼び声も高く、チャン・ドンゴンとの共演や壮大なスケール感など話題性も抜群だった。
だが、昨年6月に韓国で放送が開始されてから間もなくして、「太陽の末裔 Love Under The Sun」(2016年)で共演し結婚に至ったソン・ヘギョとの電撃離婚を発表。アジア中に一大ムーブメントを巻き起こした作品で結ばれ、"世紀のカップル"とまで謳われた2人の離婚劇はあまりにセンセーショナルで、当時の過熱したゴシップ報道によって「アスダル年代記」の印象がやや薄れてしまったのは少々残念だ。
ソン・ジュンギの俳優キャリアを振り返ると、除隊後の復帰作でもあった「太陽の末裔 Love Under The Sun」が、特別な位置づけにあることは間違いないが、その名を一躍知らしめた作品といえば、2010年のドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」が挙げられる。
女子禁制の名門校を舞台にした青春ラブストーリーで、大商人の息子で女好きのプレイボーイ・ヨンハを嬉々として演じていたジュンギ。奔放かつ軽薄な一方で、正義感が強く、ある苦悩も抱えているという複雑なキャラクターを、持ち前の演技力と上品な佇まいで演じきり、一気にスターダムへと駆け上がっていった。
そしてブレイク後、"演技派"としてその才能を開花させた代表作が、KBS Worldにて2月7日(金)に放送される映画『私のオオカミ少年』(2012年)だ。ジュンギが演じたのは、人間を警戒し言葉も話さず、あたかも"獣"のように振る舞う少年。病気のせいで周囲に心を閉ざしていた少女・スニ(パク・ボヨン)と偶然出会ったことで、"チョルス"と名付けられ、スニの家族の一員として過ごし始める。
特異なキャラクターであることは、オオカミ少年という題名からも一目瞭然だが、何よりジュンギの"眼差し"の演技が素晴らしい。スニの純粋な心に触れて、人間らしい感情が芽生え、それが何なのか分からずに戸惑う...そんな心の機微がジュンギの視線ひとつでヒシヒシと伝わってくる。ほぼセリフがなく"鳴き声"の演技も絶妙なリアリティを醸し出しており、野性味の中に見え隠れするオス特有のフェロモンについ惹きつけられてしまう...。
純粋無垢なスニの心に響く涙のシーンも印象的で、ラブロマンス映画としては異例ともいえる700万人動員という記録的ヒットを達成。名実ともにジュンギの代表作の一本となったのだ。
あれから約8年――人生の苦難を経験したジュンギが、離婚直後にクランクインし公開待機中の『勝利号(原題)』は、『私のオオカミ少年』のチョ・ソンヒ監督の最新作。俳優としての価値を高めたチョ監督が紡ぎ出す新たな物語の中で、ジュンギの魅力がまたどのように光り輝くのか。その姿を心待ちにしたい。
文=スズキヒロシ
放送情報
太陽の末裔 スペシャル~エピローグ編~
放送日時:2020年1月27日(月)4:00~
私のオオカミ少年
放送日時:2020年2月7日(金)23:20~
チャンネル:KBS World
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
詳しくはこちら