いつの時代も女性たちは綺麗や可愛いのテンプレートと現実の自分とのギャップに悩まされてきた。最近でこそ、パリコレにふっくら気味のモデルが採用されたり、セレブがすっぴんの写真をSNSにアップしたりして、女性のルックスの多様性の素晴らしさをアピールしてくれているが、外見に関するコンプレックスは尽きない。
世界が愛した"永遠の妖精"オードリー・ヘプバーンの個性的かつ上品なビジュアルも、実は彼女のコンプレックスに端を発している。ファンならご存知だろうが、コンプレックスを逆転の発想で他の人にはない魅力に転化した、オードリーの"発明"を改めて検証してみたい。
イノセントな笑顔を印象付ける太眉とシャープなアイライン
ほぼ無名の新人だったオードリーが王女役に挑戦した映画『ローマの休日』。退屈な公務に飽き飽きして街へと飛び出し、ロングヘアを理容室でバッサリ、ショートカットにした清々しいキュートさは世界中の女性が真似したものだ。オードリーにはその後もショートカット、きりっとした太眉、バンビのような瞳をさらに際立たせるアイラインのイメージが強いが、それもこれも細長すぎる首を逆に美しく見せ、四角い輪郭、張った鼻腔を目立たせなくするために、特徴である瞳周りを強調したのだ。オードリーは人々から「あなたは世界で最高の瞳の持ち主だ」と言われると、「いいえ、世界一美しい目のメイクです」と、自身のメイクアップ・アーティストのスキルを賞賛した。
大きすぎる足や長身をメリットに変えたミニマムなサブリナルック
映画『麗しのサブリナ』では、オードリーが着用したことで、以降"サブリナパンツ"という呼び名が付いたスタイルが登場。黒いシンプルなトップスに合わせた八分丈の細身のパンツは、彼女の女優としては高すぎる身長、痩せぎすな体をむしろエンレガントに見せた。加えて、ヒールのないバレエシューズを合わせていたのも、長身と大きすぎる足をなるべく目立たせないためのアイデアだったというが、いわゆる昨今おしゃれな女性に対して褒め言葉となっている"抜け感"というもののオリジナルだったのかもしれない。そんなシンプルなファッションでもエレガンスが漂うのは、バレエで鍛えた姿勢の良さや仕草の美しさによるものであることは間違いないだろう。
スレンダーだからこそエレガンスが際立つジバンシィのリトルブラックドレス
自らのコンプレックスを逆手にとって発明してきたシンプルなファッションとは打って変わるのだが、映画『ティファニーで朝食を』でのリトルブラックドレスと大粒のパールが何重にも重なったネックレス、そして大ぶりのサングラス、うず高く盛られたヘアスタイルは、オードリー・ヘプバーンと言われてまず思い出すビジュアルだろう。しかしこのゴージャスなルックスも実は極めて削ぎ落とされ、緻密に計算された衣装なのだ。
生涯の友人でもあったファッション・ブランド、ジバンシィのユベール・ド・ジバンシィのデザインは、オードリーに「着ていて守られている感じがする」と言わせたほど、彼女が新しい役にチャレンジする時に自信をくれる、デザインというメッセージのようなものだったのだ。ちなみに『麗しのサブリナ』を監督したビリー・ワイルダーは「オードリーの出現は膨らんだ胸の魅力を過去のものにしてしまうだろう」と語った。それまでの女優のステレオタイプを覆した彼女は、もちろんルックスだけでそれを実現した訳ではない。でも、コンプレックスを客観的に把握して生かすことは、現代にも十分に参考になり、あらゆる女性を勇気付けてくれる思考法なのだ。
参考:『オードリー・ヘップバーンという生き方』山口路子著(KADOKAWA)
『AUDREY HEPBURN オードリー・ヘプバーン』(クレヴィス)
Writer:石角友香
※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。
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年末年始一挙 特集 没後25年 オードリー・ヘプバーン ローマの休日
放送時間:2018年1月6日(土) 14:00~16:30
年末年始一挙 特集 没後25年 オードリー・ヘプバーン ティファニーで朝食を
放送時間:2018年1月6日(土) 16:30~18:45
年末年始一挙 特集 没後25年 オードリー・ヘプバーン パリで一緒に
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年末年始一挙 特集 没後25年 オードリー・ヘプバーン 土曜名画劇場 マイ・フェア・レディ [4Kレストア版]
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