Vやジョングクらもリスペクト！名曲「I NEED U」などBTSの音楽を支える背景

ビルボードHOT100(米シングルチャート)で首位を獲得した「Dynamite」「Life Goes On」の大ヒットにより、世界的アーティストとしての地位と評価を確立したBTS。彼らの快進撃はもはや説明不要だが、BTSの傑出した音楽性を支え、「BTSの8人目のメンバー」(V)、「韓国で著作権料1位」(RM)、「生きる伝説」(ジョングク)と、メンバーたちがリスペクトを込めて語るほどの人物がいることはご存知だろうか。

BTSの育ての親といえば、所属事務所のBig Hit Entertainmentの代表であるパン・シヒョクPD(プロデューサー)が有名だが、その彼と共にBTSの道を作り上げた人物が、同じくBig HitのチーフプロデューサーであるPdogg(ピドッグ)だ。

そもそもはPdoggが当時17歳のRMと出会い、パンPDに紹介したことからBTS結成のプロジェクトが始動したという運命的なエピソードも。Pdoggがいなければ今のBTSは存在しないと言えるキーパーソンだ。

Pdoggは、デビュー曲「No More Dream」(2013年)から「Life Goes On」(2020年)まで多数のヒット曲をプロデュースしてきたが、BTSが大きな飛躍を遂げたナンバー「I NEED U」(2015年)は、メンバーにとってもPdoggにとっても特に思い出深い1曲といえる。

恋の終わりを痛切に叫ぶ切ないミディアムナンバーで、冒頭から心を掴む抒情的なメロディと、一度聴いたら耳からは離れないサビのフレーズが今も多くの人の胸を捉えている。メンバー自身も「Pdoggにとって『I NEED U』は子どものような曲」と紹介する一方で、当時イントロを初めて聴いた瞬間は鮮烈な印象を抱いたよう。ジョングクに至っては、「僕は(イントロを聴いた時点で)この曲がうまくいくだろうと感じた」と、ストレートに明かしている。

また、「I NEED U」と言えば、若さゆえの衝動性や危うさが盛り込まれたMVも当時大きな話題を呼んだ。約6年前のまだ幼さの残るメンバーの表情や、見れば見るほど解釈が広がる深みのあるストーリーも、今振り返るとまた違った発見がありそうだ。

「I NEED U」と同じくPdoggがプロデュースした楽曲において、今や常連となった米ビルボード進出の足がかりとなった「Blood, Sweat ＆ Tears」(2016年)も忘れてはいけない。この曲で「ビルボード・ミュージック・アワード」の授賞式に初めて出席した際のことを、ジミンは「そのシーンをすべて記憶している。あの場に行っても実感が湧かなかった」と回想。世界的に注目を集める曲となったが、RMは「(世界的な反応を)初めて経験したため、『すごいことが起きているな』くらいに思っていた」と明かしている。

「Blood, Sweat ＆ Tears」は、iTunesの97の国と地域で1位を獲得したアルバム『WINGS』のリード曲で、大人っぽく、彼らのセクシーな魅力を引き立たせるナンバー。生まれて初めて誘惑と出会い、悩み、葛藤する少年の姿が描かれており、何度聴いても胸を揺さぶられるメンバーの繊細でソフトな歌声にも注目だ。

音楽バラエティ番組「不朽の名作2」では、Pdogg自身が出演し、自らがプロデュースしたBTSのヒット曲をフィーチャーする"Pdogg編"が3月7日(日)に放送される。前述した「I NEED U」や「Blood, Sweat ＆ Tears」などのカバーステージを、韓国の実力派歌手＆アイドルが新たな解釈で披露している。

番組内では、Pdoggがそれぞれの曲に対する制作秘話を語っているほか、新人ボーイズグループのBAE173が、自らのカラーで再構築したカリスマ性あふれるシンクロダンスに、Pdoggがスタンディングオベーションを送る場面も見られた。

番組には、BTSもスタジオ出演し、Pdogg作品の制作秘話やそれぞれの曲に対する熱い想いをインタビューでたっぷりと語っている。世界トップレベルの舞台まで上り詰めた今こそ、彼らの音楽表現を支え続けるPdoggとの関係性に注目しながら、BTSが創り出す奥深い世界観に改めて迫ってみたい。

文＝川倉由起子

この記事の全ての画像を見る