筋肉アクションスターとしてだけでなく、映画人として多大な功績を残してきたシルヴェスター・スタローン。人生そのものを投影させたシリーズ作品を通して見えてくるスタローンの魅力を有村さんに解説してもらった。
'70年代に頭角を現し、'80年代に一世を風靡したスタローンだが、そのキャリアは実に波瀾万丈だと有村さんは語る。
「イタリアにルーツを持つ出自、ポルノ映画への出演やクラブの用心棒として食いつないだ駆け出し時代など、自身の苦境を投影した『ロッキー』によってスタローンはハリウッドドリームをつかみました。逆境から自分の力で栄光を手にするロッキーはスタローンそのものですね」
そんなロッキーに並ぶ、スタローンの代表キャラクターがベトナム帰還兵・ランボーだ。
「アメリカの栄光を描く『ロッキー』に対して、『ランボー』はアメリカの闇を描いています。スタローンはベトナム戦争の影や祖国への失望感をランボーに込めましたが、一番色濃く出ているのが1作目です。崖から飛び降りるシーンもノースタントで、まさに命懸けでした。続く『―怒りの脱出』は埋もれがちですが、帰還兵のトラウマとダークさを描いた渋い作品。『―怒りのアフガン』は'80年代アクション映画の決定版で、空撮やド派手な爆破など、やるところまでやった完結作...のはずでしたが、'08年に『―最後の戦場』でカムバックします。監督も務めていながら身を粉にするような演技を見せ、人体破壊の描写もグロ満載でした。"最後の戦場"と銘打っておきながら、'19年の『―ラスト・ブラッド』でまた戦いに巻き込まれてしまいます(笑)。ただ、70歳を越えてこのアクションをしているのは驚異的としか言いようがない」
「ロッキー」と「ランボー」にひと区切りをつけたタイミングで、スタローンは渾身の企画「エクスペンダブルズ」を放つ。「スタローンのキャリアは順風満帆ではなく、'90年代に分かりやすく低迷して"過去の人"になってしまいましたが、『エクスペンダブルズ』シリーズで返り咲きます。挙げるとキリがないほどの超豪華キャストで魅せるシリーズですが、スタローンと共に栄光と挫折を味わい、犬猿の仲とうわさされていたA・シュワルツェネッガーとひとつの画面に収まった瞬間は感動的でした。このキャスティングが実現したのもスタローンの人格と人望があってこそ。思えばロッキーはスタローンで、ランボーもスタローン自身でした。自伝的要素や交友関係を映画に刻み込む...アツいスタローンの人生劇場はまだまだ終わりません」
ありむら・こん●'76年7月2日生まれ、マレーシア出身。年間500本の映画を鑑賞。最新作からB級映画まで幅広い見識を持つ。YouTubeでは「有村昆のシネマラボ」で本音の映画批評を配信中。
取材・文=山崎ヒロト(Heatin' System)
放送情報
「ランボー」5作品一挙放送
放送日時:2021年5月7日(金)19:00~ほか
チャンネル:WOWOWシネマ
「エクスペンダブルズ」シリーズ一挙放送
放送日時:2021年5月19日(水)21:00~
チャンネル:WOWOWプラス
「ロッキー」シリーズ一挙放送
放送日時:2021年5月22日(土)11:00~
チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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