全盛期を謳歌中!遅咲き俳優オ・ジョンセ
韓国には『믿고 보는 배우(ミッコ ポヌン ペウ)』という言葉があります。直訳すると、「信じて、観る俳優」。「この人が出ているのなら(面白いのは)間違いない」、「この人が出ているなら観よう」と思える、「信頼のおける俳優」という意味です。私にも「この人が出ている作品は絶対観る」という俳優さんが何人かいます(単に"顔がタイプ"だから、という理由のときもありますが(笑))。その一人が、オ・ジョンセさんです。
『椿の花が咲く頃』の、外ではイキり屋だけど家では奥さんにタジタジのイタイ男ノ・ギュテ、『サイコだけど大丈夫』の主人公の兄でASD(自閉症スペクトラム障害)を持つムン・サンテといえば、ピンとくる人もいるのでは。どの役も鮮烈な印象を残しドラマをヒットに導くバイプレーヤーです。
人間の人となりというのは、優しい、怖い、かわいい、ずるい......ひとつの形容詞で表すことは難しいと思います。「優しい」の中にも、ツンデレ的優しさ、天使のような優しさ、偽りの優しさなど、様々な「優しい」があったりもします。人となりや個性というのは、そんな様々な形容詞の組み合わせの違いだと思うのですが、同じように、ドラマに登場するキャラクターもまた、様々な形容詞を持っています。オ・ジョンセさんは、たくさんの形容詞を演技で表現する力を持っていて、形容詞の組み合わせによって、様々なキャラクターを演じ分けているのではないでしょうか。指の動きや歩き方、目力、その全てを使って、役になりきりる。それがオ・ジョンセさんの演技のすごさだと思います。
オ・ジョンセさんのこれまでの演技人生は、なかなかハードなものだったようです。デビュー後、受けたオーディションは1000回以上。あるインタビューでは「国内(韓国)で公開される作品の90%以上のオーディションを受けた」とも語っています。
1997年映画『父』で『客2』役を得たあと、演劇の舞台に立ったり、映画で"脇のまた脇のまた脇"の役を演じたりしながら、演技経験を積んでいきます。2010年『The Unjust』の悪徳記者役で注目されると、2012年『男性使用説明書』でクズなコミック演技を見せ、認知度がアップ。コンスタントに仕事が入ってくるようになります。その頃バラエティ番組に出演したオ・ジョンセさんは、たくさんの監督が自分を起用する理由を「ギャラが安いから」と話していましたが、もちろん、それは謙遜。その確かな演技力で信頼を集めていきました。そして2019年、『椿が咲く頃』でついにブレイクするのです。『サイコだけど大丈夫』『青春の記録』など、近年のヒット作の多くは、彼が出演しています。
そんなオ・ジョンセさんが2019年に出演したのが『ストーブリーグ』です。弱小球団のゼネラルマネジャー(GM)として雇われた主人公が、スタッフたちとともに球団を優勝に導くため奮闘する姿を描くヒューマンドラマです。オ・ジョンセさんは、球団の親会社の常務で、利益の出ない球団を潰そうと画策するオーナー代理ギョンミンを、なんともいやらしく(!)演じました。ねっとりした喋り方と偉そうな態度はとにかくいけ好かないの一言。その一方で、いとこに対する劣等感を抱えていたりと、彼もまたいろんな面を持っているのですが、それをみごとに表現しているのです。『ストーブリーグ』を見れば、彼が"鑑賞理由"になる理由がわかるはずです。
今月13日、韓国で『第57回百想芸術大賞』の授賞式が行われました。オ・ジョンセさんはみごと『TV部門男性助演賞』を受賞。昨年に続き二度目の受賞です。もう韓国ドラマ界はオ・ジョンセさんなしには語れないといっても過言ではないのでしょうか。オ・ジョンセさんの全盛期はまだまだ始まったばかりです。
取材・文:酒井美絵子
聖心女子大学卒業後の2001年に渡韓。韓国外国語大学大学院在学中の2002年から、韓国から日本に輸出されるK-POP紹介番組などに出演。2004年からは日本の韓流ブームに乗り韓流雑誌への寄稿を開始。その後、出版・テレビ・映画といったメディア業界を中心に、ライター、コーディネーター、翻訳家として日々活動中。
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放送情報
「韓国ドラマ『ストーブリーグ』日本語字幕版」
野球経験ゼロのGMが最下位球団をたてなおす!
チャンスは9回裏から!寒いオフシーズンに繰り広げられる熱い物語。
毎回予想を覆す展開と出演者たちの光る演技で、視聴率は見る見るうちに上昇し最終話19.1%を記録!野球を知らなくても楽しめる!様々な困難を打破していく爽快ストーリーに共感の嵐。
【番組概要】
万年最下位のプロ野球チーム“ドリームズ”は、またしても最下位でシーズンを終える。そんな中、責任を取って辞任したゼネラルマネージャーの代わりに新たに就任したのは、野球未経験で知識もない異色の経歴を持つペク・スンス(ナムグン・ミン)だった。早速チームの改革に乗り出したスンスはスター選手であるイム・ドンギュ(チョ・ハンソン)をトレードに出すと言いだす。それを聞いた運営チーム長のイ・セヨン(パク・ウンビン)をはじめフロントスタッフは猛反発する。しかしチームの強化に成果を見せるスンスを次第に信頼しはじめるセヨンたち。ところがスンスの採用を決めたオーナー会社の常務クォン・ギョンミン(オ・ジョンセ)は、赤字続きのチームを解散させようと企んでいたのだった。
出演者:ナングン・ミン、パク・ウンビン、オ・ジョンセ、チョ・ビョンギュ、チョ・ハンソン ほか
放送情報:2021年6月17日(木)0:00~他
チャンネル:フジテレビTWOドラマ・アニメ